じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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 1月22日の早朝はよく晴れ、南東の空には金星と木星、西の空には皆既月食を終えた満月が見えていた。なお、金星と木星は1月22日の14時48分に2°26′まで接近する。両星の右側にあるのはさそり座のアンタレス。アンタレスの右上にある星は、変光星として知られるさそり座δ(ジュバ)。

2019年1月22日(火)



【小さな話題】

山に登ろうとする人、登る人、登ろうとした人

 各種報道によれば、南米大陸最高峰アコンカグア(6959m)への登頂を目ざしていた三浦雄一郎さん(86歳)が標高6000mのキャンプ地で天候待ちをしている時に体調を崩し、医師の判断により登頂を断念して下山したという。三浦さんは持病で不整脈を抱えており、また2014年までに心臓を7回手術。現在は血管の狭さくがあり、80歳でエベレストを登頂した時よりも心臓の機能が6割程度に低下していたという。同行の医師は「この標高は生物学的に86歳の限界だ。よく頑張ったが、生きて帰るために下りる判断をした」と説明している。なお、次男の豪太さんなど他のメンバーは21日午前(現地時間)に登頂に成功した。

 アコンカグアと言えば2011年にイモトアヤコさんが6890m地点で登頂を断念した映像や、NHKの世界の名峰グレートサミッツで登頂の様子を視たことがある。技術的にはそれほど難しい山ではなく、ツアーで登れる機会もあるが、登頂の成否は天候に大きく左右されるという。今回の三浦さんのケースでは、他のメンバーが登頂に成功していることからみて、あくまでご本人の年齢と体調が断念の原因になったようであった。

 ちなみにまだ66歳の私自身がこの先、登ろうと思っているのは某国にある標高868mの山ぐらいであるが、何が何でも登ろうというほどの意欲はなく、下から眺めたり写真を見るだけでも満足、チャンスがあればせっかくの機会だから登ってみようという程度の目論見にすぎない。三浦さんの日々のご努力には敬意を表するが、あそこまでお金をかけて頑張らなくてもいいのではという気もする。

 話題が変わるが、この年末年始に、登山関連の番組を3本視聴した。
  1. 2018年12月29日放送(再放送):日本アルプス大縦断〜2018 終わりなき戦い〜【1月25日に再放送あり】
  2. 2019年1月5日放送:グレートトラバース3 日本三百名山全山人力踏破9「北陸から北アルプスへ」【1月27日に再放送あり】
  3. 2019年1月14日放送:NHKスペシャル “冒険の共有”栗城史多の見果てぬ夢
 このうち、1.の「トランス・ジャパンアルプス・レース」は以前からなんどか拝見しており、絶対王者の望月将悟さんのお名前は、固有名詞を殆ど覚えられないこの私でもすぐに浮かんでくる。今回は、5連覇にはこだわらず、無補給415km完走という新たな自己目標を達成された。このレースの参加者には賞金や名声ではなく、自己完結的な完走目標を持っている方が多く、レースの結果よりも、参加者各位の生きざまや意気込みから得られる感動が大きい。

 2.の田中陽希さんの番組も、百名山の時代からずっと拝見している。三百名山のシリーズでは、数値目標達成やスピード登山にはこだわらず、景色を楽しんだり地元の人たちとの交流を重視している点が共感できる。もっとも、この企画は、陽希さんの一人旅であるように見えて、じっさいは、カメラマンを含めて数名以上のスタッフが同行しているはず。今回の剱岳登山などもそうだが、カメラマンはどこに立ってどうやって撮影しているのか余計な心配をしてしまう。

 3.の栗城さんの話題は2010年1月6日に肯定的に取り上げたこともあったが、今回の事故死の経緯は、伝えられた限りの情報から判断する限りにおいては、やはり、登山の専門知識を持たないSNS観客たちに翻弄され追い込まれた結果であったと言わざるを得ない。自撮り登山にしても、風景の美しさや、足元で見つけた草花などもっと別の伝え方があったようにも思う。いまはドローンで尖峰の頂上付近を撮影することもできる時代であり、何も人間が命の危険をおかしてまで自力で登り詰める必要はないように思える。少なくとも私のような観客の立場から言えば、ドローンで撮影しても、冒険者が自力で撮影しても、映像としての山頂の景色には違いはない。努力への共感は、もう少し別のところに求めたいと思う。