じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Y.Hasegawa


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[今日の写真] 宿根亜麻。私の好きな花の1つ。放っておいても毎年どこかで株が成長するが、広場いちめんに咲かせるには手入れが必要なようだ。



5月19日(金)

【思ったこと】
_00519(金)[心理]バスジャック事件についてもクリティカルな視点が必要(その5):教育改革国民会議の議事概要を拝見する

 この連載の3回目(5/12の日記参照)で5/11に出された「教育改革国民会議座長緊急アピール」のことを取り上げた。産経新聞(5/12付のネット記事)
事務局が用意したアピール当初案には、「規範意識を高める教育の徹底」などの具体策も盛り込まれていたが、「文部省主導だ」との批判や、「会議での議論は始まったばかり」などの慎重論が委員から相次ぎ、座長名による抽象的な内容のアピールに落ち着いた。
と記されていたことに反応したものであったが、その後、文部省のホームページ内の文部省・教育改革国民会議・議事概要に、その時の会議での議論の経緯が公表された。

 情報公開の流れの中で、こうした会議の審議内容がダイレクトに国民の前に公開されているということはまことに結構なことだと思う。要旨とはいえ、そこからは各委員のナマの声も伝わってくる。

 緊急アピールの原案(ページの最下部にある)に対して各委員から屈託のない意見が出されている。一例を挙げれば
  • (大宅委員)「命を大事にする」「善悪をわきまえる」などということは誰しもがわかっていること。どうやって「善悪をわきまえる」ことを教えるのかが問われているのが現状。呪文のようにこのようなことを唱えても何の意味もない。
  • (勝田委員)この案に対しては、学校秀才がそつなく書いた文章という印象を持った。国民会議がアピールするにしては、しっかりとした哲学や人の心に訴える力を持った文章となっていない。
  • (森委員)バスジャック事件は例外的な出来事。例外的な事件を対象にアピールするのではなく、これを機会に、大人の目を子どもに向けさせるためにアピールしてはどうか。最初からホームランではなく、シングルヒットでもよい。子どもを見つめなければ規範意識も育たない。
  • (浅利委員)教育基本法のような古びたシステムを改めることは必要だが、その際には、小さな政府の実現の方向で、なるべく官の干渉、管理を排除する方向で議論を進めるべき。
  • (藤田委員)バスジャック事件も5,000万円恐喝事件もカウンセラーを置けば解決する問題ではない。
などは、私も全く同感。国民会議などと言っても「竹林の七賢人が官邸のどこかで議論して..」という印象が拭えなかったが、各委員の発言要旨を拝見して安心した。

 もっとも、こうした議論の経緯を拝見していると、やはりレトリックが幅を利かせているような印象は拭えない。「緊急アピール」ということで時間が無かったせいもあるのだろうけれど...。

 それとこの国民会議の委員にはスポーツ界出身者も入っていたはずだが、議事要旨を拝見する限りでは発言は極めて少ない。各界の論客相手では意見を出しづらい雰囲気があるのだろうか。他の委員に対してインパクトを与えるような積極的な発言が出せなければ「国民の各界から意見を聞いています」というイメージアップのための「看板」だけに終わってしまう。今後の御発言姿勢に注目していきたいと思う。
【ちょっと思ったこと】
  • バスジャック少年の「ネット掲示板」書込

     ゴリさんの日記からの情報で、毎日新聞にバスジャック少年のネット掲示板への書込内容が転載されていることを知った。著作権上の問題が多少気になるが、たぶん公益性重視ということなのだろうか。もっとも、この程度の書込内容は、匿名掲示板にはしょっちゅうあること。文字面だけから犯行の可能性を読み取ることはできない。

     少年がネットを利用していたことについて5/16の朝日新聞記事に次のような園田寿・関西大教授(刑法)のコメントがあった。
    インターネットは、現実に縛られない浮遊感覚を体験できる。普段は寡黙な人も、ネット上では冗舌になれる。少年は現実の社会では人付き合いが苦手だったようだが、インターネット内では解放感を味わっていたのではないだろうか
     確かにネット参加者の中には、現実の社会では人付き合いが苦手の人がいる。ネット上で他の人につきまとったり、「自分を認めてもらいたい」、「構ってもらいたい」、「相手にしてもらいたい」目当てに悪口雑言を吐く人もいる。

     しかし、この少年がどの程度ネットに関わっていたのか、今のところ確かな証拠は無い。また、現実でのストレスを100%ネット上で発散できていたならば現実の犯行には及ばなかったはずであろう。当日の朝日新聞記事にある「『現実』と『仮想』混同?」という見出しは、インターネットについての固定観念や偏見に依拠する形で
    一見不可思議と思われる現象が「ありがち」である
    として読者を納得させ、結果的にクリティカルな思考を停止させる働きをするものに過ぎないと思う[2000年1月30日の日記参照]。

     個人的な印象としては、この少年の場合は、ネットに熱中して現実と仮想とを混同したというより、ネット上でも相手にされず、結果的にのめり込めなかったように思える。最近の報道を見ると、少年は、手段の非現実性は別として、ネットではなく現実の社会のほうに目を向けていたようにも思える。
【今日の畑仕事】

雨のため立ち寄れず。
【スクラップブック】

  • 与党三党は19日、総選挙の共通公約となる「与党三党のめざす基本政策」を決めた。その中で教育改革に関して「徳育の実践など心を育てる教育の断行。華道、武道などの伝統文化の奨励。」を盛り込む[各種報道]。
  •  自民党の都市問題対策協議会(会長・伊藤公介元国土庁長官)は19日、次期衆院選の党公約に盛り込む「都市に関する政策提言」の最終案を固めた。その中で、「少年犯罪対策として全学校への専門的知識を有したスクールカウンセラーの配置」を盛り込む。