じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] イエローナイフで乗ったチャーターバス(写真左)。一般道路を走るボンネットバスに乗ったのは40年ぶりではなかったかと思う。
ちなみに、カナダやアメリカでは、州(あるいは準州)によって、ナンバープレートのデザインが異なる。イエローナイフのあるウェスタン・ノースウェスト準州のナンバープレートは、愛らしいシロクマの形をしていた。プレートは車後部だけに付けられていた。シロクマのプレートを型どった壁掛けは、観光みやげ物としても売られていた。
[今日の写真]



9月4日(火)

【ちょっと思ったこと】

「巨人・広島戦」と大相撲と大リーグ

 9/4の朝日新聞「青鉛筆」によれば、9/1にNHKが中継した「巨人・広島戦」の平均視聴率(関東地区、ビデオリサーチ)は8.7%で、巨人戦としての今季最低を記録したという。その直前の19時のNHKニュースは17.7%であったので、半数以上がニュース終了時にチャンネルを切り替え、もしくはテレビのスイッチを切ったことになる(そう言えば我が家もチャンネルを切り替えていた)。

 記事では、ヤクルトに大きく引き離されている点や、大リーグでのイチロー選手の活躍などを原因に挙げていたが、そもそもプロ野球の試合を視る人というのは、かつて王選手のホームラン世界記録樹立がかかっていたような特殊な試合を除けば、大部分が対戦するチームのファンだけに限られているのではないだろうか。特定チームどうしの野球中継のために受信料の一部を投入する必然性があるのかどうか疑問である。

 同じスポーツ中継でも、高校野球や大相撲となると視聴者層が少し変わってくる。高校野球中継は、地元のチームが出ていない試合でも観戦する人が多い。大相撲の場合も、ひいきの力士の取り組みだけしか見ないという人はまずおるまい。この点、プロ野球は楽しみ方が違っている。全チームを平等に応援する人はいない。好きなチームの勝利を喜び、負けた時に悔しがることで生活に張りが出てくる。

 私など、学生時代はけっこう熱烈なタイガースファンで、巨神戦観戦ともなれば15時ころから甲子園球場の外野席に座って試合が始まるのを待っていたほどであった。こうなると、タイガースが出ない試合は全く見たいとは思わなかった。タイガースで活躍した選手であっても他のチームに移籍すればあとはどうにでもなれといった感じだ。かなり偏屈なファンだったのかもしれない(←ちなみに、いまは、さすがにファンを引退させていただいている)。

 日本のプロ野球には全く関心を示さなくなったこの頃であるが、イチロー、佐々木、新庄、野茂といった日本人選手の活躍ぶりには声援を送りたくなる。アメリカの大舞台での活躍ということもあるが、もう1つ、大リーグのどのチームも応援していないという点も大きいのではないかと思う。チームのしがらみから解放されて選手個人の活躍だけに注目すると、野球の別の面白さが出てくるという点はまことに興味深い。



懲役十年が相当の脅迫

 9/3の朝日新聞によれば、岡山県倉敷市の小中学校に「始業式に包丁を持って学校に行く」などと書いた葉書の脅迫状が送りつけられた事件で、岡山県警は2日、倉敷市羽島の男性会社員(42)を脅迫の疑いで逮捕したという。

 記事によれば、葉書には「生徒を皆殺しにする。100万円持ってこい。別名宅間二世」などと書かれており、大阪教育大付属池田小学校での殺傷事件にヒントを得た模倣犯であると思われるが、この脅迫が児童・生徒に与えた恐怖の大きさ、約7400人の市民らが警戒に当たったことの時間的負担を考えると、単なる悪戯では済まされないだろう。法律上おの最高刑がどうなっているのか分からないが、懲役十年は科しても当然ではないかという気がする。また、この脅迫に備えて警備員配置や防犯設備のために使われた経費はすべて私財をもって賠償すべきであろう。
【思ったこと】
_10904(火)[心理]行動分析学会年次大会(5)強化と強化スケジュール

