祝・阪神タイガース優勝!

じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典

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[今日の写真] [今日の写真] 阪神タイガースが18年ぶりの優勝を決めた。最後はもたついたものの、ぶっちぎりの勝率であった。そのトラの勢いはベランダのトラノオにまで及んだようで、優勝決定を祝うように鉢の底からも脇芽が出てきた。トラノオと言えば、一昨年、「マイナスイオン」効果で大人気となったが、このさい、タイガースグッズとして、もっと売り出してもよいように思う。ついでにヒコウキソウ(写真右上、2002年9月19日の日記参照)もオススメ。


9月15日(月)


ボリビアアンデスでの阪神タイガース優勝前祝い

【ちょっと思ったこと】

学会発表よりも実践報告

 9月13日から15日まで、東大で日本心理学会第67回大会が開催されていたが、私は参加しなかった。前日12日に全学のFD研修会がありくたびれるということもあったが、この時期に毎週のように開かれる各種学会・シンポを比較した時に、わざわざ高い旅費と参加費と時間をかけて東京まで行くほどのことはないと思ったのが不参加の一番の理由であった。

 最近の私は、「○○学会△△大会」なる形の学術集会よりも、エコマネー(エコミュニティ)、ダイバージョナルセラピー、園芸療法など、実践活動の報告が主体となる研究集会に参加することが多くなった。これは私の関心の方向がますます、基礎的領域での議論やモデルの構築ではなく、実践活動に行動原理をどう活かすかというところに変わってきていることに基づく判断である。

 心理学者ばかりが集まる大会というのは、理論と実践というテーマで議論しても、どうしても、方法の信頼性や内的妥当性(確実性)を高めることに関心が向いてしまう。そして、一番肝心なことは何年たっても「今後の課題」ということで先延ばしされてしまう。

 実践報告の場合は、実践家の思い込みや主観的解釈が入りやすく、信頼性や内的妥当性は限りなくゼロに近いということさえある。しかし、少なくともその活動を行うことでなにがしかの成果をあげ、現実社会に貢献しているのである。そういう報告を聞き、何が未解決なのか、どの部分に、私自身が推奨する行動原理を活用できるのかを考えていくことのほうが、参加したことによって得られる情報の量が多いというのが率直な気持ちである。

 ということもあり、9月〜10月には、2回ほど、実践活動主体の研究集会に参加する予定である。
【思ったこと】
_30915(月)[教育]全学のFD研修会(2)双方向とは一対一の師弟関係の強化ではない

 9月12日に行われた全学FD研修会「岡山大学の特色ある授業づくり〜双方向性授業の実現に向けて〜」の感想の続き。午後には5つの分科会に分かれて話題提供と討論が行われたが、私が参加したティーチングティップスの分科会の中で、シャトルカードの活用についての体験報告があった。

 シャトルカードは、5年ほど前に三重大の織田教授が岡大の研修会で「大福帳」の講演をされた時、それをお手本に、岡大版として印刷されたものである。その特徴は、半期15回分に区切られ、それぞれの回において受講生は「何でもあり」の感想や質問などを書き込む、担当教員は次回までに、コメントをつけて返却するというもので、いわば、担当教員と個々の受講生との交換日記のようなものだ。

 シャトルカード印刷後、岡大の何人かの教員もこれにならって実践したが、何百人もの授業となるとコメントを書くだけで膨大な時間が必要となる。これは到底不可能、と1〜2年でやめてしまった教員も多かった。

 今回の体験報告では、個別にコメントを書き込むのではなく、次回の授業で、そのうちの一部を読み上げるという方法が紹介された。ここで重要なのは、単に時間的負担を減らすためにそうするのではないということであった。シャトルカードに個別にコメントを書き込んでも、その情報は、教員と受講生という一対一の閉じた空間の中でしか活かされない。授業で書き込みを紹介すれば、その情報は受講生全員で共有することができるというわけだ。




 卒論や修論指導でも同じようなことは言えると思う。学生の側からみれば、とにかく一対一の指導さえしてくれれば論文が書ける、これが時間的にもいちばんコストパフォーマンスがよいということになる。しかしそれでは、ある学生に指導した内容は別の学生には共有されない。先行研究を引用する際の不備などは、たいがいの学生に共通して見られるものだが、個別指導では毎年、学生の数だけ同じアドバイスを繰り返さなければならなくなる。また、そういう環境が固定されてしまうと、学生は他の卒論生や修論生の研究には関心を示さなくなり、相互批判や建設的助言を怠るようになる。ゼミの発表会など、自分の発表だけちゃんとやって、あとは早退、もしくは内職である。

 私のゼミでも開設当初からこういう傾向があり、それを無くす方策の一環として、卒論・修論の下書はすべて非公開サイトに限定公開、その下書に対する教員や他ゼミ生のコメントもすべて、非公開のネット掲示板にて行うという方式に改めた。以前、それは嫌だ、他の学生には下書を見られたくないと申し出た学生もいたが、私は断固としてそれを突っぱねた。この方針はいまでもずっと貫いている。

 教員と学生の一対一の師弟関係はしばしば美談として語り継がれる。じっさい、今回のFD研修会の学長挨拶のなかでも、学長ご自身の高校時代の恩師との交流が紹介された。それはそれでよいことだとは思うが、双方向の基本は一対一ではない。多対多、特に学生側の能動的な相互批判と情報の共有に重点を置くべきであろう。分科会を通じてこのことにますます確信を持った。