じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 パフィオヘディラムを3鉢(但し他に希少種の小鉢あり)育てているが、今年はこのうち2鉢で合計7輪が開花した。今年は2月上旬から咲き始め1カ月以上食卓を飾っていたが、そろそろ終盤となってきた。花期が長いのが良い。
 花が全部散った時点でベランダに出し、株分けする予定。


2024年3月26日(火)




【連載】100分de名著 #136『偶然性・アイロニー・連帯』(21)第4回 共感によって「われわれ」を拡張せよ!(5)トランプ現象の予言

 3月24日に続いて、2024年2月5日からNHK-Eテレで放送が開始された、

100分de名著 #136『偶然性・アイロニー・連帯』

についての感想・考察。

 放送では、朱喜哲さんから、理論的な分析が必ずしも人を動かすわけではない、特に今の時代、正しくなさがあるから人はそこに気付けたり何かできる、そういう正しくなさの力という意味合いを文学に託していると解説された。

 文学は「わたしたち」の幅を広げていく鍵になるが。この「われわれの拡張」こそが現代に生きる私たちに大きなヒントを与えてくれる。ということでここからは2016年11月のトランプ大統領誕生の話題が取り上げられた。トランプの出現によりアメリカ社会は、経済格差、人種、移民差別などでさらに分断を深めている。こうしたトランプ現象はローティの『Achieving Our Country: Leftist Thought in Twentieth-Century America』(1998)によって予言されていたいう。当時のアメリカはクリントン政権のもと、工業の中心はIT産業へと舵を切りグローバリゼーションを推進していた。その政策は、多くの移民を流入させるいっぽう、これまでアメリカを支えてきた産業の担い手である白人労働者を失業に追い込んだ。ローティは、このままでは白人労働者は「自分たちの苦痛に誰も耳を傾けてくれない。国が言うところの、われわれの中に自分たちは含まれていない」と憤ると警告した。そして彼らの怒りはいずれ社会を分断するだろうと予言した。
その時点において何かが決壊する。【中略】一連の制度が破綻したと判断し、投票すべき「強い男」を探し始めることを決断するだろう。【『Achieving Our Country』】
この言葉の背景にあるのは、「彼ら白人労働者もわれわれの一員である」とわれわれの範囲を拡張せよとの呼びかけであり、ローティはそうすることで連帯の可能性を見出そうとしていた、と解説された。
 『偶然性・アイロニー・連帯』の最後のところでローティは、
私たちの連帯の感覚が最も強くなるのは、連帯がその人たちに向けて表明される人びとが「われわれの一員」と考えられるときである【中略】。
その連帯は、あらゆる人間存在のうちにある自己の核心、人間の本質を承認することではない。むしろ、連帯とは、伝統的な差異(種族、宗教、人種、習慣、その他の違い)を、苦痛や辱めという点での類似性と比較するならばさほど重要ではないとしだいに考えてゆく能力、私たちとはかなり違った人びとを「われわれ」の範囲のなかに包含されるものと考えてゆく能力である。【齋籐・山岡・大川訳】
と述べている。

 ここでいったん私の感想・考察を述べさせていただくが、「トランプ現象の予言」については、2月28日の日記でも述べたように、私にはよく分からないところがあった。もっとも、『Achieving Our Country: Leftist Thought in Twentieth-Century America』(1998)という本は別段トランプ現象の予言を中心に書かれたわけではない。ミシェル・フーコーなどのポスト構造主義者やジャン=フランソワ・リオタールなどのポストモダニストに代表される文化的左翼を批判し、さらにホイットマンとジョン・デューイなどにも言及した上での予言であったようだ。「われわれ論」だけから言えば、かつての公民権運動やベトナム反戦運動なども、多くの人たちが「われわれ」を求めて集会や行進に参加するという点ではトランプ現象と共通しているように見えるが、たぶんそれとは異なるということを言いたいのだろう。

 もっとも、『Achieving Our Country』刊行後には先にオバマ大統領(在任は2009-2017)が誕生しており、このことについてもちゃんと予言されていなければならない。またたしかにトランプには熱狂的な支持者がおり、次の大統領選挙でもバイデンを上回る票を獲得するのではないかとも言われているが、だからといってアメリカの世論がトランプ一色というわけでもない。トランプ優勢の背景には、バイデン氏が高齢であることへの不安や、民主党内部で左派と穏健派の対立が深まりバイデンに代わる指導者を一本化できないという要因が働いているようにも思われる。

 次回に続く。