じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 このところ、セミが鳴く様子は昨年来YouTube動画で公開しているが、今回は、アブラゼミが鳴く様子を横から撮影することに成功した。横からなので、発声器官の振動する様子がよく分かる。
 なお、岡山では現在、午前中はクマゼミ、午後はニイニイゼミ、アブラゼミ、ツクツクボウシ、ミンミンゼミが鳴いているが、ニイニイゼミとアブラゼミは声が似ているため、大合唱しているもとで両者の比率を調べるのは難しい。ツクツクボウシとミンミンゼミは1匹鳴いているだけでも簡単に区別できるが、そのぶん、意外と数は少ない可能性がある。

2021年7月29日(木)



【連載】ヒューマニエンス「“腸内細菌” 見えない支配者たち」 その1 腸内細菌が好みを決める

 7月27日に続いて、NHK-BSP「ヒューマニエンスの腸の話題。今回からは、7月15日と7月22日に2週連続で放送された腸内細菌についての備忘録と感想。

 番組の冒頭ではまず、地球を支配しているのは人間でも昆虫でもなく、無数の細菌であると指摘された。細菌は地球の至る所に存在するが、一人の人間の腸内細菌の数はおよそ100兆と言われており、ヒトの細胞の総数37兆を遙かに上回るという。腸内細菌は食べ物を分解し人間にさまざまなメリットをもたらしてくれる。実験により腸内細菌を奪われたマウスは、異常行動を起こす。
 もっとも、腸内細菌の振る舞いは、別段、人間に利益をもたらすことを目的としているわけではない。結果として共生関係が保たれたと言える。

 内藤裕二先生(京都府立医科大学)によれば、遺伝子が分からなかった時代、日本では細菌を善玉菌(発酵に関わる)と悪玉菌(腐敗をもたらす)に区別していたが、英語論文では善玉、悪玉という区別はない。今は善悪には分けられないというのが最近の見方であるという。

 金井隆典先生(慶應義塾大学)によれば、ヒトの好みは腸内細菌によって決まることがあるという。ヒトと同じ腸内細菌を持っているショウジョウバエを2群に分け、一方は糖蜜、一方はでんぷんで育てると、異なる腸内細菌を持つようになる。その後両群を解き放つと、76%の確率で、同じ腸内細菌を持つ個体同士が交尾することが確認されたという。

出典【無料で閲覧可能】:Gil Sharon , Daniel Segal, John M Ringo, Abraham Hefetz, Ilana Zilber-Rosenberg, Eugene Rosenberg (2010). Commensal bacteria play a role in mating preference of Drosophila melanogaster. Proc Natl Acad Sci U S A, 107, 20051-6.

ショウジョウバエが相手を選ぶ際にはフェロモンが関わっているが、その由来は腸内細菌であるという。

 このことからの推測として、人間でも同じような腸内細菌を持っている人たちどうしが結ばれる可能性が指摘されたが、出演者の間からは、ショウジョウバエの研究結果を人間に結びつけることへの疑念が表明された。もっとも内藤先生によれば、ヒトの疾患に関わる遺伝子の約6割はショウジョウバエと同じであり、また糖尿病や神経疾患のショウジョウバエを作って医学研究に利用することが行われているという。さらに、ラクトバチルス(乳酸菌)などのように、ヒトとショウジョウバエが共通して持っている腸内細菌もあるという。人間の体臭は腸内細菌が作っている可能性があり、対人的な好みに影響を与えているかもしれないという。

 ここからは私の感想になるが、ショウジョウバエと異なり、対人関係は様々なファクターによって形成されるため、腸内細菌由来のフェロモンや体臭によって相手の好みが影響を受ける度合いは小さいように思われる。源氏物語のような時代であれば話は別かもしれないが。

 次回に続く。