じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 4月17日の夕刻、月齢5.3の月と火星が接近している様子を眺めることができた。写真上は19時25分、写真下は20時28分に撮影。天文年鑑によれば、このあと21時08分には、0°08′まで接近し【←観測地点にもよるだろうが、この数値は小さすぎるように思える】、東南アジアでは火星食になったはずだが、そこまで見届けないうちに寝てしまった。

2021年4月18日(日)



【連載】#チコちゃんに叱られる!「お玉の由来」「男にヒゲが生える理由」

 4月16日に初回放送された、NHK チコちゃんに叱られる!の感想と考察。
 なお、4月14日の日記で、ウィキペディアの該当項目でしばらく削除されていた放送リストが復活したことに歓迎を表明したばかりであったが、4月17日にアクセスしたところ、またまた、リストが削除されていた。一刻も早い再復活を望む。【変更履歴を見ると、4月16日夜の放送のあといったん放送リストつきの記事が更新されているが、その30分後に、別の執筆者により再び削除されたようだ。放送リストが記載された版は、過去の履歴から閲覧可能】。

 さて、今回取り上げられた疑問は、
  1. なぜお玉を「お玉」という?
  2. 男の人にヒゲが生えるのはなぜ?
  3. SNSで見かける「#」この記号ってなに?
という3つであった。本日はこのうちの1.と2.について考察する。

 まず1.については、番組では「お多賀がブームになったから」と説明された。ややこしい経緯があるようだが、私が理解した範囲で要約すると、
  • お玉はもともと杓子と呼ばれていた。かつては、ひょうたんを半分に切ったものや、木を彫ったもので食べ物をすくっていた。
  • 弥生時代、稲作が始まって以降、米のことを「稲魂(いなだま)」と呼んだ。それをすくう杓子は、魂を入れる杓子という意味で「お魂杓子(おたまじゃくし)」と呼ばれるようになった。但し、その段階では、杓子の呼び方は地方によってマチマチであった。
  • 滋賀県・多賀大社の「お多賀杓子」が、坊人【多賀大社境内にあるお寺の僧】が「お伊勢参らばお多賀に参れ お伊勢お多賀の子でこざる」という「CMソング」とともに全国に広まった【多賀大社は伊勢神宮の親神様にあたる「伊邪那岐大神(いざなぎのおおかみ)」と「伊邪那美大神(いざなみのおおかみ)」を祀っている】。
  • 「おたがじゃくし」が「おたまじゃくし」に変じた原因は不明。番組では、「おたまじゃくし」のほうが言いやすかったためと推察していた。
というような内容であった。番組で説明されたように「おたまじゃくし→おたがじゃくし→おたまじゃくし」という変遷があったのか、それとも「お多賀杓子」と無関係に、古来からの「おたまじゃくし」の呼称がそのまま統一されていったのか、もうすこしエビデンスが必要であるように感じた。

 なお、蛙の子や音符のことも「おたまじゃくし」と呼ばれるが、杓子と蛙の子と音符を同じ呼称で呼ぶ言語が日本語以外にあるのかどうかは未確認。




 次の2.については、「パンチから守るため」と説明された。男性にヒゲがある理由については、ダーウィンの「ヒゲは女性をひきつけ男性を魅力的に見せるものだ」など、さまざまな説が提唱されてきたが、今回の番組では、2020年4月に新たな説を提唱したデビッド・キャリア教授(ユタ大学)が直接オンライン出演しておられた。キャリア先生が、人工的な骨にヒツジの毛を巻いて、衝撃を与えた際の骨のダメージを計測したところ、毛を巻かなかった条件では95%の確率で骨が破損するが、毛を巻いた場合はその確率は45%に低下した。また毛を巻いていた条件では衝突の際の衝撃が約37%緩和されたという。

 ネットで検索したところ、キャリア先生の紹介はこちらにあり、当該の論文は、

●Beseris, E. A, Naleway, S. E. & Carrier, D. R. (2020). Impact Protection Potential of Mammalian Hair: Testing the Pugilism Hypothesis for the Evolution of Human Facial Hair.Integrative Organismal Biology, 2,

でありこちらから無料で閲覧できることが分かった。考察部分の一部をを引用させていただくと、
The results of this study are consistent with the suggestion that the sexually dimorphic facial hair of humans may have evolved in response to selection on male?male fighting performance. Similarly, although not tested here, our results also support the suggestion that the mane of male lion’s provides some level of protection from injury when males fight (Darwin 1871; West et al. 2006; Blanchard 2010) due to the capacity of hair to slow and expand the area of energy transfer. As mentioned in the Introduction, male beards are one of the most sexually dimorphic features of human anatomy (Darwin 1871; Dixson et al. 2018). Men with full beards are perceived as being more masculine, socially dominant, and behaviorally aggressive in comparison to clean-shaven men (Neave and Shields 2008; Dixson and Vasey 2012; Dixson and Brooks 2013; Saxton et al. 2016; Sherlock et al. 2017; T?ebicky et al. 2019). Additionally, facial hair has been shown to positively impact mating success in highly competitive environments (Barber 2001; Dixson et al. 2017). These observations are all consistent with the hypothesis that beards evolved to enhance fighting performance by providing protection to vulnerable aspects of the face. Indeed, aspects of the anatomy of the human facial skeleton, and sexual dimorphism in facial shape, have been suggested to have evolved as a result of male?male contest competition, and act to protect the face against damaging strikes (Puts 2010; Stirrat et al. 2012; Carrier and Morgan 2015; Puts et al. 2015).
上掲の考察では、人間の髭ばかりでなく、雄ライオンのたてがみにも言及されていた。

 なお、番組では「男性にヒゲが生える理由については、男らしさや異性へのアピールとする説もあるが、今回はデビッド教授が去年4月に発表した研究で新たな可能性が出てきたため、番組で取り上げさせていただいた。」と断っていた。

 ヒゲの役割が、単なる見かけ上のアピールだけでなく、競争場面で防御的役割を果たし有利な結果を導くという可能性があることは分かったが、やはりダーウィンが指摘したような要因も大きく関わっているように思う。

 なお、体毛については、2021年1月7日にNHK-BSPで放送された、

ヒューマニエンス 「“体毛” 毛を捨てたサル

でも取り上げられていたが、頭髪、脇毛、陰毛の役割については考察されていたものの、髭については何も言及されていなかったと記憶している。

 ちなみに私自身は、以前、某研究所での長期滞在時、海外旅行中などに髭を伸ばしたことがあるが【こんな感じ】、見栄えが悪く、自分の顔には髭は適さないと判断した。最近は、イミグレーションでのトラブルを避けるため、海外旅行中でも毎日髭を剃るようにしている。

 次回に続く。