じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 昨日の日記で、少し前から、北福利施設(マスカットユニオン)入り口に「あなたはまだ、“傘差し運転”をやめないんですか?」というポスターが貼られているという話題を取り上げたが【写真右に再掲】、別の階には、「そこのあなた、“傘さし運転”は違法です」という別のポスターが貼られていることに気づいた。 いずれも、岡大ロゴ入りで、よく見ると下の方に「自転車の“傘さし運転”は、道路交通法違反であり、5万円以下の罰金も科されます。自転車マナーへの社会的視線が厳しくなっている中、一人一人の行動が問われています。」という警告文がつけられていた。


2017年6月15日(木)


【思ったこと】
170615(木)ボーム『行動主義を理解する』(31)進化と強化(4)

 6月14日に続いて、

ボーム(著)森山哲美(訳)(2016).『行動主義を理解する―行動・文化・進化―』 二瓶社.

の話題。

 第4章では、レスポンデント条件づけに続いて、オペラント条件づけ(←本書では「オペラント学習」という見出しになっていた)の話題が取り上げられていた。本書では「レスポンデント条件づけは、2つの刺激(系統発生的に重要な事象と信号)間の関係によって生起する。それに対して、オペラント学習は、刺激と活動(activity) (系統発生的に重要な事象と、そのような事象の出現に影響を及ぼす行動)の関係によって生起する」というように区別されていた。行動分析学の入門書一般と比べると、「系統発生的」という言葉が含まれている点がユニークであるとも言えよう。もっとも、系統発生的には意味をなさない(中性的な)刺激、すなわち習得性好子(習得性強化子、条件性強化子、二次強化子)によっても強化や弱化が起こる点についても別に説明が必要であろう【この点については本書でも別途ふれられている】。

 翻訳書のほうで留意しておく必要があるのは、reinforcerとpunisherに対して、「強化子」、「弱化子」という訳語があてられている点である。ちなみに、reinforcerは「好子」、「正の強化子」、punisherは「嫌子」、「負の強化子」と訳されることが多かったが、最近では武藤先生監修のACTの本でも「弱化子」という訳語が使われてるようになった。私自身は、「強化子」、「弱化子」という訳語を用いることに対しては消極的である。理由は、強化をもたらすのが「強化子」、弱化をもたらすのが「弱化子」というように混同される恐れがあるからである。実際は、行動の直後に「弱化子」が消失した時には(負の)強化になるし、行動の直後に「強化子」が消失した時には弱化が起こる。阻止の随伴性概念を説明する場合などは、「弱化子出現阻止の随伴性による強化」とか「強化子消失阻止の随伴性による弱化」といった何が何だか分からない表現になってしまう。

 訳語の問題はさておき、本書では、巨視的行動主義の立場を反映して、オペラント行動の強化や弱化では、行動の結果はひとつではない場合がしばしばあるということである。この点については私も同感である。生活体が環境に働きかける時には、普通、一対一の「行動→結果」関係ではなく、行動のセットに対して、複数の結果が同時に随伴することが多い。実験室では、恣意的に1つの行動のみを取り上げて、1つの結果だけで強化や弱化を行うが、これはかなり不自然な状況であり、人間や動物の動的な行動変容過程を捉えきれていない可能性がある。

次回に続く。