じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 岡山では8月29日夜から30日早朝にかけて合計3ミリの雨が降った。気象庁統計によれば、まとまった雨は8月18日以来、約10日ぶりとなった。炎天下で瀕死状態にあった花壇の草花たちも生気を取り戻した。

2017年8月30日(水)


【思ったこと】
170830(水)ボーム『行動主義を理解する』(67)言語行動と言葉(4)

 昨日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 翻訳書183頁からは「言語行動 対 言葉」という話題が取り上げられている。まずは、英語のような1つの言語は「単語と単語を組み合わせるための文法ルール"であり、「多くの人々が語る方法をおおまかに要約したもの"とされている。あえて「大まか」と表現されているのは、すべての英語話者が完壁な英語を話すわけではないからである。「言葉の使用」という表現は心理主義的であり、実際は言語行動に従事しているという意味にほかならない。184頁には、「言語行動」、「音声行動」、「言葉の使用」の関係がベン図で表されていた。3つの集合の積集合が「発話」となる。興味深いのは以下のような特徴づけである。
  1. 動物の鳴き声は、音声行動であり、ある種のコミュニケーションが起こる時は「言語行動」でもあるが、「言葉の使用」にはあたらない。
  2. 手話は、言語行動であり「言葉の使用」でもあるが、音声行動ではない。ちなみに、音声を使わないジェスチャーも言語行動であるが「言葉の使用」とは言えない。
  3. 自分に向かって詩を朗読する行動は、音声行動であり「言葉の使用」でもあるが、言語行動とは言えない。
  4. 書斎で一人で本を書くことは、「言葉の使用」ではあるが、音声は使わず、聞き手もいないので言語行動とは言えない。
 上記の分類では、音声が「言語行動」「言葉の使用」とともに3カテゴリーの1つを構成しているが、音声がそこまで重要と言えるのかどうか、文字の使用はなぜ挙げられていないのかといった疑問が残る。じっさい私などは日頃Eメール最優先でコミュニケーションをとっており、電話をかけることは滅多に無い。もっとも、世界には文字を持たない民族もあったし、幼児が言葉を習得する時にまずは音声でコミュニケーションをとることなどを考えれば、音声行動の役割は無視できない。

 あと、4.に関しては、一人で本を書いていても、読者が聞き手の役割を果たしているのであれば一種の言語行動と言えるように思う。このWeb日記執筆も同様。

 近年では、文字テキストを音声で読み上げたり、逆に、音声入力の技術も発展しており、また、かつて音声電話でコミュニケーションをとっていた人がSNS利用に切り替えたりするようになり、音声行動の役割は低下している可能性もある。

 次回に続く。