じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa

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[今日の写真] 妻が飾り始めた雛祭りグッズ。大きさ比較のため五円玉を置いてみた。



2月7日(水)

【思ったこと】
_10207(水)[心理]今年の卒論・修論から(4)「どちらが目立つか?」は難しい

 昨日の日記の続き。今日行われた大学院の授業の中で、たまたま「色と形とどっちが目立つか」が話題になった。簡単に言えば、「信号が赤なら止まれ、青なら進め」という色を手がかりとした場合と、「信号が×印なら止まれ、丸印ならば進め」という形を手がかりとした場合でどちらが速く学習できるかというような問題だ。(実際には、被験体は動物。刺激は複合的、つまり赤色の×、青色の丸というように提示され、後に、その要素の一部を取り替えて再訓練するという実験。)

 しかし、この種の実験から、「色と形とどっちが目立つか」についての一般化された結論を導くことはきわめて難しいと思う。まずどちらのモダリティにおいても刺激の種類は無限に存在している。しかし実験場面で提示できる刺激には限りがある。特定の色相、明るさ、鮮やかさなどを持った色を基準として、どういう形ならば色以上に目立つかという議論はできるが、「色と形とどっちが目立つか」などという一般論はそもそも議論不可能な問題であるように思う。

 では、色刺激や形刺激の提示条件を固定した上で、いろいろな動物で実験してみるのはどうだろうか。しかしこの場合も、それぞれの動物の受容器の違いを考えると、学習の速さだけを単純に比較することはできない。例えば同じ三角形を見せても、魚眼レンズを持つサカナでは見え方が違う。また、色が殆ど区別できない動物も多い。

 そういえば、私の修士論文でも「どちらが目立つか?」を論じたことがあった。これは、食物や飲み物への嫌悪を条件づける実験の話。例えば、ネズミに甘い水を飲ませつつ、飲み口を嘗めるたびに光やクリック音が同時に鳴るような仕掛けを作っておく。5分程度飲ませてから6時間後に、むかつきをもたらすような薬物を注射してやると、そのネズミは同じ味の水を飲まなくなる。これがいわゆる「食物嫌悪学習」だ。ところが、甘味は取り除き、飲むたびに(先の訓練時と同一の)光やクリック音を提示するようにしても、摂水量は決して減らない。この枠組みだけで言えば、ネズミにとっては「光や音よりも甘味のほうが目立つ」と結論することができる。

 では、同じ「甘い水を飲ませつつ、飲み口を嘗めるたびに光やクリック音が同時に鳴るような仕掛け」の中で、飲むたびに電気ショックがビリビリくるようにしたらどうなるだろう。単に「光や音よりも甘味のほうが目立つ」のであれば、ネズミは同じように甘味を避けるようになるはずだ。ところがこの条件下では、ネズミは「光や音のする水」を避けるものの、別の場所で与えられた甘い水は平気で飲み続けることが知られている。このような、モダリティの目立ちやすさが結果との関係で変わるという効果は、
Garcia, J. & Koelling, R. A. (1966). Relation of cue to consequence in avoidance learning. Psychonomic Science, 4, 123-124.
という論文で一番最初に発表されており、時にGarcia効果と呼ばれることもある。この場合、「目立ちやすさの序列は結果に依存してクロスすることがある」という結論は、実験者がそれぞれのモダリティから任意に選んだ刺激について一事例を示すだけで実証できる。無限に近い刺激について細かく検討する必要は無い、というのがGarciaらの実験の画期的なところであった。

 このほか、目立ちやすさは文脈によってもずいぶん変わるように思う。すでに試問を終えた今年の修士論文の中に、「急な出現や点滅を手がかり をターゲットを探すことは色や明暗を手がかりに探すより、一層容易である」ことを実験的に示した研究があった。この結論は、行われた実験の枠組みの中では実証されているが、日常社会の中でどこまで一般化できるかどうかは定かではない。例えば、周囲がめまぐるしく動くような環境下では、同じ明るさで固定された照準のほうが目立つようにも思える。車の運転中に手がかりとして利用される信号や標識の場合も、一律に点滅させれば目立つというものでも無かろう。例えば交通事故の起こりやすいカーブなどには、点滅看板を置いて注意を促すよりも、事故現場の生々しい写真や事故で破損した車をぶらさげておいたほうが効果が大きいように思える。
【ちょっと思ったこと】

岡山県の難読町村名

 2/8の朝日新聞岡山版によれば、岡山県の市町村合併検討委員会は7日、岡山県内の78市町村を19市町に合併する基本パターンを示した。岡山に住んでもうすぐ10年になるが、さすがに78もの市町村名は覚えきれない。しかし、中にはキャンプやハイキングで思い出深い町村名もあり、合併で消えてしまうのは惜しい気もする。合併しても地区名としては残るだろうが、岡山市西大寺、玉野市宇野、倉敷市水島というような呼び方では何か物足りないところがある。

 ところで新聞記事にあった全町村名を記した地図を見ると、町村名の中にはけっこう難読のものが含まれていることに気づく。私なりにいくつか挙げてみると
中和村、阿波村、日生町、建部町、美甘村、八束村、有漢町、賀陽町、清音村、真備町、御津町、勝央町、美作町、北房町、美星町、成羽町、奈義町、柵原町、英田町
などは、読みづらいのではないかと思う。このほか、新見市、総社市、高梁市、井原市、長船町、邑久町、久米南町、久世町、金光町なども、(大きい都市であったり歴史や観光上有名であるためにあまり難読であるとの印象を受けないが)漢字自体はけっこう読みにくいように思える。念のため、上記地名の読み方を以下に示しておきます(マウスでなぞると読めます)。これらはすべてATOKで変換可能。県外在住の方で全部読めた方は掲示板にでも報告してください。
中和村(ちゅうかそん)、阿波村(あばそん)、日生町(ひなせちょう)、建部町(たけべちょう)、美甘村(みかもそん)、八束村(やつかそん)、有漢町(うかんちょう)、賀陽町(かようちょう)、清音村(きよねそん)、真備町(まびちょう)、御津町(みつちょう)、勝央町(しょうおうちょう)、美作町(みまさかちょう)、北房町(ほくぼうちょう)、美星町(びせいちょう)、成羽町(なりわちょう)、奈義町(なぎちょう)、柵原町(やはならちょう)、英田町(あいだちょう)、新見市(にいみし)、総社市(そうじゃし)、高梁市(たかはしし)、井原市(いばらし)、長船町(おさふねちょう)、邑久町(おくちょう)、久米南町(くめなんちょう)、久世町(くせちょう)、金光町(こんこうちょう)