じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 ウォーキング中に見つけたカナヘビ。カナヘビの尾率(頭胴長に対する. 尾の長さの比)は約2倍と言われているが、実際に見ると、その長さに驚く。

2021年7月30日(金)



【連載】ヒューマニエンス「“腸内細菌” 見えない支配者たち」 その2 パプアニューギニア高地人

 昨日に続いて、NHK-BSPで放送された、

ヒューマニエンス 「“腸内細菌” 見えない支配者たち」【初回放送2021年7月15日】

についての備忘録と感想。

 番組では続いて、「腸内細菌は恋心ばかりでなく、ヒトの肉体をダイレクトに操る」という例として、パプアニューギニア高地人が紹介された。彼らの主食はサツマイモであるが、菜食者であるにもかかわらず。村の男たちは筋肉のついた逞しい体格をしている。その原因は、

宮谷秀一・奥田豊子・小石秀夫 (1988). パプアニューギニア高地人の基礎代謝. 体力科学, 37, 296-302. 【無料で閲覧可能】

などの論文で明らかにされた。調査に参加した一人、辨野義己先生(理化学研究所)によれば、パプアニューギニア高地人は窒素固定菌を保有しており、これにより腸内で発生した窒素はアミノ酸を形成し必要なタンパク源を獲得している可能性がある。これについて、スタジオゲストの内藤先生は、「腸内細菌はヒトのために群れをなしているのではない。腸内細菌は自分たちのために群れをなしており、ヒトはそのおこぼれを頂戴している」という別の見方を提唱しておられた。パンダが笹の葉や竹を食べるのは、パンダの腸内に特有の細菌があり、その細菌がパンダの摂食行動を支配しているとも言える。パプアニューギニア高地人の場合も、彼ら自身がサツマイモを好んでいるのか、腸内細菌によって食べさせられているのかは断定できないという。

 内藤先生の「妄想」によれば、今晩のおかずも腸内細菌が決めている可能性がある。より詳細には、腸内細菌が報酬系をコントロールしているという可能性である。サツマイモを食べ続けるパプアニューギニア高地人の場合も、サツマイモを嫌々食べているわけではない。行動分析学的に言えば、特定のモノを食べた時に腸内細菌が報酬系に働いてそれを強化するというような仕組であるようだ。同じことは、コアラがユーカリの葉を食べ続けることにあてはまる。パンダもコアラも、他の動物との競合を避けるため、腸内細菌と連携して、単一の食物を食べるようになった。

 ここからは私の感想になるが、食べ物の好みについては、私自身、 などの総説論文を書いたことがあったが、腸内細菌の働きについては全く念頭になかった。

 パプアニューギニア高地人については、私が小学生の頃、『ニューギニア高地人』(藤木高嶺写真、本多勝一文)の連載を読んだことがあった。現地の人たちの生活を知るには、現地の人々と同じモノを食べ、同じ服を着て、同じ家に住むことが望ましいとは思うが、番組でも言及されていたように、窒素固定菌を持たない日本人がサツマイモばかり食べても充分なタンパク質は獲得できず、下痢と栄養失調に陥る可能性がありそうだ。

 なお、小学校の理科で、マメ科の植物の根に共生する根粒バクテリアの観察をしたことがあるが、上記の窒素固定菌もその一種と思われる。

 次回に続く。