じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 工学部前のフェニックス(カナリーヤシ)の実。9月上旬に残暑が続いていたせいか、例年よりたくさんの実をつけているように見える。10年前の写真がこちらにあり。

2019年11月14日(木)



【連載】『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』(8)なぜ人は指をさすのか

 11月13日に続いて、

 針生先生の『赤ちゃんはことばをどう学ぶのか』の感想。

 第3章の95ページ以降では「なぜ人は指をさすのか」という興味深い話題が取り上げられていた。
 このような赤ちゃんの反応に出会って、改めて気づかされるのは、私たちは指さしをするとき、別に、指さしする自分の指を見てほしくてそうしているわけではないということです。
 本書ではまた、人差し指だけを伸ばすという手のかたちはチンパンジーでもできるが、誰かに何かを示すために使うということは野生のチンパンジーではできないと指摘されていた。

 指さしの起源については、何かモノをつかもうとして届かなかった(「リーチング失敗」説)が起源ではないかという説もあるが、他者に何かをしてもらうためではない指さしもあるなど、この説だけでは説明できないケースもあるという。

 もう1つの説は、「注意観察説」と呼ばれるもので、対象に注意を向けてそれを調べる行為に由来するという。他者が指さしをした時、子どもは、まずは指そのものを見る(その指が何をしているのかに注目する)、その指先の近くにモノがあればそれに注意を向けてそれを調べようとして見る、そして、さらに指先から少し離れたモノを見るといった形で、行動を発達させていくというものである。

 この「注意観察説」が説く「指先を見る」→「指先の近くのモノを見る」→「指先から離れたモノを見る」という発達のプロセスは、行動分析学ではシェイピングと呼ばれている。例えば、ラットのレバー押し行動を強化する場合、実験箱にただラットを入れておくだけでいきなりレバー押しが始まることはまずありえない。そこで、まず、「ラットがレバーの取り付けられている壁に触れたらば餌を出す」という形で強化し、ラットが壁のいろいろなところに触れるようになったら今度は「レバーに触れた時だけ餌を出す」というように強化、さらには「一定の力でレバーを押し、それを離した瞬間に餌を出す」というように強化していくのである。

 もっとも、11月7日に述べたように、私自身は
指さしによって言葉を覚えるという方法は、言語学習のごく一部であり、しかもある程度あとになってから訓練が可能になるのではないかと思われる。なぜなら、言語学習まず、指さしではなくて、現物と名前(音声)の同時提示から始まる。
と考えている。
 また、外国では、指さしがタブーとされている場合が少なくないように思われる。他の人を指さす行為は日本でも失礼とされており、遠くにいる人を指さして「あの人誰?」と会話することはまずない。少し前に訪れたチベットでは、仏像に向けて指をさしてはならないと言われたこともあった。いずれにせよ、子どもに言葉を教えるような日常場面で、指さしが決定的に重要な役割を果たしているようには私には思えない。

 不定期ながら次回に続く。