じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 北緯64度付近(8/28の日記参照のツンドラ地帯?で見つけたキノコ。右側の写真のほうは、直径15〜20cmぐらいあった。 [今日の写真]



9月6日(木)

【ちょっと思ったこと】

H2Aロケットその後

 9/6の朝日新聞によれば、8/29のH2Aロケット打ち上げの際、発車直後に地上の飛行監視コンピュータ1台が動かなくなり、もう1台を使って監視を続けることができたという。

 このロケット打ち上げに関しては8/29の日記で「ロケット打ち上げは「実験」だったのか「実演宣伝」だったのか」と辛口の感想を書いたことがあった。また、日記読み日記のほうで、
  • データ収集を優先して衛星を載せない」というのが今回の試験飛行の目的であるとするならば、どういう部分でどれだけ情報が得られたのかという成果を強調してこそ「成功」と言えるのではないだろうか。
  • もっとも、国際競争の激しい分野だけに、わざわざ他国を利するような情報まで公開する必要は無い。
  • 製品完成段階での「安全試験」の場合は、ラインを動かしてみて、実際に完成された製品に欠陥品が無いかどうかのサンプルチェックを行うことになる。しかし、生産工程がオートメーションでなく、ロケット一機という現状のもとではサンプルとは言えまい。
  • ロケットの場合に問題となるのが、事故が発生した場合にはその機体の回収が不可能である」というのは、やはり重要なポイントだと思う。新幹線のカラ走りは、車体をぶちこわすことはない。自家用車の衝突試験の場合はぶち壊されるものの、コストは遙かに低い。
  • H-IIロケット8号機(H-II・8F)の場合は、運輸多目的衛星を投入することが目的なのだから、結果としていくら故障解明につながるデータを得たとしても、やはり失敗というべきではないだろうか。
などと、たらたらと意見を述べた。

 最初からコンピュータを2台用意した点について朝日新聞では「ヒヤヒヤの初飛行だった」と評していたが、例えば、「1台用意の場合の成功率が60%、2台用意なら95%」というような見通しのもとに2台目が用意されていたのであれば、必ずしもヒヤヒヤとは言えまい。山登りの時に雨具を持っていくようなものだろう。一方、もともと1台で十分と考え安心のための保険程度に考えて2台目を置いていたとしたら見通しが甘かったことになる。コンピュータの故障の原因はどう解明されたのだろうか。



 もう1つ、周回軌道に投入したレーザー測距装置(ミラーボール)が見失われたままになっていたが、翌日9/7の新聞で日独の施設が観測に成功したと報じられていた。これまで見失われたままになっていたのは、悪天候も影響していたらしい。単に観測機会が無かったというだけなら失敗とは言えまい。




新車の広告写真その後

 9/3の日記でカナダの車広告の写真を取り上げた。そこでは、カナダでも左向き(左方向に進む)写真が多いのではないかと書いたが、9/7の朝日新聞にたまたまたくさんの車広告が載っていたので久しぶりに集計をとってみた(斜めを含む)。
  • メルセデス・ベンツ:左向き1台、右向き0台
  • ボルボ:左向き1台、右向き1台
  • 日産スカイライン・プリメーラ:左向き0台、右向き7台
  • 日産GT選手権完全制覇:左向き2台、右向き2台
  • 日産5車種(プレサージュ、バサラ、リバティ、エルグランド、セレナ):左向き5台、右向き0台
  • Audi岡山:左向き0台、右向き2台
  • ヤナセOPEL:左向き3台、右向き1台
  • アルファロメオ(エスカップの賞品):左向き2台、右向き0台
ということで、8件の広告のうち左向きが多いものが4件、右向きが多いもの2件、同数が2件という内訳になっていた。
【思ったこと】
_10906(水)[心理]行動分析学会年次大会(6)行動分析学の点検(3)