 8/31の日記の続き。

1日目午後:行動分析学の点検:強化と強化スケジュール(1)

 このシンポは、学会の研究委員会が企画したものであり、企画者は坂上貴之氏と山本淳一氏。話題提供者には、平岡恭一氏、吉野俊彦氏、井上雅彦氏、指定討論者には久保田新氏と山本淳一氏という、まことに豪華な顔ぶれであった。

 特に印象に残ったのは、冒頭に行われた、坂上氏による企画主旨説明であった。坂上氏は、行動分析学の最も基本的な概念である「強化」に関して、循環論をどう克服すべきか、特にプレマックの原理[Premack, D. 1962. Reversibility of the reinforcement relation. Science, 136, 255-257. ;Premack, D. 1965. Reinforcement theory.In M. R. Jones (Ed.), Nebraska Symposium on Motivation: 1965 (pp.123-188), Lincoln: Univ of Nebraska Press.] で「強化の相対性」が明らかにされて以後、新たな概念体系の構築が行われていった経緯について説明が行われた。

 強化の循環論をめぐっては、私自身、98年11月17日の日記で少しだけ考察したことがある。その中で特に強調したのは、
  1. 場面間転移性(Meehl):ある事象が強化事象であるということを知ると、その事象が(同一個体または、同じ種の別の個体の)別の行動の強化刺激にもなりうると予見できること。
  2. 制御可能性:ある事象が強化事象であるということを知ると、その事象を随伴させる確率(強化率)や随伴のパターン(強化スケジュール)を操作することによって、行動の起こり方を制御することができること。
の2点であった(上記の呼称は、あくまで長谷川が独自に定義し直したもの)。

 今回の坂上氏の説明では、上記のうち1.が、プレマックの原理(例えば、輪回しと水飲みという2つの行動が遮断化という確立操作によって、強化する側にもされる側にもなりうるという相対原理)によって必ずしも普遍性をもたなくなり、それを克服する形で反応遮断化理論が作り上げられ現在も支持されている点が強調された。

 なお、強化の循環論を克服する試みとしては、坂上氏は、他に
  • Catania:強化を説明概念ではなく記述概念として用いる
  • 心的概念で説明:動因低減説
  • 生理的概念で説明:無限後退性
を挙げておられた。また、強化相対性の考え方が果たした役割については
  1. 強化の行動的定義に貢献
  2. 刺激-反応パラダイムから反応-反応パラダイムへの脱却
  3. ある活動に従事するというような行動事象が強化子として利用できることを示し、応用場面に貢献
  4. 強化理論と他分野の理論との結合に貢献
などが挙げられた。

 雑多に生じる日常生活行動は、それぞれ対応する好子(強化子)が個別に随伴して独立的に強化されているわけではない。競合する場合もあるが、一方の行動が手段、他方が目的として強化随伴関係になることもあるし、目的であった行動が手段化してしまうこともある。

 99年10月10日の日記で取り上げた伊達公子さんの例のように、「もともと遊びの延長上で」始めたテニスが、国際舞台で活躍するようになって手段化し、再び子供を相手にすることで楽しみに戻ることがある。あるいは家庭菜園で楽しみのために野菜を作っていた人が、農業に転じて日々畑仕事に出るようになると、収穫を減らさないために義務的に働くようになることがある。これらは「好子出現の随伴性」が「好子消失阻止の随伴性」に転じることによって説明可能ではあるが、では、どういう状態が続くと「阻止の随伴性」に変わるのかという点については何も予測できない。こういう場面で予測性を高め、せっかくの楽しい行動が義務化しないようにするにはどこに注目すればよいのか、こういう点で、坂上氏が紹介されたような強化相対性や反応遮断化についての考え方が役に立つ分野が広がるのではないかという気がした。

次回に続く。