じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 ソースネクストの期間限定ポイントを使ってフォト消しゴムをバージョン6にバージョンアップした。新バージョンのセールスポイントの1つは、「曇り空を晴天に変える」という機能であり、空の部分を自動認識した上で、用意されている16の空模様から選んで貼り替えることができるというもの。画像の、
  • 上段:ミレーの『落穂拾い
  • 下段:火星表面
であり、空を入れ替えるだけでずいぶんとイメージが変わることが分かる。
 このうち、『落穂拾い』については、小学校の頃だったと思うが、図工の専任の先生が「『落穂拾い』の絵は影が描かれていることからもわかるように晴れているはずだが、なぜ青空ではないのか? ミレーは絵の具の色を間違えたのだろうか?」という話をされたのを今でも記憶している。みんなが「そうだそうだ。ミレーは間違えたのだ」と言うと、先生は「ミレーがそんなことを間違えるわけはない」と怒りだし、なぜこのような空の色になったのかを説明してくれた。要するに、風景を描く時、必ずしも見えている通りの色を使う必要はない、描きたいテーマに合った想像上の色であっても構わない、というような話であった。確かに、右側のような青空にすると雰囲気がガラリと変わる。
 なお『落穂拾い』も火星表面も、空の色を貼り替えただけであり、それ以外の部分は同一の画像であるが、空の色との対比によって、ちがった色調に見えるという錯覚が生じるようである。

2022年12月23日(金)



【連載】ヒューマニエンス「“胃” 生きる喜びを創る臓器」(2)胃酸の強さ/食べる時間と食べない時間の分離

 昨日に続いて、9月13日に初回放送されたNHKヒューマニエンス

“胃” 生きる喜びを創る臓器

についての備忘録と感想。

 まず、昨日取り上げたグレリンに関して個人的な感想を補足しておくが、私自身は普段、何かを食べたいという気持ちになったことが殆ど無く、またどこかの店で食べた料理がとても美味しかったというような記憶もない。最近の外食と言えばもっぱら、おかやまプレミアム付食事券を使って回転寿司を食べに行くことぐらいだが、妻は結構喜んでいてあれが美味しかった、あれはまた食べたいなどといくつかのネタを挙げているのに対して、私のほうは単に美味しかったという程度でこれといったメニューを挙げるところまでは至らない。また、海外旅行先ではいろいろな名物料理を口にする機会があるが、これまでのすべての旅行先に関して、あれが美味しかった、もう一度食べに行きたい、と思ったことは一度も無い。幸い直近の胃の内視鏡検査では特段の異状は見つかっていないが、どうやら私の胃の粘膜はグレリンをあまり産出していないようである。もしかするとグレリンが不足し成長ホルモンの働きが弱かったために身長が伸びなかったという可能性もあるが、古希を迎えた今頃になってグレリンを補填したところでどうなるというものではない。

 さて放送では、グレリンの話題に続いて、「胃がヒトの“時間”をつくった」という話題が取り上げられた。遠藤秀紀先生(東京大学)は、【動物の進化の中で】腸そのもの、消化管そのもののはすごく古いが、胃袋はずっと後になってからできてきた、胃は進化的に比較的浅い歴史のものである、と説明された。そのため胃の形は、いろいろに変化を遂げている。
  • 鳥には「腺胃」と「筋胃」という2つの胃があり、「腺胃」はヒトに近い機能を持ついっぽう、第二の胃袋である「筋胃」は食物を細かくすりつぶす機能があり、一部の鳥では砂嚢と呼ばれている。
  • 牛は200リットルにも及ぶような巨大な胃を持っている。それらは4つに分かれており、焼き肉屋で扱われている名称に対応させると「ミノ」、「ハチノス」、「センマイ」、「ギアラ」となる。「ミノ」に棲まわせた微生物で食物を分解、「ハチノス」でさらに効率よく分解し、「センマイ」のヒダに食物を挟んで水分を搾り取り、「ギアラ」で胃酸を使って微生物を溶かして吸収できるようにする。
 このように胃の形や機能は動物によって大きく異なる。そうした差違は環境の違いによってもたらされる。「環境が食べ物を決め、動物はそれに胃を適応させて生き残っていく。胃は動物にとっての生存戦略そのものである」と説明された。

 ヒトの胃の特徴は強い胃酸にある。ヒトの胃酸のpHは1.5もあり、ネコの3.6やイヌの4.5よりも遙かに強力であるという。雑食の動物であるヒトは、病原菌や毒物に近いものをどうしても口に入れてしまうことが多い。それを胃酸で消毒・殺菌しているという実態があるという。もっとも、野良猫は結構不衛生なものを食べるし、飼い犬は雑食に近いようなものまで食べている。ネコやイヌのpHは、ペット化される前の先祖の段階ですでに決まってしまったということだろうか。
 なお、胃酸は食べたものは溶かすが自分の体は溶かさない。これは胃が、筋肉層の上に粘膜、さらにそこから出される粘液によって守られているためである。現代のように衛生環境が整えられている社会では、強い胃酸があることはかえって病気の原因になっている。胃酸を出す細胞の数は体重と相関するため、小柄な日本人は胃酸がそれほど多くなかった。ところが1960年代ぐらいから脂質・タンパク質の摂取比率が増え、これにより胃酸が増えた。胃酸が強くなると逆流性食道炎が起こりやすくなるなどの弊害が出てきた。

 胃を持ったことはその動物に「時間を“分けた”」というメリットをもたらした。動物は餌をとっている時にどうしても外敵に狙われてしまう。そこで、餌を全部胃にため込んで、安全な場所で消化すればリスクが軽減される。つまり胃があれば、食べる時間と食べない時間を分けることができる。この利点を最も活用しているのが人類であり、食べない時間を利用して学ぶ、娯楽を楽しむといった文化を生み出す時間を獲得した。


 次回に続く。