じぶん更新日記

1997年5月6日開設
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 6月29日(水)の岡山は昼前後に大雨となり、1日の降水量は28.5ミリとなった。これで6月の合計の降水量は29日までで403.0ミリに達した。

 この日の夕刻はマスカットユニオン前で「エコナイト」のイベントが予告されていたが、予定通りこの場所で行われたのかどうかは不明。【雨天時は大学会館1階で行われるということであった。但し、この時間帯は雨は止んでいた。】

2016年06月29日(水)


【思ったこと】
160629(水)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(57)派生的関係反応(29)関係フレームづけ(3)

 昨日の日記で、「関係フレーム」というのは精神的な対象物、もしくは構成概念ではないという点を指摘した。ここで誤解を生じないよう、念のため

武藤崇(編) (2006). アクセプタンス&コミットメント・セラピーの文脈.−臨床行動分析におけるマインドフルな展開−. ブレーン出版.【絶版となっているが、内容は↓の2011年とほぼ同一】。
武藤崇(編) (2011). ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)ハンドブック 臨床行動分析によるマインドフルなアプローチ. 星和書店.

を参照しながら、「フレーム」について確認をしておくことにする。武藤(2011,33〜34頁)によれば、「フレーム」というのは特殊な反応クラスであるが、
通常,反応クラスとは,上述のように,同様の機能を持つ行動のまとまりのことを指し示すにすぎない。しかし,ここで検討する特殊な反応クラスとは「フレーム」(frame)と呼ばれる反応クラスのことである。この「フレーム」という名称は,認知的な構造のように誤解される危険性があるため,それを避けるためにフレーミング(framing) と呼ばれることもある。また,その呼称が示すように「中身は変わることはあっても,外枠はいつも変わらない」という「まとまり」を示す反応クラスのことである。そのような現象は,古くは「学習セット」(learning Set)あるいは「学習のための学習」(learning to learn)と呼ばれてきた。さらに,行動分析学では,より限定的な反応クラスとして「般化模倣」(generalized imitation)と呼ばれる現象として検討されてきた(その他に注目行動,同一・異質見本合わせ,排他律などの行動でも同様の現象が確認されている。
という点で、他の反応クラスとはやや性質を異にしている。ちなみに、反応クラスについては、武藤(2011)の26頁のところに、
つまり,三項随伴性とは,共通の機能を持った反応の「まとまり」,刺激の「まとまり」として分類するという枠組みなのである。そして,その「まとまり」のことを「クラス」(class) と呼ぶのである。そのクラスの各メンバーは,機能的に共通であればよく,形態的に共通している必要はない。
という説明がある。

 というこで、「関係フレーム」を理解するためには、まず、「反応クラス」や「刺激クラス」といった「まとまり」を理解すること、「フレーム」なるものは仮説構成概念のような認知的な構造ではなく、あくまで反応クラス(機能的に共通した反応のまとまり)であることをしっかりと理解しておく必要がある。

 トールネケの本のほうに戻るが、昨日も引用した以下の部分についてもう一度考えてみよう。
私たちが,物事をさまざまな種類の関係(反対,比較,空間的,時間的など)でフレームづけすると語るとき, 「関係フレーム」という用語はメタフアーである。それは,フレームというものが,何でも含めることができるということを引き合いに出したものである。この用語は,関係フレームが精神的な対象物として存在するということを意味するのではない。関係フレームは,人々がさまぎまな種類の関係のなかに物事を位置づけることができることを表現するための方法である。つまり,私たちは,物事をフレームの中に当てはめるのである。明らかに,当てはめるというのも,メタファーである。
 ここでは、「関係フレーム」も「物事をフレームの中に当てはめる」というのはいずれもメタファーであると論じられているが、これは必ずしもメタファーによって理論が構築されているわけではない。「関係フレーム」はあくまで反応クラスであり、般化模倣における「模倣フレーム」などと同様の特徴を有する。該当部分を武藤(2011)から引用させていただく。
般化模倣における「般化」とは,示範されるモデルそれ自体の物理的な類似性による般化を指し示す用語ではない。この「般化」は「模倣する」というフレームがヒトに内在するかのように,今までに模倣したことがない新奇なモデルに対しても,模倣反応が生起するという状態を指し示すために使用されている。さらに,そのような模倣は,いくつかの特定の模倣反応に対する強化率を変動させると,それと連動して他の強化されない個々の模倣反応も変動する,つまりフレームそれ自体が「一回り大きい反応」(higher-order/overarching response) として消長しているかのような状態なのである。また,このような般化オペラント,つまりフレームを確立する必要条件としては「複数の範例による訓練」(multiple-exemplar training)の実施が挙げられている。つまり,そのような般化オペラントも随伴性によって確立・維持されるものであるということを意味している。
 トールネケが「メタファー」と言っているのは、「フレーム」といった呼称の由来と、その仕組みを「フレーム(額縁のようなもの)」に「当てはめる」という日常用語のメタファーで考えれば、理解しやすいということを指摘しているものと思われる。であるからして、「フレーム」の代わりに「箱」のメタファーを使ってもよい。その場合は、「関係フレーム理論」の代わりに「関係ボックス理論」という呼称になるが、それによって理論の中身が変わるわけではない。

 次回に続く。