 9/5の日記の続き。

1日目午後:行動分析学の点検:強化と強化スケジュール(3)反応を抑制する罰と、促進する?罰/強化概念の天動説、地動説

 2番目の話題提供は、吉野俊彦氏の「反応を抑制する手続としての罰、促進する?手続としての罰」であった。吉野氏は、罰手続に反応を抑制する効果があることを説明する代表的な2つの理論として、
  • 対称的効果の法則:罰は罰せられる反応を維持している強化価を減少させる。
  • 競合反応理論:罰は罰せられる反応以外の反応を強化する効果をもつ。
という2つを挙げた。

 ここで念のためお断りしておくが、 罰刺激(あるいは嫌子、負の強化子)は、普通、
行動後にそれが出現すると行動が起こりにくくなるような刺激事象
として定義される。マロットの教科書(杉山他『行動分析学入門』)では、これと並行して
嫌子とは、我々が接触を最小にしたいと望むものである
とも定義している。いずれの場合も、何が罰となるかは行動の起こり具合を観測して初めて判断できるようになるものであり、そのような行動的定義に立脚する限りにおいては、なぜ罰が抑制効果をもつかというような疑問は出てこない。しかし吉野氏も指摘しておられるように、副次的な効果を考えるときにはこれは重要な問いになる。

 吉野氏は最近の御自分の実験研究を引き合いに出しながら、競合反応理論がより適切な罰理論であること、また、罰は副次的な効果として、罰せられる以外の反応を間接的に強化すること、これらから、
罰が単純に反応を抑制する効果を持つだけでなく、反応を促進する効果を持つ手続である
ことを考慮する必要を強調した。

 以上は全体として量的なデータに基づく推論であるように思われた。吉野氏の抄録の中では「応用・臨床場面においては重要な意味をもつと考えられる。」という記述があったが、時間があれば、具体例を挙げてもう少し詳しく説明していただきたいところだった。



 さて坂上氏の「強化相対性」(9/4の日記)や今回の吉野氏の「促進する?手続としての罰」などという話を聞くと、「嫌子」(「負の強化子」)という概念はかなり相対的であるように思われてくる。じっさい、それらの呼称は、モノの機能をそう呼ぶだけであって、地球上に存在するモノそのものではない。さらに言えば、モノの機能と言っても、本当のところは、生活体側がそのモノによってどう影響されるのか、どう反応するのかを言い表す概念ということになる。例えば、
●ある事象が習得性好子になる というのは、
●ある事象が習得性好子としての機能を獲得する
と言い換えてもよいが、その事象をどのように物理的・化学的に分析しても「習得性好子」という性質は出てこない。それは、生活体側の変化を意味する概念だからである。

 そのことを承知で、「○○は好子である」、「○○は条件刺激になった」、「○○は弁別刺激である」などと呼ぶのは、地動説の立場を承認しながら「秋分とは太陽の黄経が180度になった瞬間のことである」というように、便宜上、天動説の視点から天空を眺めるようなものと言えよう。生活体の行動を予測したり変容をサポートしていくためには、「条件づけ操作によって生活体内部で起こる変化」を「外界の事象の機能の獲得」として捉えたほうが議論がしやすいからである。

 上記の「天動説」的視点を前提とした上で、刺激事象の機能が文脈や相対関係によって逆転する現象が頻繁に見られるとするならば、「モノ」的把握よりも「コト」的把握のほうが優れたとらえ方ということになる。現時点ではどちらが有用かは分からない。

 いずれにせよ、罰や嫌子をめぐる議論においては、進化の中で培われた根本的特徴:
有害なものは避ける
を軽んじるわけにはいかない。となると現実的な課題は、

●長い目で見た時には非常に有害な結果が出現するような事態

において、
●如何にして目先の利益による強化を克服し、将来の有害な結果の出現を阻止するか

に注意をはらうことであろう。具体的には環境保護問題、食品添加物の問題、核兵器廃絶の問題などがこれにあたる。