じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 今年のクリスマスグッズ。妻が飾り付けたもので、年々数が増えているような気がする。


2021年12月25日(日)



【連載】チコちゃんに叱られる!「なぜクリスマスにチキンを食べる?」/ガチョウと七面鳥

 12月24日に放送された表記の番組についての感想と考察。この回は、「今夜はクリスマスイブ!豪華拡大版スペシャル」で1時間12分にわたって放送された。取り上げられた話題は、
  1. なぜクリスマスにチキンを食べる?
  2. 1日の始まりはなぜ真夜中?
  3. チコの部屋:3種類の動物を寿命の長い順に並べる
  4. なぜ今でも鍋料理には土鍋を使う?
  5. 日本人が写真を撮るとき笑顔になるのはなぜ?
という5つの話題が取り上げられた。本日はこのうちの1.について考察する。

 さて、毎年この時期にはチコちゃんの番組でもクリスマスネタが取り上げられている。これまでに取り上げられたのは、
  • 2019年1月9日:クリスマス・イブの日付と意味
  • 2019年11月29日:なんでクリスマスプレゼントを靴下に入れるの?
  • 2020年12月27日:クリスマスツリーの起源
であったが、今回はクリスマスの夜の定番であるチキンが取り上げられた。番組によれば、
  1. 古代ローマでは12月17日から7日間、農業の神様に来年の豊作を願う「農神祭」が行われており、身分の違いを超えて楽しまれていた。
  2. 4世紀に、布教のためにキリスト教の指導者たちが12月25日をキリストの生誕を祝う日と定めた。【2019年1月9日の日記参照。】
  3. クリスマスのお祝いでは、住居侵入、教会襲撃、食べ過ぎなど年々羽目を外す行為が目立つようになった。
  4. 1213年、イングランド・ジョン王の宮廷ではワイン6500リットル、豚400頭、ニシン15000匹、ウナギ10000匹が用意されており、また大量のフードロスも起きた。
  5. そこで14世紀、エドワード3世がクリスマス料理の縮小を法律で定めた。
  6. 16世紀になるとどんちゃん騒ぎを嫌うプロテスタントの影響が大きくなり、イギリス国教会のトマス・クランマーは、牛乳がとれる牛や卵のとれる鶏をクリスマスに大量に殺すのはもったいないとして、食肉用だけの七面鳥か鶴か白鳥のどれかを食べてくださいと言った。しかし鶴や白鳥は筋肉が多すぎて固くて消化不良になった。いっぽう七面鳥は肉厚で柔らかくて人気があった。しかも七面鳥は大きく1羽で家族みんながお腹いっぱいになり、暴飲暴食や、はしゃぎ過ぎが解決した。
ということで、とりあえず、クリスマスに七面鳥を食べるという習慣が広まった経緯が紹介された。いっぽう、日本国内ではそもそも七面鳥はあまり飼育されておらず、しかもパサパサして日本人の口には合わなかった。そこで代わりに食べられたのが、日本でも大量に飼育されていたチキンを使ったロースト・チキンであり、さらに1970年代にはケンタッキー・フライドチキンの宣伝でフライドチキンが大ヒットしたという。
 ちなみに、世界的にみると、クリスマスにチキンを食べる地域は、日本、ブラジル、ジンバブエなどに限られており、
  • 夏にクリスマスを迎えるオーストラリアや南アフリカではバーベキュー。
  • フランスでは、ラパン(ウサギ)のグリル
  • チェコは鯉のフライ
  • フィンランドはミルクライス
などが定番料理となっているという。

 ここからは私の感想・考察。
 まずイギリスやアメリカでクリスマスに七面鳥が食べられる経緯は上記の通りであろうが、だからといって日本でチキンが食されるようになったことには直接関係が無いように思われた。上記にもあるように、クリスマスにチキンを食べる地域は、日本、ブラジル、ジンバブエなどに限られており、イギリスの習慣が日本、ブラジル、ジンバブエだけに限定して広まったとは到底考えられないし、その理由も示されていない。
 私はむしろ、戦後の宣伝効果が大きかったのではないかと思う。はっきりとは覚えていないが、1960年代頃からは、店頭で鶏を丸ごとグルグル回しながら焼いている機械が登場し、食欲をそそった。1970年代のフライドチキンの大ヒットもまた影響が大きかったと思われる。ちなみに、私自身が七面鳥の肉を初めて食べたのはなんと大学生協の食堂である。生協食堂で高価な七面鳥が提供されることはあるまい、ニセモノではないかと尋ねたことがあったが、冷凍の食材が安価に輸入できているとのことであった。

このほか、番組内容で面白いと思ったのは、1213年、イングランド・ジョン王の宮廷ではワイン6500リットル、豚400頭、ニシン15000匹、ウナギ10000匹が用意されたというエピソードであり、当時の上流階級は、牛肉ではなく豚肉を、またニシンやウナギといった魚を食べていたことが示唆される。このほか、フランスではウサギ、チェコで鯉が定番料理になっているというのも意外であった。

 ところで、シャーロック・ホームズの話では、イギリスでは当時、クリスマスにガチョウを食べる習慣があったことが示唆されているが、今回は「七面鳥か鶴か白鳥のどれかを食べてください」という話が出てきたものの、ガチョウについては全く触れられていなかった。ネットで検索したところ、こちらの記事によると、

●イギリスには先にアフリカ原産のホロホロチョウ(guineafowl)(参考: Wikipedia ? Guineafowl)が、トルコを経由して輸入されていました。次にアメリカから七面鳥がやってきたとき、トルコからやってきたホロホロチョウと同じ種であると勘違いしたため、turkey と呼んだ。

というような記述があった。いずれにせよ、七面鳥がヨーロッパ大陸にもたらされたのは16世紀、スペイン人によって、アメリカからもたらされたということなので、比較的新しい食材であるように思われた。このほかこちらには、
  • 七面鳥がヨーロッパにいなかったことは、グリム童話に「ガチョウ番の少女」や「金のガチョウ」などガチョウの出てくる話はあっても,七面鳥が出てくる話がないことでもわかる。
  • 今でも北欧では、クリスマスのごちそうは豚肉
さらにこちらには、
船乗りのウィリアム・ストリックランドが、新大陸で、原住のインディアンから七面鳥を6羽購入し、イギリスへ持ち帰ったのは、1526年のこと。この事から、彼は、後に、七面鳥を自分の家紋に加えたと言います。入手の難しさから、七面鳥は、当然、しばらくは、金持ちの食べ物で、ヘンリー8世などの食卓にも登り。後に、イギリスのノーフォーク州などでも飼育されるようになりますが、ヴィクトリア朝労働階級のクリスマス・ディナーは、まだ七面鳥より、安めのガチョウだったと言います。
といった記述がある。
 いずれにせよ、番組では「イギリス国教会のトマス・クランマーは、牛乳がとれる牛や卵のとれる鶏をクリスマスに大量に殺すのはもったいないとして、食肉用だけの七面鳥か鶴か白鳥のどれかを食べてくださいと言った」というエピソードが紹介されているが、実際には、一般庶民の間では豚肉やガチョウが食べられていた可能性があり、いきなり日本で「七面鳥ではなくチキンになった」というわけでは無さそうに思えた。

 次回に続く。