じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 土曜日の朝、妻の送迎のため西川緑道公園沿いを通行した。写真は、「平平平平(ひらだいらへっぺい)」の大時計。こちらの旅行記にも写真あり。
 よく分からないのは、文字板の「4」の数字が「平」で隠されていること。公式サイトの案内によると、営業時間が16:00〜23:30となっているので、おそらく開店時刻を示しているものと思われる。しかしもしそうであるなら休店日は「平」が外されているはずだが、これだけ大きい時計でしかも高いところにあるとなると、取り付けや取り外しは、危険を伴う大変な作業になるだろうと思う。


2019年4月6日(土)



【小さな話題】又吉直樹のヘウレーカ!スペシャル「この“なぜ”はほっとけない!?」(5)エピジェネティクス

 4月4日に続いてヘウレーカ!の話題。3月27日放送の、

「この“なぜ”はほっとけない!?」

では、これまでの3題のほか、
  • 日本食はヘルシー?
  • 恐竜の卵の特徴から何が分かるか?
  • 器官の状態をエピジェネティクスにより変化させて適応する昆虫
が取り上げられた。もっとも、日本食と恐竜の卵の話題は放送時間が限られていたせいか各3分間程度のダイジェスト版になっており、研究の面白みがイマイチ分からなかった。

 最後の話題は、昆虫の形質のバリエーションや個性と環境適応との関係に関するもので大いに勉強になった。

 番組で取り上げられたのはオオツノコクヌストモドキという体長5ミリほどのゴミムシダマシ科の昆虫である。名前の通り、この昆虫のオスは名前の通り大きな角を持っているが、同じ遺伝子を持ちながら角の小さい個体もある。角が大きくなるかどうかは、DNAの塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現の制御機構=エピジェネティクスによるものであるという。

 番組によれば、DNAの塩基配列を本の文字情報に喩えると、本に書かれているすべての内容がゲノムに相当する。また、遺伝子はゲノムの中でタンパク質の作り方が書いてあるところに喩えられる。そして、エピジェネティクスは、その本の文字列の一部に蛍光ペンで印をつけたようなものに相当するという。

 オオツノコクヌストモドキのからだの大きさや角の形の違いは、幼虫のときに豊富な餌にありつけたかどうかによって決まってくるという。

 いっぽう、同じ昆虫でも、交尾器のようにオスとメスのサイズが一致しないと役に立たないような形質はバリエーションが少ない。それゆえ、からだや角が小さい個体であっても同じように子孫を増やすことができ、その子孫が餌の豊富な環境で育てば大きな角や体をもつことができるということであった。

 このことから、「どんな遺伝子を持っているかということそれ自体より、それをどう使い分けるかが大切」となるというように結論された【長谷川の聞き取りのため不確か。】

 ここからは私なりの解釈になるが、例えばキリンの首が長いのは、サバンナで背の高い木の葉っぱを食べたり、ライオンなどの天敵の有無を遠くまで見渡せるという点で適応的であった。これは、祖先のキリンの首は短かったが、サバンナという環境のもとで首が長くなるような遺伝子を持った種類のほうが短いままの種類よりも生き残り、繁殖できる確率が高かったことによって進化したと考えられる。でもって、もしそのサバンナが草原だけになり(背の高い木は消滅)、天敵のライオンが居なくなったとすると、今度は、首の短いキリンのほうが適応的になる可能性がある。とはいえ、首の短いキリンは必ずしも突然変異を待たなくても出現するかもしれない。要するに、首を長くするというような遺伝子が発現しなければ、その世代に限って首の短いキリンが育ち、かつ、サバンナに再び背の高い木が増えてくれば、次の代には首の長いキリンが育つとことがありうるという意味になる。

 実際には、キリンの首の長さがエピジェネティクスで制御されているとは考えにくいが、一般的に言われている個体差、多様性のようなものは、必ずしも遺伝子だけで一義的に決まるものではない点、かといって、獲得形質の遺伝によるものでもないという点が、今回紹介された研究の流れの中で明らかになってくるように思われた。

 ちなみに、獲得形質の遺伝というとラマルクが思い出されるが、ウィキペディアによれば、ラマルクの論点は、
  • 【用不用説】発達の限界を超えていない動物であれば、如何なるものでも、頻繁かつ持続的に使用する器官は、次第に強壮に、より発達し、より大きくなり、その力はその器官を使用した時間の比率による。これに対して、いかなる器官でも、恒常的な不使用は、僅かずつ弱々しくなり、良くなくなり、次第にその機能上の能力がなくなって、時には消失する場合もある。
  • 【獲得形質の遺伝】それぞれの個体で、自然に獲得したものや失ったものの全ては、それがその品種が長い間置かれていた環境の影響によるものであっても、そしてそこから生じた特定器官の優先的な使用や恒常的な不使用の影響によるものであっても、獲得された形質が両性に共通であるか、少なくとも子供を作る個体に共通ならば、それらは、その個体の生殖による新しい個体に保持される。そしてある個体が獲得した形質は、次第に同種の他の個体にも共有される。
となっており、ダーウィンは、ラマルクの説の意義を次のように評価していたという。
「ラマルクは、この分野での説が多大な関心の的となった最初の人物である。この正に祝福されるべき博物学者は、彼の考えを1801年に初めて出版した。…彼は無機的世界だけでなく、生物の世界でもあらゆる物が変化する可能性があり、そこに奇跡が絡む訳ではない事に対し、初めて注意を喚起したという点で、偉大な貢献をした。」