じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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モーサテで毎週月曜日に「先読みAI予測」というのをやっているが、なかなか当たらない。日経平均が上昇するかどうかという予測では、これまで9回予想して正解は3回のみ。もしこのレベルの正解率で安定しているのなら、AIの予測とは反対の対応をしたほうがお得ということになる(ただし、TOPIX予測のほうは10回予想して8回の正解という効率をほこっている。)

2017年6月12日(月)


【思ったこと】
170612(月)ボーム『行動主義を理解する』(28)進化と強化(1)

 6月10日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 第4章で語られている進化と強化をめぐる話題は、他書には見られない意義深い内容を含んでいる。その理由の1つは、著者のボームがもともと、生物学を専攻しており、その後、スキナーやHerrnsteinの指導を受け、心理学科に移籍したこと、さらに博士号取得後は、ケンブリッジ大学で行動生物学を研究したという履歴の通り、行動分析学者の中でもひときわ進化生物学に造詣が深いという点にあると思われる。じっさい、第1章の行動主義の歴史の中でも、内観主義を攻撃した新しい心理学の2つの思考路線として、客観主義とともに比較心理学を挙げているほどである。

 スキナーがダーウィンから多大な影響を受けていたことについては、オドノヒュー・ファーガソン(著)佐久間徹(監訳)(2005)『スキナーの心理学』でも取り上げられているが【3月5日3月6日の日記参照。】、ボームの本では
進化論を考慮しない心理学者は、今日、科学的な発展の主流から取り残されることになる。 【翻訳書83頁】
というように、行動分析学における強化の原理と自然選択のアナロジーではなく、進化論そのものが心理学にとって必要であることを強調している。

 自然選択というと、「環境に適応した生物が生き残った」という程度にしか理解されていないようにも思える。このレベルであれば、進化以外の変化、例えば「風化作用により岩石の崩れやすい部分が削り取られ、結果として尖った岩山ができた」という現象も同じように説明できてしまう。しかし、岩は子孫を作らないし、岩山がどういう形になるのかは、硬い岩の分布や風化作用の特徴よって決まるだけであり、キリンの首が長くなる現象とは全く異なっている。

 本書85頁では、キリンの首を例に、自然選択が起こるためには3つの条件が満たされなければならないと説明されている。
  1. どのような環境要因であろうと、ある特徴が有利となるような環境要因が存続しなければならない。
  2. 首の長さの変異は、少なくとも部分的には遺伝的変異によるものでなければならない。比較的首の長い個体の子孫には、比較的首の短いものよりも比較的首の長いものが生まれてくる傾向がなければならない。
  3. 異なる種類の間で競争がなければならない。


次回に続く。