じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 近隣のラ・ム−で毎回1個128円の無調整豆乳(税別、PB、要冷蔵、1000ml)を購入してきたが、先週あたりから品薄となり、今週は売り場の配置が変わって姿を消してしまった。昨今の原材料費高騰の影響かもしれない。【以下、すべての税別の価格】
 ということで、代わりに購入したのが1本156円のPB品(写真左、常温保存可、1000ml)であった。以前は138円で売られていたが最近になって値上げされてしまった。
 写真右はドラグストアなどで売られているマルサンの豆乳。価格は通常は188円〜198円だが、時たま148円、まれに138円で販売されている。いずれにせよ、128円の豆乳が姿を消したのは、年金生活者にとってはツライところだ。ま、北九州あたりでは、1本178円〜198円が普通なので、それに比べればまだまだ安いほうだ。


2023年10月13日(金)




【連載】笑わない数学(3)コラッツ予想(1)

 10月11日にNHK総合で初回放送された、『笑わない数学 シーズン2』:

コラッツ予想

についてのメモと感想。

 『コラッツ予想』については、今年の2月頃に、YouTubeの解説動画の視聴をきっかけに、
という考察をしたことがあった。『笑わない数学』では何か新しい進展が紹介されるのだろうか? なお上掲の日記で考察した「一般化」に関しては類似の問題としてウィキペディアでも言及されていたが、2月時点ではそのことに気づかなかった。

 放送ではまず、コラッツ予想とは何かについて説明されたあと、尾形さんが2から10までについて実際に計算をして予想が成り立つことを確認。さらに11以上のいくつかの数についても検証された。なかなか1にならない数としては初期値129があったが、いったん9232まで増加した後はやはり1になった。放送ではなぜか例示されなかったが、27もなかなか1にならない数として知られている。

 続いて尾形さんが独自に考案した「半分証明」が披露された。尾形さんによれば、初期値が偶数になる場合、2で割ればいずれ奇数になる。なので、偶数については調べなくても、すべての奇数についてコラッツ予想が成り立つことを証明すればよいというものであった。このロジック自体は正しいが、だからといって「すべての偶数でコラッツ予想が成り立つ」ということにはならない。
 尾形さんの発想は、四色定理の連載に出てきた最小反例に似ているように思われた。つまり、2から順番に、3、4、5、....というように数を増やしていくと、かなり大きな範囲までコラッツ予想が成り立つことは証明できる。「その範囲」を遙かに超えた任意の大きな数であっても「2で割る」という操作によって「その範囲」以下に落とし込むことができると証明できれば、コラッツ予想は証明できたことになる。もっともこの発想は必ずしも成り立たない。たとえば、16までの数の範囲でコラッツ予想が証明済みであるという知識があった場合、22、24、26、28、といった数は2で割ることで「その範囲」に達するので改めて計算で確かめる必要はないが、34、38、42、46などは2で割ると「その範囲」の外に出てしまうため証明不要にはならないからである。

 同様に、コラッツ予想は、「4k+3」型の奇数だけについて証明すればいいということは言えるが、だからといって「4k+1」型の奇数はすでに証明済みということは言えないという。なお、なぜ、「4k+3」型の奇数だけについて証明すればいいのかについては放送では言及されなかったが、おそらく、

●「4k+3」型の奇数を3倍すると、12k+9=3(4k+3)+1というように「4k+1」型の奇数に転じる

ことと、すべての「4k+1」型の奇数には対応する「4k+3」型の奇数が必ず存在しているためではないかと推測される。

 コラッツ予想はチェコのコンピュータによる計算でかなり大きな数まで成り立つことが確認されており、2023年5月末現在では、

●8垓5777京3599兆4274億9415万144

まで確認されているという。




 放送では続いて、コラッツ予想の研究の経緯が紹介された。
  1. 今から100年ほど前のドイツで、少年の頃から線路の繋ぎ方に興味を持っていたローター・コラッツ(1910-1990)は、やがて数学者になり数字同士の繋がりが気になり始めた。
  2. コラッツは自分の予想がパズルのような遊びと考えていたのか、研究の場ではおおやけにしてこなかった。1950年開催の国際数学者会議での休憩時間に、コラッツは何気ない雑談としてこれを語り話題になった。
  3. アメリカのロスアラモス研究所で冷戦時代の核兵器開発に取り組んでいたスタニスワフ・ウラム(1909-1984)は、この予想に夢中になったが何の結論も導くことができなかった。
  4. イェール大学の角谷静夫(1911-2004)は「私の周囲の数学者がみな一か月間かかりきりになったにも関わらずなんの成果も得られなかった」と書き残した。
  5. アメリカでは「コラッツ予想はアメリカの研究を遅らせるための陰謀なのではないか・・・」というジョークまで飛び出した。
  6. やがて数学者たちは「のめり込むと人生を棒にふりかねない危険な難問」としてコラッツ予想を敬遠するようになり、「この問題を解こうとしてはダメだ!」(リチャード・ガイ)、「数学にはこの種の問題に挑むための準備がまだできていない」(ポール・エルデシュ)、「この問題は異常なほど難しく現在の数学では歯が立たない」(ジェフリー・ラガリアス)、といった敗北宣言が出された。


 次回に続く。