じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 昨日に続いて岡大構内のキノコの写真。見事なマントをつけている。マントカラカサタケに似ているが、傘の色や模様がかなり違っているように見える。


2017年7月12日(水)


【思ったこと】
170712(水)ボーム『行動主義を理解する』(52)刺激性制御と知識(2)

 7月11日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 昨日も述べたように、文脈重視の考え方は機能的文脈主義にも通じる。そのいっぽう、「文脈」という概念は、曖昧であり、般化が失敗した時に後付けで説明に使われる恐れもある。「オペラント行動もまた、文脈の中でのみ起こる。」と言うからには、それが起こる文脈と起こらない文脈がどのように区別されるのかを明記しなければならない。

 訳書136頁からは、刺激性制御の話題が取り上げられているが、そこでは、以下のような定義が行われている。
行動は、文脈が変わると変化する。交通信号が赤だと止まり、緑だと進む。 このように止まったり進んだりするという行為は、刺激性制御(stimulus control)のもとにある。ここで刺激(stimulus)は「文脈(context)」を意味して、制御(control)は「ひとつ以上の活動の頻度や可能性を変化させること」を意味する。
/Behavior changes as context changes. I stop when the traffic light is red and go when it is green. My stopping and going are under stimulus control. Here, stimulus means "context," and control means "changing the frequency or likelihood of one or more activities." To speak of stimulus control is to speak of behavior changing as context changes.【英文は第3版】
もっとも上掲の範囲であれば、「文脈」とか「制御」という概念を増やす必要はあまり感じられない。「特定刺激の有無により、行動が増えたり減ったりする」と述べても、中身は変わらないからである。

 行動分析学の教科書では、レスポンデント行動における文脈と、オペラント行動における文脈ははっきり区別されている。レスポンデント行動は先行する文脈のみに依存する。誘発刺激があれば生じなければ生じない。刺激-反応誘発のしくみは、後述の刺激性制御とは区別されている。これに対して、オペラント行動では、先行する文脈と、行動の結果の組合せに依存する。この場合の文脈は弁別刺激(discriminative stimulus)と呼ばれている。

 141頁では、より複雑な弁別刺激として、見本合わせ課題が挙げられている。なお、ハトが見本刺激と選択刺激を一致させるようにキーをつつくことについて、「見本合わせのつつき反応を制御する弁別刺激は複合刺激(compound)である。」と述べられているが、複合刺激についてはもう少し厳密な定義が必要であると思う。特に、漢字の偏と旁、2ケタ以上の数字、アルファベットの並びによる英単語などを複合刺激とみなすべきかどうか、関係反応との区別をしっかりさせる必要がある。【こちらこちらに参考記事あり。】

 

 

 次回に続く。