じぶん更新日記・隠居の日々
1997年5月6日開設
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ネガフィルムからデジタル化された写真の中にケヤキの写真があった。私が中学生の頃までは、このあたりには高さ20メートルを越すと思われるケヤキの大木が何本か残っていた。


2018年5月25日(金)


【小さな話題】

強さの本質は相対比較ではなく質的評価にある

 将棋で強い人というと、すぐに国民栄誉賞受賞の羽生・永世七冠や、いま売り出し中の藤井聡太・七段の名前が挙げられると思うが、「どうして強いと思うのか」ということと、「どこがどのように強いのか」ということは別問題である。

 前者はもっぱら相対比較や客観的な数値によって評価される。
  • 羽生・永世七冠:「永世」の称号、タイト獲得99期(歴代1位)、史上2人目の通算1400勝など数々。
  • 藤井・七段:プロデビューから歴代最多の29連勝。中学生初の五段昇段・C級1組昇級。一般棋戦優勝、六段昇段。七段昇段最年少記録など。
 これらの数字はいずれも相対比較の結果であり、将棋を知らない人でもスゴいなーと分かる。テレビや新聞の読者向けには分かりやすい根拠とも言える。

 しかし、「どこがどのように強いのか」は、実際の棋譜を拝見しないと分からない。たとえば、リンク先によると、例えば、藤井七段の場合は、
  • 現代将棋は玉を堅く囲う戦い方が主流だが、藤井は玉の囲いが薄いままで、相手の陣形が整う前に早い段階から攻めていき、相手に攻められてもギリギリの攻守のバランスを取って、一手勝ちのスレスレの所を読み切って勝つ。
  • 藤井は、双方攻めたり受けたりの接戦を、わかりやすい一手勝ちの局面に持っていくのが実にうまい。
  • 元々名をはせたのは詰め将棋だが、順調に成長している。最短コースで寄せ切る(詰ませる)のは谷川先生の“光速の寄せ”に似ている。
などと評価されており、YouTubeには「伝説の手」とか「19手詰め」とか「劣勢からの大逆転」といった動画が紹介されているようである。いくつか印象に残っているのは、 などなど。見れば見るほどスゴイ。

 他者とは独立して評価可能な演劇、演奏、美術作品などと異なり、競技というのは「技を競う」ことに本質があるが、だからといって、相対的な優劣だけですべてが決まるわけではない。メダルを争う場面でも、金メダルを取れなかった選手の技が失敗というわけではない。メダルの色が金になるか銀になるかは、他に優れたライバルがいるかいないかというだけのことであって、選手個人の技の絶対的な価値を左右するものではない。

 将棋の話題に戻るが、将棋の場合は、対戦相手あっての競技であるゆえ、相手が強くなければ名局も生まれない。羽生・永世七冠の名局も、中原、谷川、加藤、羽生世代各棋士との対局の中で生まれたものである。藤井聡太・七段が強さを見せられるためには、相手棋士も相当に強くなければならない。