じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 【カナリア諸島その8:テイデ山の頂上】
 今回のカナリア諸島の旅行の主な目的は、テイデ山(3718m)のカルデラとエキウムの群生を眺めることにあった。
 このうちテイデ山はロープウェーを利用して3555mまでは到達した、その後は山腹をトレッキングしただけで頂上には登れなかった。これは、立ち入り制限があったため。
 テイデ山に登るツアーとしては日本からは少なくとも以下の3種類がある。
  1. ロープウェーで3555mまで登る。山腹をトレッキングするだけで頂上には登らない。
  2. ロープウェーで3555mまで登る。許可証を提示した上で、残りの163mを徒歩で登る。
  3. ロープウェーは利用せず、未明より登山口(2,399m)へ。 着後、トレッキング開始。アルタビスタ小屋(3,270m)を経由し登頂。

 今回参加したのはこのうちの1.であった。2.については、以前には催行されたツアーがあったようだが、今年のエキウムが咲く時期には1本も募集されていないように思われた。
 3.は今年は5月31日発というツアーがあり、天気が良ければ6月4日に無事登頂する日程となっていた。もう少し若かったら絶対この3.を選んでいたところだが、ツブカル山登山で(登頂できたものの)体力の限界を悟ったこともあり、高低差1399mの夜間登山はもはや無理であると判断し1.を選ぶことになった。
 じっさいに現地に行ってみたところでは、富士山五合目から剣ヶ峯まで登るよりは遙かに楽であるように見えたが、頂上まで登らなくてもカルデラを一望することはできたので、十分に満足できた。

 唯一の心残りとしては、テイデ山の火口(写真中段、下段参照)を見られなかったこと。火山の魅力は何と言っても、登頂した瞬間にそれまでとは違った火口の荒々しい風景が見られることで、こればっかりは登らないと見られない。私が一番感動した火口は浅間山山頂。現在は登山規制により途中までしか登れないようだ。

2025年06月2日(月)




【連載】チコちゃんに叱られる! なぜ鉄は安定?/核融合の「パラドックス」/人類を滅亡に導く数式
 5月30日初回放送の『チコちゃんに叱られる!』の最初の話題は、

金(きん)ってなに?金はどのようにできて私たちの周りに存在するようになった?

であり、放送では「金は宇宙のかなたから飛んできたもの」が正解であると説明されていた。金が生まれ地球の内部に存在するようになった経緯は以下のように説明された【要約・改変あり】。

  • 中性子星の衝突による莫大なエネルギーにより核融合が起こった。
  • 核融合により、中性子や陽子が結合し鉄や金などの原子が生まれた。
  • これらはガスやチリと混じって小さな塊となり、さらに塊どうしが衝突を繰り返して岩石惑星になった。

 以上の説明で、核融合によりいろいろな金属原子が生まれるということは分かったが、それだけではなぜ、鉄、銅、アルミなどに比べて金が希少であるのかは分からなかった。その後、どうやら鉄までの原子とそれより重い元素では作られる仕組みが異なることが分かってきた。そこでChatGPに

鉄は恒星内部の核融合で比較的安定して大量に作られるとのことですが、なぜ鉄より重い元素は作られにくいのでしょうか。鉄の原子には他の原子にはない構造上の特徴があるのでしょうか?

と質問したところ、以下のような回答をいただいた【要約・改変あり】。
とても良い質問です。鉄(特に同位体の**Fe-56**)は、**核融合と核分裂の両方の視点から見て非常に安定な核種**であるため、「エネルギー的な谷」のような存在になっています。以下、その理由を段階的に解説します。

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## ◆ なぜ鉄までの元素は恒星で作られるのか?

恒星の中心部では、温度と圧力が非常に高いため、**軽い元素(主に水素)から重い元素へと核融合反応が進みます**。

このとき、次のような反応が起きています:

* 水素 → ヘリウム(主系列星)
* ヘリウム → 炭素、酸素(巨星)
* 炭素 → ネオン → マグネシウム → ... → **鉄**

これらの反応は**エネルギーを放出します(発熱反応)**。つまり、核融合によって恒星は自身の重力に抗うエネルギーを生み出しているのです。

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## ◆ 鉄で「止まる」理由:結合エネルギーが最大

原子核には「**結合エネルギー(Binding Energy)**」という指標があります。これは、「核をバラバラにするのに必要なエネルギー」のことです。

* 鉄(Fe-56)は、**この結合エネルギーが最も高い核種**の1つです。
* つまり、**鉄より軽い核種は融合するとエネルギーを出す(安定になる)**。
* 反対に、**鉄より重い核種は融合してもエネルギーを吸収してしまう(不安定になる)**。

このため、恒星の核融合では鉄より重い元素は作られにくいのです。

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## ◆ 鉄より重い元素はどうやってできるの?

