じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 西の空に輝く月齢4.3の月と金星。4月27日の19時3分頃(左)と19時13分頃(右)に撮影。なお、月と金星は4月27日の0時25分に6°03′まで接近した。また金星は4月28日の03時21分に最大光度(−4.5等)となる。

2020年4月28日(火)



【小さな話題】「ステイホーム」行動の強化と課題(その4)在宅行動の条件づけ

 昨日の続き。行動分析学的に言えば、外出の自粛を徹底するための主な対策としては、次の4つが考えられる。
  1. 【外出手段の遮断】外出に必要な物理的手段を遮断する。
    道路の閉鎖。鉄道やバスの運行中止。
  2. 【外出行動の弱化】外出行動の罰的統制
    外出者から罰金を徴収。外出者を逮捕・拘束する(←フィリピンでジョギングしている人を拘束するシーンをTVで見かけたことがある)。外出者を棒で叩き腕立て伏せをさせる(←コロンビアやインドでは一部でこういう措置が取られているという)。
  3. 【外出行動の消去】外出行動の強化を中止する
    外出先となるようなイベント、商業娯楽施設、観光地などを閉鎖する(←1.の遮断と異なり、その場所まで行くことはできるが、到着しても全く強化されない。)
  4. 【在宅行動の強化】家で過ごすことが強化されることで、結果として外出の頻度・時間が減少する。

 上記のいずれが良いか(感染防止策としてどれが効果的か、どれが人道的に望ましいか、どれが持続可能か...)は、感染の規模や、その国の政治体制、国民性によっても変わってくると思われるが、一般論としては、
  1. 外出手段の遮断:緊急措置としては有効だが、生活全般に支障が出るため長期的な実施は困難。
  2. 外出行動の弱化:体罰などは人道的に問題。外出行動の強化因自体はそのまま残っているので、警察に見つからないところでは行動は減らないし、さまざまな抜け道が生じる恐れがある。
  3. 外出行動の消去:イベントの中止や施設の閉鎖は長引けば長引くほど関連業者に深刻な損害を与える。

 というようなことを考えると、最も効果的かつ持続可能な外出自粛対策は、4.の「在宅行動の強化」にならざるを得ない。具体的には、「外出するよりも家で過ごしたほうが楽しい」ような環境を作ることである。
 例えば、一律10万円給付の代わりに、各戸に4K、8K対応の大画面の薄型テレビ(PCのモニター兼用)をタダで設置したとする。このテレビでは、感染収束までの期間、有料の映画放送、スポーツ中継などを見られるようにする。さらにこれまた無料で高速の光ケーブル(←無線ではなくて、自宅のみで利用可能)を敷設し、大画面のモニターを通じて動画通話ができるようにする。プロバイダー料金は感染収束まで無料とする。このようにすれば、人々は束縛感を感じることなく自宅で過ごすようになり、結果的に外出行動は減ることになるだろう。
 このほか、スポーツや探検旅行が仮想体験できるようなゲーム機器を無償供与するという対策も考えられる。

 以上述べたことでふと思ったが、そもそもスマホとか、モバイル何たらというような装置は、自宅ではなく、外出先で便利であるように開発された機器であった。いっぽう、大型の液晶モニターとかバーチャルなゲーム機器というのは、原則として移動せずに使用する機器となっている【Pokemon GOのように、外の世界と仮想イメージを融合したゲームもあることはあるが。】

 さて、上記の例以外にも在宅行動の強化、つまり「外出するよりも自宅にいたほうが楽しく過ごせる」という環境づくりはいろいろと考えられるのだが、この方向性には1つ、重大な落とし穴がある。というのは、いったん在宅行動が強化されてしまうと、コロナが終息して自由に外出できるようになった後でも、人々は依然として在宅志向を強める可能性があるからだ。もしそうなると、娯楽施設や観光地に再び人が戻ることはなくなってしまう。

 となれば、現状を保ちつつ感染リスクに対応可能な行動変容としては、
  • 平時は外出行動が強化される
  • 感染拡大時は在宅行動が強化される
というように、文脈によって行動が使い分けられるような強化の方法を開発することが必要となるが、これはなかなか難しい。

 1つ考えられるのは、外出行動と在宅行動を排他的にとらえるのではなく、1つのまとまった行動として巨視的に連携させ、そのパーツとして、
  • 平時には外出行動のパーツの比率を高める
  • 感染拡大時には在宅行動のパーツの比率を高める
というようにバランス調整を行うことである。私の好きな旅行を例にとれば、
  • 平時には実際に旅行に出かける
  • 感染拡大時には自宅で旅行アルバムの整理や旅行記の執筆に専心する
といった使い分けである。

 いずれにせよ、これから先は、新型コロナの第2波、第3波だけでなく、新々型、新々々型といったウイルスが数年から数十年単位で次々と人類を襲うリスクは否定できない(4月24日の日記参照。) 要するに、ポスト・コロナは元の世界には戻らないのである。なので、
  • 外出行動が平常
  • 在宅行動は異常時の辛抱
と捉えるのではなくて、外出行動と在宅行動のどちらも平時の行動ととらえ、そのときそのときの感染状況に応じてバランスを調整しながら生きていくほかはない。人々が外出することで成り立ってきたイベント産業、娯楽施設、外食産業なども、「いま耐え忍べば元の世界に戻る」というのではなく、「人々が外出しなくなった時にも対応できる」というようなビジネスモデルを構築していく必要があるだろう。