じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 9月18日の17時58分〜18時02分頃、南東の空に半月型の虹が出現した(写真上)。その後、棒状となり(写真下)、一時、左上方向に虹のアーチがうっすら見えるようになったが、日没とともに消失した。

2021年9月19日(日)



【連載】新型コロナとABO血液型(3)「免疫学からみた血液型と性格」(1)

 まず、昨日まで取り上げていた新型コロナと血液型の関係であるが、リンク先の東洋経済の記事は「2021/09/11 14:00」配信となっており、藤田先生の最新のご寄稿であろうと思っていたのだが[]、本日、ウィキペディアを閲覧したところ、なんと、藤田先生は2021年5月14日、誤嚥性肺炎のため東京都内の病院でお亡くなりになっていることを初めて知った。ご冥福をお祈りします。
今頃気づいたが、たしかに、この記事の冒頭には「感染免疫学者である藤田紘一郎氏の最新刊『血液型と免疫力』を一部抜粋、再構成し、お届けします。」と書かれていた。

 本日は、その藤田先生が『心理学ワールド46号』(2009年7月)に寄稿された、

巻頭随筆 ことばの森 免疫学からみた血液型と性格(2009年7月)』

についてコメントさせていただくことにしたい。

 ちなみに、この『心理学ワールド』というのは日本心理学会の刊行物であるが、学術論文を掲載する雑誌ではなく、
毎号特集テーマを組み、気鋭の研究者の解説記事の他にトピック、インタビュウ、大学の紹介、心理のフイールド紹介、日本の心理学史等が掲載されます。心理学研究者に限らず、一般読者を想定しています。
という趣旨の会員間交流誌、啓蒙誌のようなものであり、私も一度だけ原稿を掲載してもらったことがあった。この46号は「子育ての神話」がテーマとなっており、血液型と性格の話題がなぜ巻頭随筆として掲載されたのかはよく分からない。
 なお、2009年の日本心理学会の大会は立命館大学衣笠キャンパスで開催されており、血液型関連では、 といった発表があった(大村先生は、純粋に科学的な立場から「血液型と性格」の解明に真摯に取り組んでおられたが、2015年10月31日にお亡くなりになっている)。




 前置きが長くなってしまったが、私が理解した限りでは、『心理学ワールド46号』に掲載された随筆の要点は以下のようになる【あくまで長谷川による要約・改変】。
  1. 私【=藤田先生】は、血液型と性格の間には「関係がある」と考えている。
  2. ABO血液型を人間に付与したのは腸内細菌であり、人間の適応力がABOという血液型を作り上げた。
  3. 免疫力は生まれながらにして決まっている。その順位は、免疫力の強い順に、
    O>B>A>AB
    となる。
  4. O型者は感染症や癌にはかかりにくい。
  5. 乳酸菌、ピロリ菌、ノロウイルスなどは消化管の中の血液型物質に特異的に吸着する。A型物質に吸着するノロウイルスはA型者に病気を起こしやすい。
  6. 血液型の遺伝子「9q34」のすぐ近くにある遺伝子には胃酸の濃度を決定する遺伝子がある。O型者の胃酸の濃度が高いのはこのことに関係しているかもしれない。
  7. O型者は免疫力が強いので、結核や梅毒にかかりにくく、さらに癌や生活習慣病にもかかりにくいので、何事にも開放的になり、新しいものに果敢にチャレンジし、自己主張が強くなった可能性がある。
  8. いっぽうO型者は、自己主張が強いことで周囲と衝突することが多くなる。するとそのストレスで、もともと胃酸の分泌の多いO型者は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍になりやすい。
  9. A型者は、肺結核、癌、糖尿病、心筋梗塞など、いろいろな病気にかかりやすい。結核は伝染病なので、周囲の人たちを気にするようになる。また、多くの生活習慣病は人間関係からストレスをで悪化するため、A型者は周囲の人たちと協調するような性格になっていった可能性がある。
  10. B型者は、O型者の次に免疫力が高いので自己主張が強いが、肺炎や食中毒にかかりやすいので多少オタク気味になり、自由奔放に見られるようになる。
  11. AB型者は免疫力が最も弱いので、なるべく外出は避け、自分自身でコツコツと勉強し、芸術肌を身につけるようになった。
  12. 以上の傾向はあるが、血液型は相手の性格を判断するための材料ではなく、自己の免疫機能を知るための材料である。なので血液型で性格を決めるのではなく、自分の血液型を知ることで健康で長生きできる生活を送るために生かすべきである。
 以上のご主張のうち、「X型は免疫力が高い」とか「Y型は胃酸の濃度が高い」というような医学的知見については、素人の私には何とも言えないが、事実として確認されているのであればその通りであろうと思う。しかし、「○○が高い」と言っても、ごく僅かの差であるのか、その血液型者を特別扱いする必要があるほどに圧倒的な差があるのか、については数値に基づいて吟味する必要があるように思う。

 要するに、統計的に有意な差があったからといって、それが僅かな差であって、予測や施策に影響を与えるほどでなければ、そのことを大げさに取り上げるのは無意味(=有用性がない)ということになる。例えば、男の子が生まれる確率は女の子が生まれる確率よりも若干高い。統計的には有意に「男の子のほうが生まれやすい」と言えるかもしれないが、だからといって、結婚相手が見つからないほど女性が少ないというわけではない。いっぽう、男女の寿命の差はかなり大きい。なので、生命保険料は男女に差があるし、高齢者施設は女性利用者が多いことを前提に設計される。上掲の、いろいろな病気のかかりやすさが、医療に影響を与えるほどの決定的な差であるとするならば、血液型に基づいて、入院の必要性や重症化対策をとる必要があると思われるが、そこまでの大きな違いは確認されていないように思う。

 そうなると、昨日の日記の最後の所にも述べたように、「X型者にはQという傾向を持つ人が多い」というデータを、「あなたはX型者だからQという傾向を持つ」という予測にすり替えてしまうことは、あたかも特定の血液型者全員がそのような傾向を持っているかのように決めつけてしまう危険につながるように思う。

 次回に続く。