じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 2月8日の岡山は記録上の降水量はゼロであったが、冬型の気圧配置の影響でときおり雪雲が通過し、短時間ながら時雨模様となった。
 写真は、半田山植物園ウォーキング中に出現した虹。時雨の範囲が限られていたため、アーチ状ではなく、アーチの右側の根っこの一部のみであったが、とても明るく、色が分かれているのがはっきりと見えた。
 なお、日本では「虹は七色」が一般的であったが、その後六色説が受け入れられつつあり、高校の物理教科書では6色と記載されているという【2018年8月26日の日記に関連記事あり】。
 今回の虹の写真を見ると、私には、下から、紫、青、緑、黄、オレンジ、赤紫の6色に分かれているよう見える。

2021年2月9日(火)




【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(49)杉山尚子先生の講演(14)随伴性ダイアグラム/ABC分析の由来

 またまた間が空いてしまったが、1月30日に続いて、表記の話題について考察する。今回からは、12月15日から有料で公開されている、

●杉山尚子先生(星槎大学)×武藤崇(同志社大学)による対談:「随伴性ダイアグラム」をめぐる冒険

についての感想を述べさせていただく【2020年12月17日および、翌日以降に関連記事あり】。

 有料の限定公開ということなので、詳細な内容に立ち入ることはできないが、この企画は、
  1. 杉山先生がお作りになったビデオクリップ
  2. 杉山×武藤対談
  3. 武藤先生による追加説明
という構成になっていた。

 このうち1.ではまず、「三項随伴性」、「行動随伴性」、「随伴性ダイアグラム」、「ABC分析」という4つの概念の違いが説明された。杉山先生によれば、この4つのうち「随伴性ダイアグラム」というのは本来「随伴性の図解」という意味であり、他の3つの随伴性についてそれぞれ図解をすれば、「三項随伴性のダイアグラム」、「行動随伴性のダイアグラム」、「ABC分析のダイアグラム」になるとのこと。確かに「ダイアグラム」というのはそういう意味であろう。

 次の興味深い話題は、「三項随伴性」と「ABC分析」の違いである。杉山先生によれば、三項随伴性は、「弁別刺激→反応→強化」という形で表現され、おそらくスキナーに由来し(但し、スキナー自身は「三項随伴性」という言葉は殆ど使っていない)、基礎系(実験的行動分析)の研究者によって使用されている。いっぽう、ABC分析は「先行刺激(事象)→行動→結果」という形で表現され、応用・実践系の研究者や臨床家によって使用される。つまり両者の違いは言語共同体の違いであり、またABC分析では「先行刺激」のところに多様な事象が含まれていると、説明された。

 上記のご説明は納得できるところがあり、じっさい、私自身も実験的行動分析学から学び始めたため、「ABC分析」というのはかなり後になってから耳にした言葉であった。私の手元にある『臨床行動分析のABC』(ランメロ & トールネケ(著)、松見(監修)、武藤 & 米山(監訳)、2009)を拝見すると、ABC分析の「A」の部分というのは、その行動が、いつ、どんな状況のもとで起こっているのかを観察しましょうというような意味で使われており、観察を始めた時点では、制御変数としての弁別刺激のほか、全く無関係の刺激や条件もリストアップされ(後に除外)されるように見えた。また、ABC分析の目的は、「行動が起こった文脈から人の行動を理解する」にあるとも記されていた(93頁)。

 「ABC分析」という言葉を誰が言い出したのかについても興味深いお話があった。杉山先生は、当初、ビジネス系の応用行動分析紹介書において、行動分析の専門用語を普及しやすい分かりやすい用語に置き換える流れの中で広まったと推測しておられたが、Bijouも名前も挙げられており、生存者に問い合わせても、真相は不明らしい。
 ま、「チコちゃんに叱られる!」の感想と発展的考察 の連載でもたびたび指摘しているように、ある言葉がなぜ使われているのか(ここでは「ABC分析」)ということは、その言葉の由来を尋ねるだけでは不十分であり、いま現在、その言葉を使う行動がどのように強化されているのかを明らかにする必要があるように思う。ABC分析については、語呂合わせの良さという分かりやすさが一番の理由かとは思うが、同時に、初学者にとっては混乱、混同を招きかねない問題もありそうだ。

 不定期ながら次回に続く。