じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 一般教育棟E棟2階から眺める「落ちないサンカクバフウ」の紅葉。この1本だけなぜ落葉が遅れているのかは謎である。
 なお、上の写真の左側に男子学生2名が写っているが、彼らはこのあと建物の陰で隠れ喫煙を始めたので、さっそく階段を下りて喫煙を止めるように注意した。足元には火の付いた吸い殻がポイ捨てされており、敷地内全面禁煙を守っていないことに加えて、ボヤを引き起こす危険な行為であると言わざるを得ない。
 写真下はデジカメミラーモードによる撮影。

2016年12月20日(火)



【思ったこと】
161220(火)関係反応についての講義メモ(34)長谷川の考え(8)

 昨日の続き。

 今回は、関係反応、派生的関係反応、関係フレームなどの研究の出発点となった刺激等価性についてもう一度復習しておく。刺激等価性については脳科学辞典に簡潔で明解な解説がある。以下、その主要部分を引用させていただく。【改行ほか一部改変】
  1. 刺激等価性をテストするためには、前提となる刺激間関係を獲得させる必要があり、典型的には条件性弁別 conditional discrimination手続きが用いられる。条件性弁別とは、例えば3つの刺激A、B、Cを使った場合、見本刺激(A)に対して提示された比較刺激の中から特定の刺激(B)を選択させる手続きを指し、これを通して「AならばB」の関係が構築される。これに加えて、Bを見本刺激として比較刺激Cを選択させ、もうひとつの条件性弁別「BならばC」を訓練する。それぞれを見本刺激・比較刺激として6種類の条件性弁別が可能であるが、ここではその中の2つが訓練されたことになる。残りの4つの関係は、刺激等価性の成立を示す決定的なテストとして、訓練せずに残しておく。
  2. シドマンは、この4つの刺激間関係が包含する性質を数学的概念から引用して反射性(reflexivity)、対称性(symmetry)、推移性(transitivity)、等価性(equivalence)と呼び、訓練から派生した刺激間関係を最も節約的に評価するための構成要素とすることを提案した。これらの性質が成立したかどうかは、非分化強化場面で学習の要素を排除しながらテストする。
  3. 反射性、対称性、推移性、等価性の各テストで用いられる見本刺激と比較刺激の組み合わせは、被験者・被験体に対してそれまで提示されたことがないものであるため、強化履歴によるバイアスは存在せず、理論的にはランダムな選択反応が予測される。それにもかかわらず、ヒトはほとんどの場合、これらの関係の成立を示すことが知られている。選択に対してフィードバックがない場合でさえ、等価性テスト試行に繰り返しさらされるだけで徐々に成績が上がるという報告もある。このことは、ヒトでの刺激等価性が、条件性弁別が獲得されるのと同時に、付随するように成立する可能性を示している。そして、ヒト以外の動物では、条件性弁別後に4つの関係を示すことは極めて稀という結果と比べて対照的である。

 刺激等価性の説明で使われている「関係」については留意する必要がある。2.の引用部分で「この4つの刺激間関係が包含する性質」というのは、手続的に定義された関係である。いっぽう、1.で設定された実験条件のもとで訓練を受けたヒトが示すされている3.の結果、つまり「それまで提示されたことがないものであるため、強化履歴によるバイアスは存在せず、理論的にはランダムな選択反応が予測される。それにもかかわらず、ヒトはほとんどの場合、これらの関係の成立を示す。」というのは行動の変化についての記述である。ここで言われている「関係の成立」というのはあくまで、ランダムに選択された場合の比率に比べて、有意に高い比率で選択されているということにすぎない。

 さらに留意すべき点は、手続的に「AならばB」を選択させたとしても、そのことが直ちに「AならばB」という言語化された関係を成立させた(習得した)ということにはならない可能性である。例えば、「A」と「B」の関係ではなく、「A」と「B」から構成される複合的刺激に反応している可能性がある。また、見本刺激「A」に対して同一の「A」を選ばせるような見本合わせでは、たくさんあるほうの刺激(「A」は見本刺激と比較刺激の2箇所に出現しており、他の比較刺激より多数出現している)を選んでいる可能性もある。

次回に続く。