じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] 農場の隅に、気になる花が咲いている。吹屋ふるさと村ベンガラ館を訪れた時(2003年11月16日)に、裏庭に同じ花があり、名前を教えてもらったことがあるのだが、すっかり忘れてしまった。どなたかお教えいただければ幸いです。

7/22追記]
「ヒミツの花園」掲示板にて、ゆか様と、kuri様から、花の名前は「ヒマ/トウゴマ」であるとの情報をいただきました。これで間違いございません。どうもありがとうございました。 「ヒマ」って、要するに「ひまし油」の原料なんですね。


7月21日(水)

【思ったこと】
_40721(水)[一般]大学法人の財政を硬直化させ、教育環境を悪化させるかもしれない電子ジャーナル契約

 少し前、来年度の学術雑誌購読についての調査があった。私の教室では、5年ほど前までは数百万円規模で各種一流ジャーナルの講読を維持してきたが、昨今の予算配分縮小に伴い、次々と購読を中止、昨年時点では「最盛時」の半額以下まで購読を削減した。

 今年度は教室予算配分が削減されたため、さらに購読を減らす必要が出てきたのだが、ここへきて、取捨選択の任意性を妨げる大きな障壁のあることが表面化してきた。それは、電子ジャーナルパッケージ契約に含まれている雑誌が、教室の意思だけでは勝手に中止にできなくなったことである。図書館からの文書は「購読維持に協力をお願いします」、「中止する場合は事前に相談してください」、「中止する場合は、同一出版社内の他誌に変更してください」というお願いの形をとっておりどこまで強制力を持っているのか定かではないが、とにかく、一誌年間10万円以上する雑誌数タイトルの購読費用を、将来にわたって負担し続けなければならない情勢となってきた。

 公正取引委員会、あるいは自由競争重視の一部のお役人からみれば、なぜこのような妙なことになったのかと驚かれるのではないかと思うが、これは、いくつかの国際的な出版社が、全国の有力大学に、出版社側が圧倒的に有利になるような「パッケージ契約」を迫り、自由契約や任意選択の機会を奪ってしまったことに起因している。2003年9月17日の日記で心配していたことが、現実のものとなりつつあるのだ。

 今回、なぜ一部の雑誌購読が勝手に中止できなくなったのかと言えば、それは、出版社と「電子ジャーナルパッケージ契約」を締結するにあたって、従来、その出版社から冊子体で購読していた雑誌はそのまま取り続けなければならない(あるいはその購入額と同額分の支払いを維持しなければならない)というような付帯条件を履行しなければならなくなったためである【あくまで長谷川が理解した範囲の情報であるため、誤解や曲解があるかもしれません、念のため】。もし、契約を履行しないと、つまり、各学部、各教室が「購読維持分」の雑誌の購読を中止すると、パッケージ契約が結べなくなり、電子ジャーナルは見られなくなってしまうというのだ。

 このような足かせがあることによって、大学法人の予算の相当額が、大手出版社に貢がれることになる。講座に配分される予算のほうも、一誌年間10万円以上する雑誌購読のために硬直化し、演習室のエアコンを取り替えようと思ってもお金が無いという事態に陥る。

 国立大学の時代と異なり、法人化後の大学の財政は、学生・院生が納める授業料によって支えられているのだということが明確になってきた。これまでは、「他大学に負けないタイトル数を維持しなければならない」という論理で電子ジャーナル導入を推進する意見が支配的であったように思うが、これからはそうはいかない。早い話、年間10万円以上の雑誌と、演習室のエアコンやパソコンのどっちを買うかという切実な選択を迫られるようになってきたのである。全国大学ランキングの「学術雑誌購読ランキング」では上位に位置しても、「教育設備充実度ランキング」で最下位に陥ったのでは笑い話にもならない。

 講義室や演習室の備品よりも電子ジャーナル購読費を優先しろというからには、授業料負担者に対する明確な説明責任が求められる。




 なお、電子ジャーナルの利便性については私も十分承知しているところであるが、2003年9月17日の日記にも書いたように、そのシステムが民間企業のビジネスとして運用されることは、私企業による知的資産独占支配を生み出す危険があり絶対に反対だ。そもそも学術雑誌論文は、金儲けのために発行されるものではない。執筆者の研究業績としての証拠を保ちつつ、雑誌閲覧自体は、できるだけ安価、もしくは無料で閲覧できる道をさぐるべきである。公的機関や学会が電子ジャーナルデータベースを蓄積し、安価な利用料で、ネットを通じて閲覧できるシステムを構築することが、健全な学問の発展のためにぜひとも必要である。