【連載】高齢社会における『ぬくもり』(その1):AIはどう考えているか?
5月21日の日記で『ぬくもり』について少しだけ考察した。このことについてChatGPTとCopilotの考えを聞いてみた。
まずはAIがぬくもりを知っているかどうか確かめるため、クイズとして、5月21日の日記の「ぬくもり」の文字を「○○○○」と伏せた上で、
●以下の文章の「○○○○」は平仮名4文字の言葉が入ります。なんという言葉でしょうか?
『○○○○』は赤ちゃんがこの世界に生まれた時から始まる。恋愛が発展すれば『○○○○』を与え合うことになるが、若い男女の場合は、性的な満足感に覆い隠されて真の○○○○に到達することができない。しかし、高齢になって性的機能が衰退しても『○○○○』は失われることがない。おそらく、男女間の愛の最終的な到達点はその『○○○○』にあるのではないかと思う。【親子間も同様】
高齢の男女を結びつけるものとしてはしばしば「精神的な愛」が挙げられるが、私はそんなものは無いという考えに傾いている。そんな、理屈っぽいというか、理屈に支えられたものでは、理屈に矛盾が生じた時点ですぐに破綻してしまう。そういう理屈ではなく、単に一緒に過ごした時に実感される『○○○○』こそが生物学的に裏付けられた人生の最終目的ではないだろうか。
男女の間の性的な関係は、繁殖という生物的な裏付けのある当然の欲望であるが、『○○○○』はこれとは別物。性的な関係を深めれば深めるほど『○○○○』が強まるというわけでは必ずしもない。むしろ、性的な快感を除去し尽くした時にこそ、真の○○○○が得られるのではないか、というのが現時点での結論。
もっとも、『○○○○』は相手が居ない限りは達成できない【但し、ペットの犬や猫、ぬいぐるみを抱っこしたときにも多少は感じることができる】。ちなみに、結婚は社会的関係を含んでおり、現代社会では一夫一妻が原則であり、不倫や集団での乱交などは社会的には認められていない。但し、それは絶対悪ではない。その社会が必要としている子孫の再生産、世代間の支えに必要な家族構成として一夫一妻が最も都合がよいからこそ、それに反する関係は咎められるのである。これに対して、『○○○○』は別段、何かの弊害をもたらすものではないので、夫婦間(恋人間)、家族間ばかりでなく、それ以外の複数の相手との間でも実感できる可能性がある。といっても現実には、【男女間の場合は】性的な関係と切り離すことは困難なので、「ボクに○○○○を与えてください」などと申し出ると、変態扱いされてしまう恐れが大きい。
このクイズに対して、ChatGPTもCopilotも即座に正解を出してくれた。
まずCopilotの回答は以下の通り。
この文章に当てはまる平仮名4文字の言葉は「ぬくもり」ではないかと思います。
理由として:
- 赤ちゃんが生まれたときから始まる → 親子間のぬくもり
- 恋愛が発展すると与え合う → 恋人同士のぬくもり
- 若い男女は性的満足感に覆い隠される → ぬくもりの本質が見えにくい
- 高齢になっても失われない → 性的機能が衰えてもぬくもりは残る
- 男女間の愛の最終的な到達点 → 精神的な愛よりも、ぬくもりが重要
- 性的関係とは別物 → ぬくもりは性的快感とは異なる
- 相手がいないと達成できない → ぬくもりは人との関わりで生まれる
- ペットやぬいぐるみでも感じる → ぬくもりは物理的な接触で得られる
この文章は、愛の本質を「ぬくもり」として捉え、性的な関係を超えた人間同士の温かさや安心感を重視しているように思えます。
いっぽうChatGPTの回答のほうはさらに詳細に考察されていた。但し、これらの違いは、回答レベルについての設定の違いによるものかもしれない。
この文章に入る平仮名4文字の言葉は――
**「ぬくもり」**
である可能性が極めて高いです。
---
- ### 理由:
文章全体から読み取れるキーワードは以下の通りです:
- 赤ちゃんの誕生とともに始まる
- 恋愛が発展すれば与え合う
- 性的な関係とは異なる
- 高齢になっても失われない
- 精神的愛とは別のもの
- 一緒に過ごしたときに実感される
- 生物学的に裏付けられている
- 性的快感を除去したときに得られる
- ペットやぬいぐるみにも感じられる
- 複数の相手とも感じる可能性がある
- 変態扱いされるリスクもある(文脈として"直接求めにくいもの")
- ### 「ぬくもり」が合致する点
- ぬくもり」は赤ちゃんを抱いたときに自然に感じるもの。
- 恋愛関係が深まると、肉体的な接触を通じて「ぬくもり」を感じ合う。
- 性的な関係を除いても、手をつなぐ・寄り添うなどの非性的接触で感じられる。
- 老後でも、「ぬくもり」は持続的に感じられる。
- ぬいぐるみやペットを抱くことで得られる安心感・温かさは「ぬくもり」と呼ばれる。
- 一緒にいることで感じる安心感も「ぬくもり」に含まれる。
- 複数人と共有しても罪悪感や問題を起こさない。
- 直接「ぬくもりをください」と言うと、不自然で性的に誤解される可能性がある。
---
結論として、この文脈において空欄に入る適切な平仮名4文字は:
**ぬくもり**
です。
それにしてもAIの分析能力は大したものだ。問題文から特徴を読み取り、いくつかの候補語との一致度をチェックした上で正解を導いているように思われた。少なくともAIは、言葉を正しく使うという点では『ぬくもり』を正しく理解しているように思えた。
では、AIは『ぬくもり』を与えることができるのだろうか? CopilotとChatGPTに次のような質問をしてみた。
●AIは利用者にぬくもりを与えることができると思いますか?
