じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 最近、全国的にその名が知られるようになった某学園の発祥の地。じつは私の住んでいるところからは徒歩圏内にあり、夕食後の散歩時に近くを通ることがある。

2017年6月19日(月)


【思ったこと】
170619(月)ボーム『行動主義を理解する』(35)進化と強化(8)

 6月18日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 本書100頁以降では、強化の歴史(正確には強化と弱化の歴史)が、系統発生における「結果による選択」と同じプロセスをたどることが解説されている。6月12日の日記にも書いたように、「環境に適応した生物が生き残った」という程度の類似性であれば単なるアナロジーにすぎず、「風化作用により尖った岩山ができた」という現象と大して変わらない。

 では、個体発生レベルにおいては実際にはどのような選択が行われているのだろうか。

 まず挙げられているのは「効果の法則」である。「効果の法則とは、ある活動が強化されればされるほど、その活動は起こりやすくなり、ある活動が弱化されればされるほど、その活動は起こらなくなるということ」であり、より日常的な用語で言えば、「成功する行動とは良い効果をもたらす行動であり、成功しない行動とは良くない効果、あるいは悪い効果をもたらす行動である。オペラント学習では、成功と失敗は、強化と弱化に対応する。成功する活動は強化される活動であり、成功しない活動は強化されない活動、あるいは弱化される活動である。」であるとされている。

 もっとも、上記のような記述では、トートロジーに陥る必要がある。強化や弱化を行動の増減で定義すると、「強化されたから行動が増えた」と「行動が増えることを強化という」は同じことを言っているにすぎない。また、「成功する活動」とか「失敗する活動」というのは、何かの目的が達成されたか(もしくは達成に近づいたか)、達成できずに終わったか(もしくは、達成から後退したか)によって定義されることになるが、行動は、もともと1つの目的に向かって遂行されるとは限らないし、捉え方によっては成功と失敗が逆転することもありうる点に留意する必要があるだろう。

 102頁以降では、「車で職場に向かう」という行動において、より短時間で職場に到達できる運転操作は強化され、時間損失や危険をもたらす行為は弱化されるという例が挙げられていた。この場合、毎回の個々の反応が強化、弱化されるというより、何度も何度も繰り返す中で、平均的に良い結果をもたらす行動が強化されやすくなり、均衡状態で安定する。これは、キリンの首が一定の長さで安定していくのと同じである【あくまで長谷川の理解による】。

 6月12日の日記に引用したように、系統発生においては、自然選択が起こるためには3つの要因が必要である。
  1. ある特徴が有利となるような環境要因の存続。
  2. 変異は、少なくとも部分的には遺伝的変異であること。
  3. 異なる種の間の競争。
 例えば、キリンの首が一定の長さになるためには、背の高い木が生え続けていく必要がある。気候変動により背の高い木が皆枯れてしまったのでは、長い首であることは有利にはならない。また、栄養条件で首が長くなっただけの場合、その特徴は遺伝的には継承されたない。さらに、食料があふれるほど豊富にあって競争が起こらなければ、長い首のキリンも短い首のキリンも両方生き残るので自然選択は起こらない。以上の3要因は、個体の強化、弱化にどう対応しているのだろうか?

次回に続く。