じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 12月21日は1623年7月17日以来397年ぶりに木星と土星が大接近となった(但し、地球からの見かけ上の最接近)。肉眼では2つの星が辛うじて分かれて見えているだけであったが、久しぶりに望遠鏡を引っ張り出して覗いたところ、木星の衛星や土星の輪を、望遠鏡の1つの視野の中で同時に眺めることができた。【デジカメで撮影した写真は楽天版(一番下の写真)にあり。】
 木星や土星は、太陽と同じ方向に見える(「合」となる)期間を除けばいつでも観察することができ、大接近だからといって特に別の見え方をするわけではないが、じっくりと時間をかけて眺めながら、地球、木星、土星がほぼ一直線に並んでいる景色から太陽系を実感することができた。




2020年12月21日(月)




【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(40)杉山尚子先生の講演(5)「行動随伴性」の有用性

 昨日に続いて

●杉山尚子先生(星槎大学)×武藤崇(同志社大学)による対談:「随伴性ダイアグラム」をめぐる冒険

についての感想と考察。本日は、「行動随伴性」というツールの有用性について考察する。

 杉山先生の講演の中でも言及されていたように、「行動随伴性」は基本的に2項の随伴性であるが、行動が環境にどういう変化を及ぼしたのかを分かりやすくするために、行動の直前の状態と、直後の状態を明示するために、

●(直前)→(行動)→(直後)

というように形式的には3項で記述される。しかしこれは、三項随伴性とは本質的に考え方が異なるようだ。
 三項随伴性の場合の「先行要因→行動→結果」【「先行要因」は「先行条件」とか「先行刺激」などと書かれることもあるが、私自身は「先行要因」が最も妥当であると考えている】という時の「結果」は行動のあとの部分に書かれており、先行要因との連動は前提としていない。これに対して、行動随伴性における結果とは、直前と直後を比較した時の変化として記述される。なので、「直前」のところに弁別刺激が含まれることはあり得ない。
 12月17日にも述べたように、直前と直後を比較した時の変化として「結果」を記述すれば、その結果が、何かの事象の出現なのか、消失なのかを区別することができる。つまり行動随伴性のダイアグラムというツールを活用することで、「好子出現」と「嫌子消失」を区別し、行動を変容させる要因を操作可能な形で見つけ出すことが容易になるわけだ【但し、ストーブに火をつけるのは「暖気という好子の出現」か、「寒さという嫌子の消失か」といった議論は残る】。
 このほか、阻止の随伴性を論理的に分類するにあたっても、直前と直後【但し、阻止の随伴性の場合の変化は「直後」ではなく「やがて、そのうちに」という場合が多い】における環境変化を記述することが重要である。あくまで長谷川による解釈だが、阻止の随伴性というのは、行動を続けても環境変化は起こらないが現状は維持できる、しかし行動しないと環境側が勝手に変化してしまう、という場合に論理的に場合分けをすることができるような「随伴性」である。具体的には、例えば、「嫌子出現阻止の随伴性」は、
  • (直前)嫌子なし→行動する→(その後も)嫌子なし
  • (直前)嫌子なし→行動しない→(やがて)嫌子出現
というように、行動した場合と行動しなかった場合の両方における環境変化を記述することで説明できる。この「嫌子出現阻止の随伴性」に該当するものとしては、ウイルスが蔓延している時に、
  • (直前)感染なし→予防接種をする→(その後も)感染なし
  • (直前)感染なし→予防接種しない→(やがて)感染【病気という嫌子が出現】
という行動が強化される場合が挙げられる。
 阻止の随伴性は、多くの場合、直接効果的な随伴性ではなく、ルール支配行動という形で変容するものと思われるが、とにかく、そのルール支配行動がうまく遂行されている場合、あるいは、なかなか生じていないような場合に、上掲の(行動する場合と行動しない場合を含めた)随伴性ダイアグラムで記述すれば、問題点がどこにあるのかが分かりやすくなってくるように思う。
 阻止の随伴性を基盤としたルール支配行動は、「軍備を拡大しないと他国から攻撃される」といった政策宣伝、「信仰が足りないとバチがあたる」といったカルト宗教のマインドコントロールなど、さまざまな形で現実の日常行動に影響を与えている。それらのカラクリを説明するためには、巨視的な視点からみた行動随伴性のダイアグラムが大いに役に立つのではないかと私は考える。

 不定期ながら次回に続く。