じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 津島東キャンパスのセンダンとカイヅカイブキのコラボ。


2017年12月10日(日)


【思ったこと】
171210(日)加齢に伴い向上・維持する能力を発掘する(5)高齢者の記憶力(3)

 12月8日の続き。

 2番目の話題提供の終わりのところでは、記憶をよくする根本原理としての「意味づけ」という話題が取り上げられていた。この「意味づけ」というのは、行動分析学で言うところの「関係反応」に対応しているようにも思われるが、このことはまた別の機会に考えてみることにしたい。

 2番目の話題提供の最後は、「熟達化の原動力―マインド・セット」という話題であった。要するに、記憶力についての正しい知識を身につけた上でマインド・セットを整えれば、しっかりと記憶を保持できるというようなお話であった。記憶力の中でも、ワーキングメモリ、短期記憶、長期記憶、処理速度は加齢とともに低下するが、言語的知識はむしろ70歳代でピークとなる。これまでの横断的研究では、言語理解力は、50歳代から衰え始め60歳をすぎると右肩下がりのカーブが急になってくるが、これは、各世代が受けた教育環境が違いすぎるためとも考えられる。いっぽう、縦断的研究によると、同一個人内での言語理解力は、50歳代から60歳代のあたりでピークになるという研究もある。これらをふまえれば、加齢に伴って衰えるとされてきた記憶力についても、もう少しポジティブな視点から捉える必要がありそうだ。

 以上の内容に関して感想を述べさせていただくと、まず、ビジネス書や自己啓発本にしばしば登場する「マインド・セット」については、もう少し精査が必要であると思われる。単なる精神主義であっては効果は限定的であろう。結局は、ルール支配行動における動機づけ効果(確立操作)として捉えるほかはないと思う。

 今回の話題提供では全く取り上げられなかったが、この10年、20年余りのあいだに急速に発展したワープロの変換技術、ネット上での検査技術が、高齢者の記憶力の保持を大きく支えている点にも留意する必要があると思う。現に、この私なども、漢字の書き取りは小学校高学年レベルまで衰えているはずで、もしWeb日記ではなく紙媒体の日記帳に手書きで日記を書けと言われたら、執筆時間の大半は漢字の書き取りで苦労することになるかと思う。また、最近では固有名詞がなかなか思い出せないことが多いが、キーワードを3つほど入れてネット検索すれば、たいがいの言葉は瞬時に引き出せるようになる。さらには、過去にどういう考えを述べたことがあるのかも、文書のテキスト検索で簡単にチェックできる。生身の人間としての記憶力が衰えても、さまざまな情報検索ツールによって衰えを補ってもらえることで、高齢になってもかなりのレベルで能力を保持できるようになったことは間違いない。

 次回に続く。