じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 文法経講義棟東にあるアカメガシワが実をつけている。写真左は、6月9日に撮影した花の状態。雌雄異株の落葉高木で、ウィキペディアには
初夏、枝先に穂になって白色の小さな花を多数つけ、雄花には黄色の葯(やく)が目立つ。雌花序は雄花序よりも小さく、花数が少ない。果実は秋になって10月頃に熟し、刮ハで軟針があり、3列して3個の黒紫色の種子を出す。
と説明されているが、ここに生えているのは雌株であることが判明した。岡大構内では繁殖力旺盛で迷惑樹木となっている。


2017年7月13日(木)


【思ったこと】
170713(木)ボーム『行動主義を理解する』(53)刺激性制御と知識(3)

 7月12日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 翻訳書141頁からは、実験室の外の世界では、弁別刺激が複合的に機能している例として、追い越しの際の車線変更の例が挙げられていた。車線変更をするのは、
  1. 前方のゆっくりと走っている車the slow-moving vehicle ahead
  2. センターラインが切れている the broken center line 【日本で言えば、追い越し禁止の黄色のラインではないという意味】
  3. 反対車線に車が来ない the clear opposite lane
の3つである。このうちのひとつの要素が欠けていれば、追い越しは起こらない。

 上掲の例は、AND結合になっていて、通常、行動(車線変更)に別々に影響を与えることはない。もっとも、2.を見落とせば交通違反になるし、3.を見落とせば正面衝突の重大事故につながる。実際そういう事故が起こっているということは、それぞれが独立した弁別刺激になっている証拠にもなる。

 なお、行動分析学の伝統的な定義によれば、弁別刺激というのは、それが呈示されている時に強化(もしくは弱化)され、それが呈示されていない時には強化されない(もしくは、弱化されない)という2つの条件を両方とも体験することが必要である。上記の場合は、実際には、
  1. 前方にゆっくり走っている車がある時に、追い越せば早く目的地につくが、追い越さなければ遅刻する。
  2. 追い越し禁止のラインで無理に追い越せば交通違反で罰金をとられたり、事故に遭ったりする。追い越し可能なラインで追い越せば早く目的地につくが、追い越さなければ遅刻する。
  3. 反対車線に車が来ない時は安全に追い越すことができ、早く目的地につくが、車が来ている時に追い越せば正面衝突する。
といった特徴がある。要するに、追い越しの車線変更行動というのは、大枠では「早く目的地に着く」ことによって強化されるが、それを思いとどまらせる種々の弱化要因が複合的に機能していると考えるべきである。上掲3.の「反対車線に車が来ない時」というのは、それ自体が弁別刺激ではなく、「反対車線の車」という刺激のほうが弱化にかかわる弁別刺激であると見なすべきであろう。

 続く段落は、第2版に基づく翻訳書と、その後に刊行された英語第3版では異なっており、第3版では関係反応についての段落が新たに挿入されていた。事例としては、子どもが、2つの円のうち大きい方を選ぶという課題が挙げられていた。直径1インチと2インチの円が呈示された時には2インチを選ぶと正解となるが、2インチと3インチの円が呈示された時には3インチを選んだほうが正解となる。このほか、買物など、日常生活における相対比較行動の例が挙げられていた。

 次回に続く。