じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 文学部西側・駐車場北の梅。花つきはイマイチ。根元の日本水仙は今が見頃。

2017年2月8日(水)




【思ったこと】170208(水)ACTの価値論(14)価値vs.ゴール(10)

 昨日の続き。「価値とゴールの区別に関する5つのキーポイント」のうち最後の5番目は、

●価値は自由に選択できる。

であった。これに関しては、
  1. 私たちは,何か行動を起こすとき,価値という自分の求める質をそこに加えるかどうか,意識的に選択する。決して,そのように行動する義務があるわけではない。ただ,その価値が自分にとって大切だから,そう行動することを選ぶのである。
  2. この点を強調するためには, 「魔法の杖」の質問をしてもよいだろう。「私が魔法の杖を振ったら,あなたが欲しいと思っている価値を手に入れることができるとしましよう。そうしたら,どんな価値を選ぴますか?」。仮想の世界でどんな価値を選んだとしても,実は現実の世界においても,今まさにこの瞬間,その価値に従って行動することができるというわけだ。魔法の杖なんて,本当は必要ないのである。この介入は,「私は価値なんて持っていません」と言うクライエントに対して有効であることが多い。
と説明されていた【長谷川により改変、一部省略】。

 このうち1.の「意識的に選択する」という部分は、行動分析学的には腑に落ちないところがある。選択を決定づけるのは「自由意志」ではない。過去に何度か選択されていた場合にはそれによってどれだけ強化されたか、また、過去に一度も選択されていない選択肢を選ぶのはルール支配行動におけるオーグメンティングの働きであると考えられるからである。但し、自分の求める質を言語化し、関連行動と結びつけることも1つの行動であるからして、「意識的に選択する」に相当する「結びつけ行動」自体は強化、弱化可能であると思われる。

 さて、これまで引用した範囲を見る限り、どんなクライエントも価値を持っていることが前提となっているような印象を受ける。クライエントは、そのことに気づいていないか、もしくはそれがうまく機能していないだけであり、質問やメタファーの活用でそれを探し出すことが大切であるという意味にも受け取れる。

 しかし、本来、価値というのは、もともと地中に存在している宝石を探し当てるようなものではない。芸術作品や料理のように創り出すものであって、その基本は、習得性好子の形成と強化スケジュールに依存している。「私は価値なんて持っていません」と言うクライエントに対しては、その人に適した価値を創り出すような働きかけがあってもよいのではないかと思われる。

 次回に続く。