じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] ラベンダー。心理学動物実験室の東側には3種類のラベンダーがあるが、そのうちで一番華麗で花穂が長いものがこの品種。




6月27日(火)


【思ったこと】
_00627(火)[教育]私大の定員割れと国立大の独立行政法人化

 日本私立学校振興・共済事業団の調査によれば、今春、新入生の数が入学定員を下回った私立大学は全体の3割近く(昨春の89校から133校に増加、28%)に上り、私立短大では6割近くに達しているという。また定員の7割にも満たない深刻な状況の大学は昨春の18校から33校に。地元岡山の某大学では定員150人に対して59人しか入学者が居なかったという[以上、数値は6/28朝日新聞記事に基づく]。

 朝日新聞ではマイナス面しか取り上げられていなかったが、6/27夜のNHKラジオで聞いた話では、大都市部の有名私大では逆に受験生の集中が見られる。私学全体の問題というよりも、少子化のなかでの格差が顕在化してきたと見るべきであろう。

 こうしたなか、国立大の独立行政法人化への動きはもはや既成事実化しつつあり、岡大でも近く、学長出席のもとに、全教員参加を建前とした21世紀構想学習会が開かれることになっている。各種の会議でも「危機意識が無ければ改革できない」として、国立大の存続を危ぶむ論調が支配的となりつつある。

 これまで国立大は、私立大に比べて経営面での甘えがあると批判されてきた。確かに、「護送船団」方式の中で、社会的役割を認識せず弟子の再生産だけに明け暮れてきた講座が温存され、改革を遅らせてきたことは事実かもしれない。しかし、あえて不遜であることを承知で言わせてもらえば、学部再編やAO入試導入など、岡大が本気になって独立行政法人化に見合った改革を断行した時には、いくら少子化が進んだとしても、岡大で学部レベルの定員割れが起こるとは思えない。そのとばっちりを受けて深刻な経営危機に追い込まれるのは、周辺の私立大ではないだろうか。そういう意味では、国立大の独立行政法人化は国立大の内部問題ではない。最も脅威を感じるのは(一部のマンモス私大を除く)私大側にあるのではないかと思わざるを得ない。

 新聞記事によれば、日本私立学校振興・共済事業団では、私学助成の交付条件を大幅に緩和する方向で見直しを検討。「これまで学部・学科単位の定員充足率をもとに助成金を交付していた方式を、学校全体にならして定員の50%を満たせばよいことにし、さらに50%を割り込んでも、教育条件向上のために特色ある教育・研究に取り組んでいると認められれば、交付対象として認めることにした。」というが、これはちょっと甘すぎるのではないか。特色ある教育・研究に取り組んでいるかどうかは、結局は受験生が見抜くことであろう。

 余談だが、150人の定員に対して59人しか入らなかった某私大は「実態とかけはなれた受験産業の偏差値ランクで下にされ、イメージダウンになった」とコメントしているようだが、これって、先日の総選挙で「謀略ビラがまかれたために当選者が減った」と言い訳している某革新系政党のコメントに似ているところがある。しっかりした実績があれば、第三者のランク付けや風評など恐れるに足りないはずだ。
【ちょっと思ったこと】

フリーター151万人と「甘えの構造」

 6/28の朝日新聞によれば、牧野労相は27日の閣議に2000年版の労働白書を提出したという。それによれば、
  • 「フリーター」と呼ばれる若者を151万人と推定。
  • 今後10年ほどで15〜29歳の労働力人口が約400万人減少、55歳以上の高齢層は約380万人増加。
  • 学卒後すぐに就職しなかった若者の約4割が「正社員として仕事に就く気がなかった」と答え、「就職口がなかった」人の2倍にのぼった。厳しい就職事情に加えて、仕事に対する具体的なイメージの欠如、目的意識の希薄化が影を落としていること、同居する親の経済的支えといった日本固有の「甘えの構造」も背景にあると分析。
 こうした現象は、和田秀樹氏がたびたび強調して居られる、「シゾフレ人間」型の若者の増加というモデルでも説明できるが、ではどうしてシゾフレ人間が増えてきたのかという根源的な原因に遡ってみるならば、スキナーが見抜いていた「行動のもたらす自然な結果というものがなくなってしまったことによる、生産物からの疎外」あるいは、内山節が強調している「かけがえのない一人の人間として仕事をしているつもりなのに、経済活動のなかでは、代替可能な一個の労働力にすぎないことを知らされる」という現実[いずれも5月31日の日記参照]を反映したものと考えざるを得ない。

 そういう意味では、消費拡大を前提とした景気回復策、それによって雇用を確保していこうという従来型の施策はいずれ大転換を迫られることになるだろう。とはいえ、直ちに変革は期待できない。当面は、企業労働においても職種の具体化、「自然な結果」が随伴するように労働形態を改善する試みなど有効な施策を探っていくしかあるまい。
【今日の畑仕事】

多忙のため立ち寄れず。
【スクラップブック】