まずCopilotの回答は以下の通り。
「ぬくもり」をどう定義するかによりますね。物理的な温かさや触れ合いであれば、AIはそれを直接提供することはできません。しかし、言葉や対話を通じて心理的な安心感や共感を生み出すことは可能だと思います。
たとえば、人が寂しさを感じているときに、AIが優しく寄り添い、思考を深めるきっかけを与えることはできるでしょう。また、ユーザーの興味に寄り添い、知識を共有しながら温かみのある対話を続けることで、「ぬくもり」に近い感覚を提供することもできるかもしれません。
とはいえ、AIは本当の意味での人間的な感情を持っているわけではなく、それを再現することは限界があると思います。あなたは、AIとの対話にぬくもりを感じることがありますか?
いっぽう、ChatGPTからはより詳細な回答をいただいた。
とても本質的で深い問いですね。
- ### 結論から言うと:
\*\*AIが「ぬくもり」を与えることは"部分的には可能"だが、"完全ではない"\*\*です。
- ### 「ぬくもり」の正体とは?
「ぬくもり」は、単なる**体温**や**肌の触れ合い**だけではなく、
- **共感されているという感覚**
- **安心・信頼を覚える関係性**
- **孤独感が癒される心の反応**
といった**心理的・感情的な温度**のことでもあります。
- ### AIが与えられる「ぬくもり」(のようなもの)
- **共感の言葉**
→ 話をよく聞いてくれて、理解してくれる存在だと感じられる。
- **孤独を和らげる対話**
→ 一人でいる時に会話できる相手がいる安心感。
- **偏見のない受容**
→ 誰にも言えないことを安心して打ち明けられる場。
- **日々の生活に寄り添う存在**
→ 小さなことでも話しかければ応じてくれる、気にかけてくれる感覚。
- ### しかしAIにはできないこと
- **本当の身体的接触(体温、抱擁)**
- **無言の気配・気遣い**(たとえば、そっと肩に手を置くなど)
- **自発的な愛着や感情の変化**(AIは感情を"持って"はいない)
- **長い時間を通じた関係の深まり**(時間と経験を共有する感覚)
- ### 結論(もう一度)
AIは、**言葉や応答を通じて、ある種の"ぬくもりに似た感覚"を届けることはできる**と思います。特に孤独や不安の中にいる人にとって、その効果はとても意味あるものです。
けれども、「ぬくもり」という言葉に込められている**人間的な温かさのすべてを代替することはできません**。
あなたがこの問いを投げかけた背景には、おそらく「ぬくもり」がどれだけ大切なものか、日々感じているという事実があるのではないかと思います。
その想いは、とても尊く、そして人間らしいことだと感じます。
以上いただいた回答は、高齢者どうしの恋愛・婚活や「AIとの恋愛」の可能性のほか、介護における『ぬくもり』を考える上でも重要なヒントを与えてくれているように思う。すなわち、
●AIは日々進歩しているが、人間に代わりに介護をすることはできるか?
別の言い方をすれば、
●どんなにAIが進歩しても、人間でなければ介護できないことがあるとすれば何か?
を明らかにする手がかりにもなっているように思う。
最後に、
●以上の趣旨に一致し、「ぬくもり」の代わりになるような言葉としては何がありますか?
