じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

11月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る
[今日の写真] [今日の写真] ソメイヨシノの紅葉と十月桜。十月桜はコヒガンザクラ(小彼岸桜)の園芸品種。「十月桜」となっているが見頃は11月頃。4月上旬と合わせて年に2回花を咲かせるという。2002年11月20日の日記にも別の写真あり。


11月8日(月)

【ちょっと思ったこと】

3億9078万円の当たる確率

 8日夕刻の民放ニュースで、「ロト6」1等・3億9078万円、同じ売場で2口という話題を紹介していた。日本国内宝くじの最高当選金額は、「1等・前後賞合わせて3億円!!」の年末ジャンボ宝くじであろうと思っていたが、どうやら、条件が揃った場合はロト6のほうが高額になることがあるらしい。

 番組によれば、この3億9千万円が当たる確率は609万分の1であるという。つまり、600万枚につき1枚程度当たるという確率になるわけだが、これがどのくらいの大きさなのか考えてみるに
  • 1年は365.2422日。よって毎日1枚ずつ買った場合、82年でやっと3万枚。
  • ということは、600万枚を購入するためには、82年間のあいだ、毎日200枚を買い続けなければならない。
  • 朝から夜までの10時間のうちに200枚を買うためには、1時間につき20枚、よって3分間に1枚ずつ買う必要がある。
ちなみに、このクジは1枚200円だというから、600万枚を買うためには12億円の資金が必要。

 こういう不利な条件があるにもかかわらず、宝くじに人気が集まるのはなぜだろうか。たぶん、当選金額が莫大であることと、購入コストが安いこと、「買わなければ絶対に当たらない。1枚でも買っておけば確率ゼロではない状態を保てる」ということで、夢を持ち続けたいという気持ちが出てくるのだろう。行動分析的に言えば、「当たったらこんなものを買いたい」という仮想の結果に裏付けられた「当たるかもしれない状態」によって購入行動が強化されているためかと思うが、確信はない。

 ちなみに私自身は過去に一度たりとも宝くじを買ったことがなく、また、今後も絶対に買わないという信念を貫いている。お金は無いが運試しをしたいという方にはこちらのサイトがオススメ。といいつつ、自分で試してみたら、購入金額15万円余りのところで2等が当たり、当選金額が1503万300円になってしまった。

【思ったこと】
_41108(月)[心理]日本理論心理学会第50回大会(3)第三世代の行動遺伝学(その2)

 昨日に引き続き、

●招待講演「Behavioural Genetics: What Use To Psychology?」
司会:安藤寿康氏 (慶應義塾大学)
講師:Kerry L. Jang氏(ブリティッシュ・コロンビア大学)

について感想を述べたい。

 Jang氏は、行動遺伝学の内容が
  • 行動の遺伝についての研究
  • 行動の原因における遺伝的要因と非遺伝的要因の役割の度合いを評価
であることを述べた上で、遺伝的要因と環境的要因は
  1. Additive Genetic Effect
  2. Non-additive Genetic Effect
  3. Shared Environment
  4. Nonshared Environment
という4通りがあり、これらの加算が表現型を形作る説明された。

 ここで私がいだく素朴な疑問は、一卵性双生児と二卵性双生児では「Shared Environment」にもかなりの違いがあるのではないかということ。日常生活場面でその違いを数量的に表現するのは難しいであろうし、人為的に環境を変えて2人を育てることには倫理的な問題が伴う。このあたりはひとえに私の勉強不足によるものと思われるが、自分自身の宿題としてここに記しておく。

 遺伝的要因の関与についてのこれまで得られた知見では、その度合いは、パーソナリティ全般で45〜50%、知能で60〜70%、統合失調で70〜80%、アルコール使用で45〜50%となっており、けっこう高い値を示している。その一方「Parental Bonding」が0%であるというのは興味深い。Jang氏はさらに、30〜70%の度合いを示す「うつ」について、行動遺伝学に基づく新しい知見を紹介された。発表抄録にも記されているが、行動遺伝学の研究成果によれば、「うつ」は単一の病気ではない。従来のDSM-IVの診断基準ではこのあたりが大ざっぱになっており見直しが必要ということであった。ちなみに、「うつ」の「Depressive Sympton Factors」13通りのうち遺伝性が確認されたのは7要因だけ。その内訳は「Insomnia 35%」、「Guilt & hopelessness 30%」、「Loss of Libido 22%」、「Loss of Appetite 20%」、「physical anxiousness 20%」、「Positive Affect 18%」、「Suicidal Ideation 18%」となっていた。このうちの「Positive Affect」は「Positive Affect喪失」ではないかと思えたが質問する機会が無かった。

 精神障害については全くの素人であり専門用語の一部は聞き取れなかったが、行動遺伝学の知見に基づいて診断基準が改訂され、それぞれに合ったきめ細かい治療法が開発されることは望ましいことであろうという印象を受けた。

次回に続く。