じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 6月のウォーキング総括。2016年6月は、総歩数36万4658歩、1日あたり平均1万2155歩となり、基準の1万2000歩を上回った。今月は日々安定した歩数となっていたが、下旬になってから大雨で散歩の中止を余儀なくされたことなどから、結果的に、1日平均1万2000歩をかろうじて上回る程度の平均歩数となった。
※グラフはいつもの通り、毎日の歩数を少ない順に左から並べたもの。左端の落ち込みは、その月に何らかの事情で歩数が少なかった日があることを示す。右端はその月に最も多く歩いた日の歩数。グラフが12000のあたりで水平になっているほど、毎日の歩数がほぼ安定していたことを意味する。 5月に比べると6月のほうがカーブが緩やかになっており、日々安定した歩数を獲得していたことが分かる。

2016年06月30日(木)


【思ったこと】
160630(木)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(58)派生的関係反応(30)関係フレームづけ(4)

 昨日までのところで述べたように、「関係フレーム」とは、
  1. 相互的内包(Mutual entailment)
  2. 複合的相互的内包(Combinatorial mutual entailment)
  3. 確立された関係に応じて生じる刺激機能の変換(Transformation of stimulus functions according to the established relation)
という3つの特徴をもつ「特殊な反応クラス」とされている。原書84頁(翻訳書117頁)ではこのうちの「複合的相互的内包」について以下のような興味深い記述がある。
Combinatorial mutual entailment includes three or more stimuli, and I need to further explain the reason why this is a necessary aspect to include in the definition of relational framing. As mentioned earlier, one aspect of derived relations is that they are mutually entailing, so that if "chair" -≫ "silla," then "silla" "chair."...【略】
A further key point is that as long as we are describing mutually entailed relations, both relations have the same level of precision. When relations are combined, however, the precision of the combinatorially entailed relation may be unspecified. If Larry is unlike Ben and Peter is also unlike Ben, we have no way of knowing what relation exists between Larry and Peter. This lack of precision is a given, and the combinatorially entailed relation is there fore defined as unclear.
複合的相互的内包は3つ以上の刺激を含むもので,これがなぜ関係フレームづけの定義に含めるべき側面であるかについて,その理由をさらに説明する必要がある。先に触れたように,派生的関係のーつの側面は,それらが相互に内包されていることであり,それがあるから,「chair] -[silla」なら,「silla」→「cahair」となる。...【略】
 ここでさらに大事な点として,どちらの方向の関係も同じレベルの正確さを保つのは,私たちが相互的内包の闇係について説明している場合においてのみである。関係が組み合わされると,複合的に内包された関係の正確さは定まらなくなるかもしれない。もしも,ラリーがベンとは違っていて,ピーターもまたベンとは違っている場合,ラりーとピーターとの間にどのような関係があるかを私たちが理解する方法はない。このような正確性の欠如は,本質的なもので,したがって,複合的内包関係は,不明確なものとして定義される。
 複合的相互的内包は、数学でいうところの推移関係およびその逆に相当している。リンク先によれば、推移関係は、
集合 X の二項関係 R が推移的であるとは、Xの任意の元 a、b、c について、a と b に R が成り立ち、b と c に R が成り立つとき、a と c にも R が成り立つことをいう。
と定義されており、例として、
例えば、「AはBより大きい」「AはB以上である」「AはBと等しい」といった関係は推移関係である。例えば、a = b でかつ b = c であれば、a = c が成り立つ。
一方、「AはBの母である」は推移関係ではない。アリスがブレンダの母で、ブレンダがクレアの母だった場合、アリスがクレアの母であるとは言えない。
推移関係の例として以下のものがある。
  • 「AはBと等しい」(等式)
  • 「AはBの部分集合である」
  • 「AはBより小さい」、「AはB以下である」(不等式)
  • 「AはBで割り切れる」(約数)
  • 「AならばBである」(含意)
「AとBは等しくない」は非推移関係の例である(集合に少なくとも2つ以上の元がある場合)。
 ということで、推移関係は成り立つ場合と成り立たない場合がある。昨日引用したように、フレームを確立するためには「複数の範例による訓練」(multiple-exemplar training)が必要であるとされているが、もしそうであるとするなら、複合的相互的内包は不完全な形でしか成立しないことになる。幼少期にはむしろ、推移関係と非推移関係のそれぞれの範例を体験し、それらを区別できるようになるのではないかと思われる。

 なお、RFTやACTの入門書では「複合的相互的内包」は「複合的内包」と省略されることがあるが、本書第4章の原注2にあるように、もともとの意味は「相互的内包」の組合せであり、省略してしまうと誤解を招く恐れがあるように思われる。

 次回に続く。