じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] パンヤソウの花。以前からオレンジ色単色の株を育てていたが、1カ月前にもう少し派手な株を入手。露地植えの後、再び花を咲かせた。パンヤソウのパンヤとは果実の形がパンヤノキに似ているため。ヤナギトウワタとも呼ばれるように、実が熟すと、鞘から綿毛がいっぱいついた種実が飛び出す。いっぽう根は水平に細い山芋のような塊茎状となり、容易に植え替えができる。




7月12日(水)

【思ったこと】
_00712(水)[教育]最近の大学教育論議でおもふこと(26)目標見えぬ大学教育?(その4):English for Academic Purposes

 昨日の日記の続き。本日は、
自己表現力を育てる
という、吉岡元子・国際基督教大学名誉教授の講演について感想を述べさせていただこうと思う。すでに述べたように、今回の教育懇談会は、有馬朗人先生の基調講演に続いて4人の講師による話題提供、さらに夕食後には2時間にわたって、それぞれの講師を交えての分科会が開催された。私は、吉岡先生の分科会に出席したので、より詳しいお話を聞くことができた。

 国際基督教大学(以下「ICU」と略す)と言うと、徹底した英語教育、外国人教師による英語だけの授業(non Japaneseの授業が20%)も多く取り入れている大学として全国的に知られているが、吉岡先生は、そうした英語教育重視のための改革と遂行に長年にわたって尽力されてこられた第一人者だ。その先生から直接お話しを伺う機会を得たことはまことに光栄であった。

 ICUで行われている英語重視教育というのは、英語圏の人と滞り無く会話ができるとか英語の本がスラスラ読めるといった「実用」レベルの会話力、読解力の養成にとどまるものではない。そういう「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」といった能力を個別に養成するのではなく、それらを総合的有機的に連関させ、英語教育を通じて、基礎的基本的アカデミック能力の養成まで高めることを目指しておられるということであった。この場合のアカデミック能力とは
  1. 客観的思考
  2. 批判的分析思考
  3. 主体的問題設定、問題提起にむけての思考
  4. 先行研究、関連資料の検索などを通して、問題解決にむけての思考
  5. 論理の構築にむけての思考
  6. 話しことば、書きことばによる自己表現へむけての思考
という内容を含むものであるという。

 吉岡先生が講演の冒頭で指摘されたように、講義室の中で、無反応・無感情という学生は少なくない。講義の内容が分かっているのかどうか、それに納得しているのか反発しているのかがちっとも表情に出てこない。こうした学生に対して、いきなり専門教育を導入する前に、まず自己表現力を育て、結果よりも思考プロセスを重視した教育を行う必要があるという御主張は納得できるものであった。

 ICUでは、入学した一年次の学生に対して徹底した英語教育を行う。そこでは、「聴く」、「話す」、「読む」、「書く」を総合的有機的に関連づけるcontentとAcademic Writingを中心としたカリキュラムが実行され、1パラグラフのwritingからtheme writingへ、さらに1500〜2000語レベルのwritingへと進む。進度の異なる学生に対しては、「○○ができるからこのグレイドで」ではなく、「あなたにとってはこれが必要だからこのグレイドで」という指導が行われるという。その目的は、リベラルアーツ教育の一端を担うものであり、英語で基本的アカデミック能力を育成する「English for Academic Purposes」として学問導入教育の役割を果たすものであるという。

 こうした教育の成果のせいだろうか、ある先生は、「東大の大学院を受験する学生の中でもICUの学生は光っている。ちゃんと自分の考えを伝えることができる」と言っておられた。そういえば、私の知り合いにもICU御卒業の先生が複数おられるが、いずれも会議では、筋道を立ててはっきりと主張を展開される特徴をおもちであるように感じた。

 以上の話題提供に対しては、当然予想されることであったが、「これはICUだからできるのでは?」という質問が複数提出された。実際のところ、これだけの徹底教育を行うには、まず優秀な学生が集まることが必要。それと、その教育を支える優秀なスタッフが揃わなければならない。ICUの場合、language program担当の教員は専任ではあるものの任期制となっており、教授会には出席しない。採用にあたっても、専門課程教員の選考委員会とは全く別の基準、別の組織で決定されるというが、これも優秀な候補がたくさん応募してこそ実現できるものであろう。昨日の日記でとりあげた「Fランク大学」がいくら同じシステムを導入しようとしても、これだけの学生、教員を揃えることには限界があるものと思う。この質問に対して、吉岡先生は全面否定はされなかったが、別の大学でも、カリキュラムを整備し、ねばり強く教育を続けていけばかなりの成果が上げられるであろうと強調しておられた。

 このほか、個人的には
  • 「書く」ということはWeb日記執筆の中でも鍛えられるのでは?
  • アカデミック能力として挙げられた「6つの思考」は専門教育、とりわけ卒論指導を通じて養うことができるのでは?
  • 自分の意見をはっきり表現することは、日本型のムラ社会の中では逆に浮き上がってしまう恐れはないか
  • キリスト教に対する批判的思考も許されるのでしょうか
といった疑問があったが、時間が無いので明日以降に。
【ちょっと思ったこと】

【今日の畑仕事】

ミニトマトいっぱい収穫。スイートコーン、ジャガイモ、イチゴ、長ネギを収穫。
【スクラップブック】