じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



07月のインデックスへ戻る
最新版へ戻る


 岡大構内で見かけたキノコ4種。いちばん左はオニフスベに似ているが、はるかに小さく、かつ群生していたので、ホコリタケの可能性が高い。左から2番目はイグチの仲間。3番目、4番目は不明。


2017年7月11日(火)


【思ったこと】
170711(火)ボーム『行動主義を理解する』(51)刺激性制御と知識(1)

 7月10日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 今回から第6章「刺激性制御と知識」に入る。

 第6章の冒頭では、
すべての行動は、それが誘導されたものであれ、オペラントであれ、ある文脈の中で生じる。夕食の席に着いたときに唾液が出る。それ以外のときには、それほど出ない。そのような誘導された行動の場合、文脈は、それを誘導する1組の環境状況である(食堂やセットされたテーブル、食べ物のにおいや見た目などである)。
All behavior occurs in a certain context. I salivate when I sit down to dinner, and less so at other times. With such induced behavior, the context is the set of environmental circumstances that induce it (the dining room, the set table, the smell and sight of the food). 【英文は第3版】
として文脈の重要性にふれられている。ちなみに、上掲で「誘導された行動(induced)」は、レスポンデント行動における「誘発された」を拡張した概念であり、誘発刺激とレスポンデント反応を一対一に捉えるのではなく、特定の環境刺激のもとで、複数のレスポンデント行動のセットが誘導されるというような意味を含んでいるようだ。なお、第3版の英文では「それが誘導されたものであれ、オペラントであれ」という部分はカットされている。次の段落で「オペラント行動もまた、文脈の中でのみ起こる。」と述べているのに、直前の段落でオペラント行動に言及するのは混乱を招くと考えたためであろう。

 いずれにせよ、文脈重視の考え方は、関係フレーム理論が依拠する機能的文脈主義に通じるところがある。何らかの問題行動や情動反応が頻発して不適応な状態に陥った時、伝統的な応用行動分析では、消去や弱化の手法が活用されていた。しかし、レスポンデント行動やオペラント行動が文脈の中でのみ起こるのであれば、無理に反応を消去しなくても、文脈を変えることで結果的に不適応な状態を切り離すことができる。この発想に基づくセラピーがACTということになるのだろう。

 しかしながら、「文脈」という概念は、曖昧であり、般化が失敗した時に後付けで説明に使われる恐れもある。「オペラント行動もまた、文脈の中でのみ起こる。」と言うからには、それが起こる文脈と起こらない文脈がどのように区別されるのかを明記しなければならない。

 オペラント行動の文脈に含まれる事象は、ふつう、弁別刺激、確立操作、オペランダムとして記述される。同じ種であれば、それらが一定の条件を満たした時には、その行動がどれだけ起こりやすくなるかを予測できる。但し、弁別刺激というのは個体の強化履歴に依存するので、同じ種であっても強化履歴が異なればまったく異なった形で反応が起こったりする。いずれにせよ、文脈という概念は、文脈内での行動の起こり方を説明するさいにはあまり役に立たないように思う。むしろ、文脈のウチとソトを区別する際に有用になる。

 次回に続く。