じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 岡大名物の「落ちない銀杏」。黄葉まっ最中の中にあって一本だけ緑の葉を保っている。過去の写真は以下の通り。  なお、2002年夏より、このエリアには金網の柵が取り付けられている。

11/16追記]
落ちない銀杏はいつ頃落葉するのでしょうか・・・新しい葉をつけるためには落ちますよね?常緑樹のように、春なのでしょうか・・・」というご質問をいただきました。もちろん、最後は落ちます。年によって異なりますが、他の銀杏より2〜3週間くらい遅かったと思います。


11月15日(月)

【ちょっと思ったこと】

自治体は「不安」に陥るか

 11月16日朝のNHKニュースで、三位一体改革による補助金削減に関して、
自治体の歳入不足を保障する地方交付税について、補助金の削減と同時に大幅に削減されると、自治体側が不安に陥ることになりかねないとして、必要な措置を求める意見が出されました。
というような報道があった。

 「三位一体」という表現が奇妙だという点については2003年6月10日の日記に書いたことがあるが、今回の「自治体側が不安に陥ることになりかねない」というのも、心理学的に見ればずいぶん奇妙な表現であると思う。

 そもそも、人間個人でないはずの「自治体」が不安に陥るとはどういうことを言うのだろうか。不安に陥る恐れがあるなら、カウンセリングをすればいいというのか、謎である。

 たぶん、「自治体側が不安に陥る」というのは、「予算確保が困難になることで、各種施策の円滑な実施を妨げ、その対応で大きな混乱が起こる恐れがある」という意味なんだろうが、そのように具体的に書いてしまうと差し障りがある。そこで、「混乱は起こらないはずだが、起こらないとの保証が不十分である」というような意味合いで「不安」という言葉を使っているのだろうが、仕事柄、「不安」という言葉の安易な使用には引っかかるところがある。

【思ったこと】
_41115(月)[心理]日本理論心理学会第50回大会(8)日本発の理論を考える(その3)先人の足跡

 11月6日〜7日に開催された日本理論心理学会第50回大会。前回に引き続き、

●シンポジウム「日本発の理論を考える」

の感想を述べさせていただく。

 話題提供2番目は

●大山正氏:日本発の理論を考える-先人の足跡を訪ねて-

であった。大山氏は東京大学名誉教授であり、各種学会の要職に就いてこられた。昨年夏に岡山で行われた日本行動分析学会年次大会では、行動分析学における日本人の国際貢献:これまでとこれからという企画シンポで話題提供をしてくださった。

 今回は「少数ながら日本独自の理論展開を行った」先人として以下の5人の心理学者が紹介された。
  • 元良次郎氏:東大教授。精神物理学。東洋思想の自我について国際会議で講演。精神化された独自の「心元論」。
  • 千葉胤成氏:東北大教授。「固有意識」論。
  • 黒田亮氏:京城帝大教授。精神過程を「覚」と「識」に分ける独自の理論。
  • 小保内虎夫氏:東京教育大教授。感応理論。
  • 梅津八三氏:重複障害者との教育的かかわりに基づく信号系活動に関する独自の理論。
 御紹介いただいた理論はそれぞれ奥深いものであり、ここで簡単に批評できるようなシロモノではない。具体的に紹介された実験の中では
  • 元良次郎氏:学業遅滞児の注意力訓練(今で言うモグラタタキのような訓練装置)。
  • 黒田亮氏:同時多様作業(同時多重課題)実験(今で言う、ながら族。聖徳太子の逸話ほどではないが、訓練すれば、複数作業[4課題程度]を同時に行うこともできるようになる)。
  • 同じく黒田亮氏:猿の音源定位実験(母サルは、子猿の鳴き声の方向をどの程度定位できるか)。
というのが特に面白かった。

 横文字の論文を日本語に訳して紹介するだけでもスゴイと言われていた時代に、東洋思想の「自我」や「固有意識」「覚と識」「勘」などについて独自の理論を展開するにはかなりの困難があったものと思われる。また、東洋医学の成果が、西洋医学的な実験的、分析的な手法で検証されにくいのと同様、東洋的な発想に基づく理論を西洋的方法で体系化していくことにはかなりの無理があったようにも思える。それと今でもその傾向はあるが、「大学卒業→海外で著名研究者に師事→帰国後にその時の業績に基づいて就職」という形で指導的研究者が養成されていく限りにおいては、海外の恩師の業績を根本的に覆すような発想はなかなか生まれにくいしがらみがあるようにも思えた。

 次回に続く。