じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 生協食堂(マスカットユニオン)2階から眺めるケヤキの紅葉。今年は新型コロナ対策のため、各テーブルにパーティションが設置され、昨年までとは景色が一変してしまった。なお2019年は適当な写真が見つからなかったので、比較写真として2018年10月撮影の写真を掲載しておく(風景そのものは、2018年と2019年で全く変わらない)。

2020年10月21日(水)



【連載】「刺激、操作、機能、条件、要因、文脈」をどう区別するか?(29)セッティング事象とは何か?(15)機能的文脈主義からの概念分析(5)セッテイング事象の概念を使用する際のガイドライン

 昨日に続いて、

武藤崇 (1999).「セッテイング事象」の概念分析一機能的文脈主義の観点から一. 心身障害学研究, 23, 1313-146.

についての感想。なおこの論文はつくばリポジトリから無料で閲覧できる。

 武藤(1999、140頁)は、「セッテイング事象の概念を使用する際のガイドライン」として、Wahler & Fox (1981)の2条件を紹介している。

Wahler, R. G. (1981) The insular mother Her problems in parent-child treatment. Journal of Applied Behavior Analysis,13,207-219. 【この論文は、こちらから無料で閲覧できる】

その2条件というのは、
  1. 当該の行動が直後・直前条件の影響を受けないような場合
  2. 研究者が当該の行動に直接影響を与えることができないような場合
というものであった。これらについては、10月3日の日記で既に取り上げた通りである。

 セッティング事象の研究の中には、直前条件や直後の結果に関する検討を直接行うことなしに、セッティング事象の実験的操作を行っているものがあるが、これらはセッティング事象の形態的定義(再現性は保証されるが、機能的な関係が不明確な定義)であり、かつ、他の研究者の研究行動にも適切に機能していない。

 いっぽう、Wahler & Fox (1981)によれば、上記2.に関して研究者の採るべき行動は、時間的により離れている環境事象の操作を考慮することであるという。これに該当するのは、母親訓練、スタップ訓練、あるいはコンサルテーションにおける行動分析的なアプローチなどであるが、武藤(1999)の刊行時点では、全体としてみると、セッティング事象という概念を使用した「遠隔的な介入」は、同ーの研究者以外の間で拡大しているとは考えにくいと概観されている。

 以上をふまえて、武藤(1999)は、「メタ概念分析の結果から導き出された新たなガイドライン」として4点を提唱している。その骨子は、セッティング事象という概念を無批判に受け入れて乱用するのではなく、一定の条件を満たさない限りは差し控えましょうという内容になっている。

 不定期ながら次回に続く。