じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 台風18号で根こそぎ倒れてしまったゴールドクレスト(写真右)の切断・搬出作業が行われた。年輪から樹齢ほぼ20年とみられる。


2017年9月22日(金)


【思ったこと】
170922(金)ボーム『行動主義を理解する』(74)言語行動と言葉(11)

 9月21日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 翻訳書197頁からは、スキナーが提唱した「マンド」と「タクト」について詳細な説明が行われている。

 このうち「マンド」は、文法上の命令形ばかりでなく、聞き手に何らかの行動を要求するようなあらゆる表現が含まれている。例えば「いま何時ですか?」というのは、聞き手が正確な時刻をタクトすることを要求している。

 いっぽうタクトに関しては、「息子は青いシャシを着ている」「肩が痛い」「2番の窓口でチケットを購入できる」という3つの異なる事例が挙げられている。このうち「肩が痛い」というのは、発話者の肩が怪我している、打撲しているといった私的弁別刺激の制御を受けている。「2番目の窓口→チケット購入」という表現は発話者の強化履歴に基づいており、ルール支配行動の1つと言える。

 スキナーの「タクト」に関してはこの日記でも何度か取り上げたことがある。このうち、2016年3月28日の日記では、言語共同体が構成員に私的出来事のタクトを教えるのに、5つのやり方があることを引用した。いっぽう、2016年11月30日に引用したように、トールネケ(翻訳書2013、122-123頁)は関係フレーム理論の立場から、「タクト」や「エコーイック」は必ずしも言語行動とは見なされないとしている。再掲すると、
...Skinnerの定義によるタクトは、RFTの観点からは必ずしも言語的であるとは限らない。もしも、子どもが「イヌ」をタクトするなら、この反応は、以前にイヌを見て「イヌ」と発語したあとにこの行動に随伴して強化を受けたことの結果によるものかもしれない。それでも、これらすべてのことは、「イヌ」というフレーズが関係フレームに関与することなしに、生じることが可能である。そのため、その場合には、このタクトは完全に直接随伴性を通じて確立されたものであるため、RFTの定義に従うと言語的ではない。とはいえ、子どもたちが「イヌ」というフレーズを使うときは、多くの場合それは本物のイヌと(またほかのものとも)派生的関係にある。そうであれば子どもたちの反応は、RFTの基準でも言語的ということになる。


 次回に続く。