じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 岡大構内には、冬になってもなかなか落葉しない「落ちないイチョウ」と「落ちないモミジバフウ」があり、岡大七不思議に私が勝手に選定しているところであるが、最近、岡大交流広場に植えられた落葉樹が春になっても落葉していないことに気づいた。樹種はモミジバフウやドングリ系と思われるが、一部の常緑樹を除いて、本来は晩秋に葉を落とすはず。樹木自体が枯れてしまえばこういう現象は起こりうるが、ざっと見た限りでは新芽がついていた。受験生のお守りになるかも。

2022年3月02日(水)



【連載】コズミックフロント「“幽霊粒子” ニュートリノの謎」(1)現代物理学の標準理論と神の数式

 2月24日に初回放送された表記の放送を録画・再生で視た。ニュートリノについては、又吉直樹のヘウレーカ!などでも放送されたことがあり、初歩的なことは知っていたが、今回の放送は、発見の歴史や、発見のきっかけとなった実験事実などが体系的に解説されており、わずかながら理解を進めることができた。

 放送の冒頭ではまず、宇宙に存在するさまざまな天体がすべて原子から成り立っていること、またすべての原子は、わずか17種類の素粒子によって形作られているという、現代物理学の標準理論が紹介された。
  • 物質に質量を与えるヒッグス粒子
  • 物質に働く力を伝える粒子 ×4
  • 原子核を構成するクォーク ×6
  • 原子核の周りに広がる電子 ×3
  • 原子核が変質する時に放出されるニュートリノ ×3
 この標準理論を半世紀以上にわたり検証してきた欧州原子核研究機構(CERN)の敷地の一角には、標準理論を検証した石碑があり、神の数式が4行で記述されており、
  • 1行目:物質の間に働く力を記述した数式
  • 2行目:その力がどのように素粒子に働くか
  • 3行目・4行目:これらの素粒子がヒッグス粒子によってどのように質量を獲得するか
を表しているという。私にはそもそも、その数式の左辺の£のような文字が何を示しているのか分からないし、1行目に含まれていた「1/4」は、なぜ「1/2」や「1/8」ではいけないのかもサッパリ分からない。ま、とにもかくにも、この「神の数式」は宇宙の設計図と言われているが、ニュートリノだけは未だ謎に包まれているというのが、今回の放送の内容であった。

 ニュートリノは宇宙のいたるところに存在するが、質量は極めて小さく電荷も無く、他の粒子と殆ど相互作用をしないため、地球すら何も無いかのように通り抜けていく。そもそも、何かが存在するというのは、「その存在」が「他の存在」と影響を及ぼし合うからこそ確認できるはずだ。但し、科学では、影響を及ぼす諸要因は冗長であってはならない。「幽霊」とか「UFO」というのは、それを見たと報告する人に対しては何らかの影響を与えているが、影響を与えたというだけでは存在を証明したことにはならない。他の既知の物理現象が「幽霊」や「UFO」という錯覚を引き起こすこと、もしくは観察者自身が内因性の原因によって幻覚を引き起こすことが明らかにされ、それによって予測や影響の程度が説明し尽くされるのであれば、新たな存在として「幽霊」や「UFO」を付け加えることは冗長になる。そう言えば今回の放送のタイトル「“幽霊粒子” ニュートリノの謎」にも「幽霊」という言葉が使われているが、これはあくまで正体が分からない時点での過渡的な呼称に過ぎない。その性質や他の物質への影響が明らかにされれば、それは「存在」していることになり、比喩的な意味での「幽霊」は不適切な形容ということになる。

 なおここからは脇道に逸れるが、心理学のある立場では「構成概念」が重視される。これは定義上、実在するものではないし、直接観察することもできない。しかし、それによって複雑な現象を簡潔に記述したり予測したりすることができるのであれば有用性はある[]。天文学でも、地上から眺める月や惑星の動きは天動説的な概念で説明しているが、これもそのほうが有用であるからだ【但し、太陽系全体の動きを記述・予測する場合は、地動説のほうが天動説よりシンプルになる】。ま、物理学の世界ならともかく、人間行動の科学においては、存在とか実在といった問題は、いったんそれらがカテゴライズされ名前がつけられた時には、もはやプラグマチズムに基づく真理基準によってしか法則が記述できないと言えるかもしれないが。
]有用性があればよいのだが、逆に問題を複雑化し、理論のための理論をこねくり回す泥沼に陥る恐れもある。

 次回に続く。