じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



01月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る


 1月14日の岡山は最低気温がマイナス2.4℃まで下がり、日の出の際に「太陽柱」と思われる光の柱が見えていた。この日の日没直後にも、かすかながら光の柱が見えていた。

2022年1月15日(土)



【連載】チコちゃんに叱られる!「食後のコーヒー」「平熱が36℃くらいなのはなぜ」「マンホールが曲がり角に多いのはなぜ」

 1月14日に初回放送された、表記の番組についての感想と考察。この回では、
  1. 食後にコーヒーを飲むのはなぜ?
  2. 平熱が36℃くらいなのはなぜ?
  3. マンホールが曲がり角に多いのはなぜ?
という3つの話題が取り上げられた。

 まず1.については「ワインの酔いをさますため」と説明された。コーヒーはエチオピアが原産であるが、もともとは実を団子にして薬として食べていたという。その後、イエメンに伝わり、カフワと呼ばれる飲み物になった。その後さらにヨーロッパに伝わったが、ヨーロッパでは仕事の合間にワインを飲むことがあり、特に頭を使う仕事(銀行業、保険業、新聞など)ではほろ酔い気分では冷静な判断ができない、そこで、その酔いを覚ますことを期待して食後にコーヒーを習慣が定着したという。じっさい、フランスの歴史家ジュール・ミシュレは「コーヒーは力強く頭脳に作用し、蒸留酒などとは反対に明晰さを活性化する。」と書いており、その効用が信じられていたようであった。
 岡希先生(東京薬科大)によれば、体内に入ったアルコールは、血液に溶け込み、脳の働きをマヒさせるが、コーヒーのカフェインはそれを元に戻す効果があるという。番組では、光が点灯してからジャンプするまでの潜時について、食前と、ワイン3杯つきの食事を飲んだあとが比較された。その際、食後のコーヒーを飲んでいない場合は潜時が2倍となったが、飲んでいる場合は潜時は食前と変わらなかった。もっともこの「実験」は2条件各1名ずつの比較に過ぎず、また食後のコーヒーは頭をスッキリさせるだけで体の酔った状態までは回復させないとも補足された。

 ちなみに、私自身は、20歳代〜50歳代の頃は、朝食後と昼食後に必ずコーヒーを飲む習慣があったが、食後の1時間後ぐらいに生じる眠気はコーヒーを飲んでも飲まなくても変わらないことに気づき、ここ数年は全く飲まなくなった。その後、以前買いだめしたインスタントコーヒーの賞味期限が切れそうになり再び飲み始めているが、飲んでも飲まなくても変わりなしのように思われる。但し、夕食後にコーヒーを飲むと寝付きが悪くなることは確かであり、15時以降は絶対に飲まないようにしている。




 次の平熱に関する疑問は「それが一番省エネで動けるから」と説明されたが、なかなか興味深い内容であった。
 動物には爬虫類などの変温動物と、体温を一定にたもてる哺乳類などの恒温動物がいる。爬虫類の肺は毛細血管が少なく、よって肺の表面積も小さいため、取り込める酸素の量も少ない。いっぽう哺乳類は、肺胞と呼ばれる器官ができたことで毛細血管が多くなり、よって肺の表面積が大きくなり取り込める酸素量も増えた。これにより哺乳類では体の中の酸素量が増え、作り出せるエネルギーも増え、スタミナが大きくなった。酸素で作られるエネルギーは、哺乳類のほうが爬虫類の約10倍になったという。

 こうして哺乳類は体温を一定に保てるようになり、棲息できる環境を広げ、生存競争で有利となった。しかし、体温を上げようとすればするほど、たくさんのモノを食べる必要が出てくる。なので無限に上昇することはなく、最も省エネで動ける体温として36〜37℃のあたりに落ち着いた。

 体温にはまた、ウイルスが増殖しやすい37℃より体温を上げて増殖を抑えたり、多くの免疫細胞が37〜40℃で活発化することから発熱でウイルス退治を助けるという働きがあるという。もっとも常時体温を上げているとそのぶん大量のエネルギーが必要になるため、感染時のみに体温を上げるという省エネの仕組みになっているという。
 このことでいつも疑問に思うのだが、感染時の体温上昇が体を守るための適応的な反応であるなら、解熱剤で熱を下げるというのは免疫細胞の働きを抑えることになり逆効果ではないだろうか。確かに熱が下がったほうが気分はよくなるが、それが治療と言えるのかどうか疑問である。

 番組ではさらに、平熱が人種や筋肉量によっても異なる結果が紹介された。集まってもらった外国人4名(南アフリカ、ルーマニア、チリ、ベネズエラ)の体温は、36.9℃から37.4℃となっていて日本人の平熱より高い。また日本人でも、筋肉量の多いボディビルダー3名のの平熱は37℃台であることが分かった。

 なお、以上の説明までのところでは、なぜ哺乳類の平熱が25℃や40℃ではなく36℃台になるのかという、数値上の必然性については説明が不十分であるように思えた。このうち水銀体温計の目盛りの最高値が42℃となっているのは、ヒト生体内の酵素タンパクが42℃を超えると反応できなくなるから(←つまり、ヒトの体温が42℃を超えることはあり得ない)という説明を聞いたことがあるが、低いほうの限界値はどのあたりにあるのだろうか。いずれにせよ、酵素タンパクが働きやすい温度というのは、地球上の外気温・海水温とある程度連動しており(←地球の外気温の変動範囲に収まるような酵素タンパクが結果として地球上に存続した)、平熱もこれと全く独立・無関係の値にはならないものと思われる。
 ちなみに水銀体温計の目盛りでは35℃が最小値になっているようだが、半田山植物園植物園の入口でおでこの温度を測ると、33℃と測定されることがあり、厳冬の時期には、体の一部は33℃以下になることがあるようだ。




 3.のマンホールの疑問については、「下水道を曲げるため」と説明された。マンホールは道路の下に作られる際の中継地点となっており、管の方向や勾配が変化する箇所などに設置することが望ましいと定められているという(『下水道施設計画・設計指針と解説』)。
 番組ではこのほか、下水道の中に流れ込む固形物などを取り除くために、人の入るための大きさのマンホールが必要であること、マンホールの形が丸い理由、デザインマンホールなどにも言及されたが、チコちゃんの放送としては意外にも少なめであった。マンホールの形状やデザインマンホールのネタは、クイズ番組などでもよく取り上げられているので、チコちゃんとしての独自性を発揮させることは難しくボツになったのかもしれない。なお、岡山市内のマンホールのフタの写真はこちらこちらにあり。

 余談だが、マンホールというとすぐに思い浮かべるのが、モンゴルのマンホールチルドレンの話。2019年にモンゴルに行った時に、ガイドさんにその話をしてみたが、うまく話が通じず、ボルトやダシャにお会いすることもできなかった。今はどう過ごしておられるのだろうか。

 次回に続く。