じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 最近よく見かけるネコ【写真左】。じつはこのネコは2009年秋生まれで10歳になる。小さな頃はけっこう人に馴れていたが、今は近づこうとすると逃げてしまう。
 写真右は、↓の番組に登場したグリちゃんによく似たネコ。

2020年1月11日(土)



【連載】又吉直樹のヘウレーカ! 「なぜネコは人をメロメロにするのか?」(その1)

 1月8日に放送された表記の話題についての感想・考察。

 番組サイトにも記されているように、ネコは飼育頭数でイヌを抜き、最も多いペットとなっている。

 番組ではまず、ネコのルーツについて簡単な説明があった。イヌやネコにはもともと5500万年ほと前にはミアキスという共通の祖先があり、進化の過程で生息する場所により分かれていった。このうち、平原で暮らすのがトマルクトゥスから進化したオオカミ、キツネ、タヌキなどで、群れで獲物を獲るため規律を守る。いっぽう森の中で暮らすのがプセルダエルルスから進化したライオン、ヒョウ、トラ、ベンガルヤマネコなどは、木の陰などに隠れて単独で狩りをするため我が道を行く気まぐれになった。【但し、平原に適応したライオンは群れで狩りをする。】

 今泉先生によれば、家畜というのは人間からその動物に近づいていって捕まえて飼い慣らすが、ネコの場合は、人間が農業をし始めた頃、ネズミが増えたために狩り場があるということでリビアヤマネコのほうから人間に近づいてきた。つまり、ネコを飼うというのは、野生動物が家の中に居るという感じで、このことがネコを飼う理由にもなっているらしい。

 番組の後半ではネコの習性についていくつかの興味深い話題が取り上げられた。

 まずはネコの心理学の権威、高木佐保さんの研究。ネコの認知についての研究で2017年に京都大学総長賞を受賞したと紹介された。ちなみにネコの研究としては、今年の春に、飼い猫は自分の名前を聞き分けられるか?という話題を取り上げたことがあった。こちらの情報によれば、どうやら、その時に紹介された研究者も今回の高木さんも「CAMP-NYAN TOKYO」という同じ研究者グループに属しているようであった。

 今回紹介されたのは、実験は以下の通り。なお、ネコは実験室に連れて行くと文字通り「借りてきた猫」になってしまうので、それぞれの猫の普段の生活の場に研究者のほうから出向いて出張実験をする必要があるようだ。
  • 色や形の異なる4つの餌皿を用意する。
    • A:餌(ペット飼料)
    • B:餌(ペット飼料)
    • C:ヘアピン(ネコにとっては興味の無いモノ)
    • D:空っぽ
  • ネコにお皿Aの餌を食べさせる。
  • そのあと、ネコを抱きかかえてB〜Dそれぞれのお皿の中を見せる(Bの餌は食べさせない)。
  • そのあと15分間、別の部屋で待機させる。
  • 4つのお皿を空にして餌のニオイなどが残らないようにする。
その上でネコを元の部屋に戻したところ、ネコは、まずBのお皿に接近したという。この「まだエサが残っていたはずの皿を最も長く探索する」という傾向は30個体以上で確認されているという。
 強化の理論を単純に当てはめれば、ネコはお皿Aでエサを食べた経験があるので、食べた経験の無いBよりもAのほうに接近する確率が高まるはずである。にもかかわらずBのお皿を最も長く探索するとなれば、別の説明が必要。認知心理学的に言えば、「Bにはエサがあった」という記憶に基づいて「Bにはエサが残っているはずだ」という探索行動が生じるということになるのだろう。
 行動分析学的にどう説明すればよいのかは迷うところだが、少なくともネコのように先祖が狩猟動物の場合は、「獲物を獲得した場所の手がかり」よりも「獲物を見かけたが獲得できなかった場所の手がかり」のほうがより強固な弁別刺激になりやすいということだろうか。じっさい、すでに捕獲に成功した巣穴付近よりは、捕獲に失敗した巣穴付近で次回の狩りをするほうが次の獲物に遭遇できるチャンスが大きく、より適応的と言うことができる。(但し、この説明は、ネコの先祖の生物的特性に依存したものである。色々な種間で比較してみる必要がある。)

 なお番組では、上記のような「学習の生物的制約」には触れられず、動物の短期記憶のほうに関心が向けられているようであった。

 次回に続く。