恒星の内部での核融合では作れませんが、**超新星爆発や中性子星の合体など、非常に極端な現象**では次のような過程で作られます:

### ■ r過程(急速中性子捕獲過程):

* 超新星や中性子星合体時に発生する大量の中性子が原子核に一気に取り込まれ、鉄より重い元素(例えば金やウランなど)が生成される。

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## ◆ 構造的な理由:鉄原子核の「特別な安定性」

鉄が特に安定なのは、単に質量数が中程度だからだけでなく、**陽子と中性子のバランスが良いこと**と、**量子力学的な「殻構造」**によっても説明されます。

* Fe-56 の陽子数 26、中性子数 30 は、それぞれの数の組み合わせとしても非常に安定なもの。
* 特に、**核力による「殻構造(shell structure)」で満たされた状態に近いため、崩れにくい**。

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## ◆ まとめ
  • 鉄までの元素:恒星内で核融合により作られる(エネルギー放出)
  • 鉄より重い元素:核融合ではエネルギーを吸収するため作られにくい
  • 鉄の構造的特徴:結合エネルギーが最大級、陽子・中性子バランス良好
  • 重元素の起源:超新星爆発や中性子星合体によるr過程など

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 今回、いつも利用しているCopilotにうまくアクセスできなかったので【←原因不明】代わりにChatGPTを利用させていただいたが、以前に比べて格段に回答内容が充実していることに驚いた。なるほど、上記の説明で、鉄と金の生成の違いがよく分かった。
 それにしても、「* Fe-56 の陽子数 26、中性子数 30 は、それぞれの数の組み合わせとしても非常に安定なもの。」というのは不思議だ。数学的に意味があるとすれば、この宇宙は数学により成り立っていると言えるかもしれない。

 本題から外れるが、高校生の頃から疑問に思っていた以下の点についても質問させていただいた。

核融合には莫大なエネルギーが必要だと聞きましたが、逆に水素爆弾のようにエネルギーを放出する場合もあるようです。なぜエネルギーが必要な場合と、エネルギーを放出する場合があるのでしょうか?

 いただいた回答は以下の通り【要約・改変あり】。。
とても鋭いご質問です。 「核融合にはエネルギーが“必要”な場合と、“放出”する場合がある」というのは、一見矛盾しているように思えますが、これは**核融合に関わる核種の性質とエネルギー収支の違い**によって説明されます。

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## ◆核融合にエネルギーが「必要」な理由(融合開始のハードル)
まず、「核融合を起こすには高温・高圧が必要」と言われる理由は:

### ■ 正電荷同士の反発(クーロン障壁)
* 原子核(例:水素、ヘリウム)はどちらも**正電荷を持つ陽子を含む**ため、互いに近づけようとすると**電気的に反発**します。 b* この**「クーロン障壁」**を乗り越えるには、非常に大きな運動エネルギー(=高温、数千万〜億K)が必要です。
▲ つまり、**核融合を起こす「初期段階」では必ずエネルギーを“与える”必要があります**。これが「核融合には莫大なエネルギーが必要」と言われる理由です。

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## ◆ エネルギーを「放出」する場合:融合反応のエネルギー収支
いったん核融合が起きて原子核が合体すると、**反応の前後で質量が少し減少する**ことがあります。これが**「質量欠損」**です。
この減った質量は、有名なアインシュタインの式:

E = mc2

に従って、**莫大なエネルギーとして放出**されます。

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##◆ 両者の関係まとめ:エネルギー「投入」と「放出」
  • **開始前**:原子核同士が近づく → クーロン障壁を越える必要あり→外から投入(加熱・圧縮)
  • **融合後**:安定な核種ができ、質量欠損が発生→エネルギー放出(光、熱、運動)


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## ◆ 水素爆弾(熱核兵器)の例
水素爆弾ではこの2つの段階が巧妙に利用されています:

1. **原爆で爆発的な高温・高圧を発生(起爆装置)** → クーロン障壁を破る
2. **重水素・三重水素が融合** → 巨大なエネルギーが一気に放出される

つまり、**「爆発させるにはエネルギーがいる」が、「一度爆発を始めると莫大なエネルギーが出てくる」**という構造です。

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## ◆ まとめ:なぜ両方あるのか?
  • なぜエネルギーが必要?:陽子同士が反発するので、それを無理やり近づける必要がある(クーロン障壁)
  • なぜエネルギーが出る?:軽い核同士が融合してより安定した核になると、質量が減ってエネルギーが出る(質量欠損)


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 なるほど、物理学の知識は高2レベルの私ではあるが、だいたいのことは理解できた。それにしても、莫大なエネルギーの放出を予言したアインシュタインはスゴい。反面、この数式とそれを応用した技術が核兵器を生み出したことも確かだ。そういう意味では、E = mc2は人類滅亡を導く数式になるかもしれない。

 次回に続く。