じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

4月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る

[今日の写真] 座主川(旭川から岡大構内を通り笹ヶ瀬川に流れる用水)沿いに小さな花壇があった。赤と黄色のチューリップに、空色のネモフィラがよく似合う。


4月12日(月)

【思ったこと】
_40412(月)[教育]高校生の英語力は日中韓で最低というが

 大学の研究者とベネッセコーポレーションが去年9月に、日本、韓国、中国の高校1年生と2年生1万3000人あまりを対象に行った英語力調査によれば、800点満点中の平均点は中国433点、韓国414点、日本408点であり、日本は三カ国中最低であったという。

 こういう結果は一人歩きしやすい。小学校における英語教育義務化や、ネイティブ英語教員の増枠を主張する人々に大いに利用されることだろう。

 しかし、そのような国別の比較にどれほどの意味があるのだろうか。調査対象は1万3000人と確かに多いが、各国のすべての高校生から公正にサンプリングを行うのは不可能に近い。中国の高校生といっても、北京や上海のエリート高校生と、辺境地域の高校生が同じレベルであるとは到底思えない。日本の高校でも著しい格差がある。サンプリングの方法次第で平均値や順位は著しく変わるのではないだろうか。

 各種報道によれば、日本は、英作文の得点が三カ国中最も高い一方で、英文読解とリスニングは最低であったというが、これもどこまで一般化できるか疑わしい。各国のサンプリングに問題があること、また出題内容がそれぞれの能力を測る物差しとして適切であったかどうかという疑義があることに加えて、そもそも、作文力と読解力とリスニング力という質的に異なる能力について、どれがすぐれていてどれが劣っているのかという比較ができるかという根本的な問題がある。

 当日のNHKのニュース速報には「日本の高校生は英作文の力は比較的優れているものの、英文を読んだり、聞く力は十分ではないことをうかがわせています。」と書かれてあったが、どうしてそう言えるのだろうか。そうではなく、例えば
●英作文は三カ国すべての高校生で苦手であったが、日本人高校生はそのなかでは比較的マシであった。
とも解釈できるし、
●英文読解は三カ国すべてですぐれていたが、日本人高校生の成績は相対的に悪かった。
とも解釈できる。要するに、この調査結果からは、「3種の能力のうちのどれが優れていてどれが劣っているというような比較は原理的にできない」と受け止めるのが正しい解釈であると思う。

 当日のNHKのニュース速報では、三カ国の間で英語の教え方に違いがあることも紹介されていたが、特定の教え方の有効性を主張するのであれば、国別比較ではなく、同じ日本人中高生をいくつかの群に分けて効果を検証していく必要がある。得られた結果に対して後付けで都合のよい解釈をしても説得力のある主張とは言えない。他国の教え方の長所を積極的に取り入れること自体は結構であるとは思うが。

 ま、今回のことはさておき、すべてのテレビ番組の二カ国語放送化など、中高生が自力で英語を学習できる機会はもっと増やすべきであるとは思っている[こちらの連載や、3/6の日記参照]。