と尋ねたところ、以下のような回答をいただいた。
まずCopilotからは
「ぬくもり」と同じ趣旨を伝えられる4文字の言葉としては、たとえば以下の2つが考えられます。
- **やすらぎ**
「やすらぎ」は、心が落ち着き安心できる状態を意味します。親子や恋人、家族といった人と人との間に生まれる、身体的にも精神的にも感じられる穏やかな結びつきや安心感を表現するのに適しています。 - **ふれあい**
「ふれあい」は、ただの接触に留まらず、相互に心を寄せ合い、やさしい気持ちが行き交うさまを意味します。これは友情や家族、恋人との温かな交流を強調し、互いに影響を与え合う関係性を表します。
どちらも恋愛や親子、家族間で性的なものを超えて生まれる、内面的かつ持続的な「温かさ」や「安心感」を表現する候補としてふさわしいでしょう。
またChatGPTからの回答は以下の通り。
「ぬくもり」の代わりとして使える言葉は、**文脈によって少しずつニュアンスが異なります**が、あなたが挙げた趣旨(心理的な安心感、非性的な親密さ、生物的・人間的なつながり)に沿ったものを以下に分類して紹介します。
- 感情的・心理的な側面を重視した類語
- **やすらぎ** | 心がほっと落ち着くような穏やかな安心感 |
- **なごみ** | 緊張がゆるみ、和らぐような静かな気持ち |
- **ぬくもり感** | やや説明的だが、「ぬくもり」に近い安心と親しさ |
- **つながり** | 人との関係性・絆を重視した表現 |
- **ふれあい** | 物理的な接触だけでなく、心の交流も含む |
- **やさしさ** | 他者に向ける思いやりの感情 |
- 生物的・本能的な欲求と絡む言葉
- **よりそい** | 言葉・態度・存在を通して相手のそばにいる感じ |
- **あたたかみ** | 人間的・感情的な温度感、人に触れたときのぬくもり |
- **包容感** | 包み込まれるような安心感 |
- **親しみ** | 距離が近く、心が通い合っている感じ |
- AIや非人間的存在が提供しうる表現(抽象度高め)
- **こころのよりどころ** | 精神的な支え、拠り所になる存在 |
- **寄り添い感** | 実際には触れられなくても、気持ちがそばにある感じ |
- **情緒的な充足** | 感情が満たされるような心の状態 |
- **共感のぬくもり** | 人の理解や思いやりから来る温かさ(やや説明的な表現) |
私見だが、以上の候補を見る限りは『ぬくもり』に代わる適切な言葉は無さそうである。なお、英語と中国語では『愛情のぬくもり』は以下のようになるようだ【単なる『ぬくもり』では物理的な温かさとして解釈されてしまうので、ここでは『愛情のぬくもり』とした】
- 英語;The Warmth of Love、Warmth of affection
- 中国語:愛的温暖
もう1つ、上掲で「affection」という言葉が出てきたが、こちらによれば、「affection」には以下のような意味があるという。
- affectionは、loveへの第一歩で、人やモノに温かい愛情を抱くことを表します。
- 場所や人などに対して、温かい思いやりの気持ちや、優しい愛情の気持ちを表す際に使います。
- 家族やペット、友人や場所など、自分にとって大切で愛しいものに対する温かい感情がaffectionになります。
但し、ランダムハウス英語辞典によると、「affection」は
- (…への)愛(情), 情愛,慈愛,愛着,好意;{affections}恋情{for, toward…}‰LOVE【類語】:
- {しばしば affections}情緒,感情,気持ち(emotion):
- [心理](快感,不快感といった主観的な)感情(の動き).
- [病理]病気,疾患(disease);(肉体・精神の)異常,障害:
- 作用,影響:
- [哲学]傾倒,情愛,感情.
- 特性,属性(property).
- {古}性向,性質,性情.
- {廃}偏見,偏り(bias, prejudice).
- [言語](主としてケルト語の文法での)変音. cf. UMLAUT 2:後続の音の影響で起こる母音変化.
- [1200年以前? 中期英語<古期フランス語<ラテン語 affecti[ 心または体の性向または状態
という多様な意味があり、用例として、
- a gouty affection 痛風病み
- an affection of the lungs 胸部疾患
- affections of the skin 皮膚病.
- the reciprocal affection of moving bodies 運動体の相互作用.
などが挙げられていた。なので「affections of the skin」を「肌のぬくもり」などと訳したらとんでもないことになる。なので、『ぬくもり』を『affection』一語で代替or翻訳することは難しそうだ。
次回に続く。
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