じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 農学部農場の桃畑。「岡大の桃源郷」と勝手に呼んでいる。主な過去記録は以下の通り。

2017年4月9日(日)



【思ったこと】170409(日)関係フレーム理論をめぐる議論(6)

 4月7日の続き。

 刺激機能の変換を説明する仮想事例の中には、基本的な条件づけ(オペラント条件づけやレスポンデント条件づけ)で説明できるのではないかと思われるものがある。

 木下・大月(2011、40頁)[]に挙げられている2つの例についてみてみよう。まずは大河ドラマの例【長谷川による改変あり】
たとえば,新しい大河ドラマが始まったとする。あなたは,これまで特に歴史ドラマには興味がなく,登場する歴史上の人物(X)についても特別な想いはなかったとしよう。特にこのドラマを毎週見ようとは思わないかもしれない。しかしながら,このドラマの主役を演じるのが,あなたが昔から大ファンの俳優(A)だと知ったら話は別である。あなたは,毎週欠かさずこのドラマを見るようになり,歴史上の人物(X)についてもっと知りたいと思い歴史の本を読み,ゆかりの地を訪ねるかもしれない。歴史ドラマには興味もなかったあなたの行動力ざ変容されたのは,刺激Aと関係づけられた刺激Xの機能が,両者の間の関係に基づいて変容されたからである。
この仮想事例では、もともと俳優(A)に強化機能(好子としての機能)がある一方、歴史上の人物(X)はもともとそのような機能が無かった。ところが、その俳優(A)がドラマでXを演じることによって、Aの強化機能がXに変換されたというような説明が行われている。
 しかし、素朴に考えると、いくら俳優(A)が主役を演じているからといって、それだけでドラマを見続ける人はそんなにおるまい。俳優(A)が出演することはドラマを見始めるきっかけになったかもしれないが、2回目、3回目と続けて見ようとするのは、そのドラマ展開が面白いから(←行動分析学的に言えば、ストーリー展開自体がさまざまな好子を提供しているから。あるいは、ストーリー展開についての予測行動があるていど当たったり、特に予想外の展開があったりすること)によるものと思われる。その結果として、歴史上の人物(X)が習得性好子となり、ゆかりの地を訪ねたり、歴史自体に興味をいだくようになったりすると説明するだけで十分であり、刺激機能の変換を持ち出しても、予測の精度や影響の大きさはそれほど違わないように思う。

]木下奈緒子・大月友 (2011). 関係フレーム理論―RFTとACTの「関係フレームづけ」を目指して. 武藤崇(編) (2011). ACTハンドブック 臨床行動分析によるマインドフルなアプローチ. 星和書店.pp.37-52.

 次回に続く。