じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] サラセニア。食虫植物の一種で、ベランダの水槽で、鉢が水に浸るようにして育てている。毎年この時期に花を咲かせるが、だんだんと株が衰えてきたのでこれが最後の花になるかも。



5月14日(月)

【思ったこと】
_10514(月)[心理]京都心理学セミナー(2) 「エコマネー」の特徴として新たに気づいたこと

 5/12の日記に引き続き、5/12に行われた「京都心理学セミナー:ことばと体験をつなぐもの〜心理療法からエコマネーまで〜」の感想。




 昨日の日記で「エコマネーの世界が始まる〜人間に優しい社会〜」に関して、エコマネーには次のような重要な特徴が含まれていることに気づいた。
  1. コミュニティの中だけで通用すること。外に出れば何の価値も無くなる。
  2. 有効期限があり、使わないと無効になる。貯えても意味が無い。
  3. 他者との関わり合いに価値を与えることが基本である。
 このうちの1.は、一般のマネーと違って、植民地支配、国家間の貧富の差、資本流出といった問題が起こりえないことを示している。今の世の中では「自助」や「扶助」が強調される一方、「互助」や「共助」はきわめて不足している。1.にはそれらを活性化する効果があるように思う。

 次に2.だが、「有効期限」というのは、「エコマネー」以外でもしばしば重要な役割を果たしている。その基本は
  • 有効期限内に使う→何らかの好子が出現
  • 有効期限内に使わない→好子出現が阻止
という複合的な随伴性で強化されているように思う。例えば、5月末で期限切れとなるレストランの飲み物無料サービス券があったとする。
  • レストランをよく利用する人は、期限を気にせずに使い、飲み物という好子を得る。
  • あまり利用しない人の場合、期限切れになるということは、飲み物という好子の出現が阻止されることを意味する。この「予定された好子」の消失を阻止するために、「あまり好きなレストランではないが、せっかくだから足を運ぼう」という行動が生じるのである。


 ゲームの中には「使わないと罰」というものもある。例えば、七並べではしばしばジョーカーを混ぜてカードが配られる。ジョーカーは、それに続くカードと一緒に使わなければならない。ジョーカーは、カードを並べる機会を増やすという点で好子である。ところが、最後まで持っていると最下位になってしまうのである。このルールでは、プレイヤーは常に、「使わなければ負け」というルールを念頭に、どのカードを出すかを判断していかなければならない。

 エコマネーの場合、期限切れになることはどんな効果をもたらすだろうか。もちろん「七並べ」のルールのように最下位になることはないが、「せっかく残っているのだから使い切ろう」という好子消失阻止の随伴性は同じように働くはずだ。となると、提供サービスのリストを見て、何かサービスをしてくれる人は居ないかを探すことになる。これは結果的に、相手方の互助・共助的な行動を引き出す効果をもたらす。

 最後の3.であるが、すでに述べたように、
「エコマネー」とは、環境、福祉、地域コミュニティ、教育、文化などに関する多様な価値を媒介するお金
という特徴を備えている。これは、エコマネーによって評価されるものが、コミュニティ内の「関わり合い」を基本とするという意味を含んでいる。それゆえ、不用となった箪笥と畑で採れたサツマイモを交換するという場合にはもはやエコマネーは要らない。物々交換だけで済むからである。いっぽう、「不用となった箪笥を家の奥から運び出し、処分場まで運ぶ」というのは評価対象となるだろう。モノではなく行動が対象となっているからである。

 中山氏も言っておられたが、「他者と関わる行動」というのは通常のお金ではなかなか強化されにくい。財産を貯えているお年寄りは、わずかの小遣いをもらって技能の伝授などしない。高齢者対策事業として行われる町内美化作業なども、通常のお金で強化しようとするので職種や参加者が限られてしまうのである。「着付けのしかたをお年寄りから教えてもらう」というのは、お年寄りに現金を払ってもまず実現しない。エコマネーを支払うことで初めて、お年寄りの「それなら、ちょっと教えてあげようか」という気になるのである。

 エコマネーについては、もうひとつ「信用通貨から信頼通貨へ」という興味深い話題があった。これは、

『エコマネーの新世紀』(加藤敏春、頸草書房、2001年)

の302頁の図表6-1に基づくものである。加藤氏の図によれば、通貨システムは、「ボランティア経済か貨幣経済か」という軸と、「信頼関係か債権債務関係か」という軸により2次元平面上で4通りに分類される。すなわち、
  • 貨幣経済+債権債務関係→マネー(通常の通貨)
  • ボランティア経済+債権債務関係→タイムダラー(時間預託、ふれあい切符)。健康な時にサービスを提供しておけば、年をとってから対価としてサービスを受ける権利が発生するという債権債務の考えあり。
  • 貨幣経済+信頼関係→LETS。カナダで始まった地域通貨。1999年末には1600以上の地域に拡大。
  • ボランティア経済+信頼関係→エコマネー
という図式になるというのだ。

 我々がふだん使っているお金以外をすべてエコマネーであるように思っていたが、このように考えてみると、一般の地域通貨やふれあい切符などとは区別すべき部分があることに気づいた。なお、この問題については、上掲の『エコマネーの新世紀』に詳しい比較考察があった。

 以上、エコマネーの話題提供について感想を述べてきたが、この発想は、例えば、研究者相互の校閲サービスとか、大学のゼミ内での学生の互助・共助を活性化する上でも大いに役立つのではないかと思う。今後さまざまな試みが行われることを期待したい。

 なお、今回のもうひとつの話題提供“ことばの「ふるさと」と心理療法〜「閉じた『ことば』の世界」に亀裂を入れるには?”については、ヘイズの文献を参照した上で後日感想を述べることにしたい。
【ちょっと思ったこと】

地下鉄銀座線の不親切

 「地下鉄不親切シリーズの第三弾」。東海道新幹線の乗り場に最も近い地下鉄の駅はどこだろうか。私は、銀座線の京橋駅ではないかと思う。丸の内線の東京駅からだと、丸の内口から入るために、JR東京駅構内を端から端まで歩くハメになる。いっぽう、銀座線京橋駅からだと、地上に出てから八重洲口方向に歩くだけで済む。途中には八重洲のブックセンターや食堂街もあるので、ちょっとした待ち合わせにも便利である。

 ところが地下鉄の路線図では、京橋駅がJR東京駅八重洲口のすぐ近くにあることが示されていない。また京橋駅から階段を上がって地上に出た際にも、どちらに東京駅があるのか看板1つない。雨の日が不便である上に、エスカレーターも整備されていない。なぜ、京橋駅を「八重洲口入口」というように改称しないのだろうか。

 余談だが、「京橋駅」というのは大阪にもある。東京よりも関西以西に住んだ年数が長い私の場合は、つい「キョウバシ」というように「キョ」のほうにアクセントを置いてしまう。地下鉄のアナウンスで「キョウバシ」というように「ウバシ」のほうにアクセントを置いて発音されると何となく違和感を覚える。そう言えば、「日本橋」のアクセントも、すっかり関西風になってしまった。


「燃える」は禁句では?

 新幹線から外を眺めていたら、某駅前の電光看板に「燃える情熱が明日を築く」という社員募集広告が流れた。ありふれた表現ではあるのだが、広告主が火災保険会社というのが面白い。火災保険会社にとって「燃える」は禁句ではなかったのか?