じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 1月7日の日記に部分日食の写真を掲載したところであるが、1月8日の日没時、旧京山タワーに太陽が部分的に重なる「京山部分日食現象」を眺めることができた。今季は、冬至の約2週間前に京山金環日食現象が見られたが、冬至の約2週間後は帰省Uターンの日程や天候の影響で眺めることができなかった。日没の方位がしだいに北側(右手)に移動していくため、この観測ポイントからの次のチャンスは2019年の12月上旬となる(観測ポイントを南の地域に移動すれば一年中どこかで眺めることはできるはずだが。)

2019年1月8日(火)



【連載】

関係反応と関係フレームをどう説明するか(16)「関係フレーム」とは何か?(5) 複合的相互的内包(1)

 昨日の続き。今回から、複合的相互的内包(複合的内包、Combinatorial Entailment))を取り上げる。

 まず、RFTのパープルブックの定義は以下の通り(30頁)。
Combinatorial entailment refers to a derived stimulus relation in which two or more stimulus relations (trained or derived) mutually combine. “Combinatorial entailment” is the generic term for what is called“transitivity” and “equivalence” in stimulus equivalence. For example, combinatorial entailment applies when, in a given context, if A is related to B, and B is related to C, then as a result A and C are mutually related in that context.
 バッハ・モラン(2009)『ACTを実践する』第4章115頁には当該部分が引用されており、翻訳書では、「複合的内包は、ある文脈においてAがBに関係していて, BがCに関係しているとき,結果としてAとCはその文脈で相互に関係している場合に用いる」と訳されていた。

 バッハ・モラン(2009、115頁)では、次のような追加説明がある。
これは1つの刺激が2つもしくはそれ以上の刺激と関係しているとき,どの刺激ペアの関係も,他の刺激ペアによって説明可能であるという意味である。たとえば,AがBよりも大きく, BがCよりも大きいのであれば, BはAよりも小さく, CはAよりも小さい。AがBと等しく, BがCと等しいのであれば,AはCと等しい。AがBという集合のメンバーであり, BがCという集合のメンバーであるのならば, BはAをメンバーに持つ集合であり, CはBとAをメンバーに持つ集合である。AがBの西にあり, BがCの西にあるならば, BはAの東にあり, CはAとBの東にある。


 トールネケ(2013)は図を用いた説明となっており、「複合的内包」の代わりに「複合的相互的内包」という呼称を推奨している。私もその趣旨に賛同して「複合的相互的内包」を使っているが少数派であるためいずれ「複合的内包」に切り替えるかもしれない。

 もう1つ、『ACTハンドブック』第3章(木下・大月、40頁)では
複合的内包とは,3つ以上の刺激関係が相互に複合された性質を示す用語である。たとえば,AはBよりも〈大きく〉, BはCよりも〈大きい〉と教えられた場合に,AはCよりも<大きく>, CはAよりも<小さい>という関係性を派生することである。
となっていた。

 以上に関しては、いくつか留意すべき点がある。まず、呼称だが、英語では「combinatorial (mutual)entailment」であって、「combinational (mutual)entailment」ではないということ。(但し、『ACTハンドブック』第3章(木下・大月、40頁)では「combination entailment」となっていた。理由は不明。) ランダムハウス英語辞典によれば、
  • combination:組み合わせること,結合,配合,取り合わせ;合同:/(いくつかのものの)結合体,結合物,組み合わせ:/【combinationalはその形容詞形】
  • combinatorial:連結の,コンビーネションの./組み合わせの.
という意味が示されていたが、あえて「combinatorial」という用語を採用したことには何らかの理由があったのかもしれない。

 ちなみに、日本語では「combinatoial」は「複合的」が定訳になっているようだが、もとの意味から言えば「連結」や「結合」や「組み合わせ」という意味に近いような気もする。「複合」に近い意味であれば原語は「complex」や「compound」が採用されていたはずである。

 なお、上にも述べたようにトールネケ(2013)では、翻訳書88頁の原注に
複合的相互的内包に関しでは,よく「複合的内包」と短縮される。しかし,私たちが言及しているのは組み合わされた形での相互的内包であるということをより明確に示すために,本書を通じて一貫して正式名称を使うこととする。
と記されている。相互的(mutual)を含めるかどうかについては、RFTのパープルブックにも記載があり(30頁)、複合的相互的内包の公式:

Crel{ArxBandBryC|||ArpCandCrqA}

に続いて、
This type of entailment is mutual, and because of that mutuality, the longer and more technically precise term “combinatorial mutual entailment” is sometimes used, but the shorter term will usually do for our purposes.
とされており、相互的(mutual)を入れた呼称のほうが正確であるが便宜上省略しておくという意味にとれる。

 不定期ながら次回に続く。