じぶん更新日記

1997年5月6日開設
Copyright(C)長谷川芳典



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 時計台前のクローバーの蜜を求めるアオスジアゲハ。こちらの記事にあるように、アオスジアゲハの幼虫はクスノキを食草としており、まさに「食」住隣接。写真右は、幼虫が育ったと思われるクスノキ【4/22の再掲】。

2016年04月25日(月)


【思ったこと】
160425(月)トールネケ『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』(9)オペラントとレスポンデント(2)相互の影響

 昨日の続き。

 原書22〜23頁(翻訳書31〜33頁)では、オペラント学習とレスポンデント学習が相互に影響しあうという事例が紹介されていた。

 まずは、息子に電話をかけるという行動。
Now, let s say that when I call my son on the phone, a specific melody is played while I wait for him to pick up. After I have encountered this on several occasions of calling, one day I hear the same melody on the radio. I start thinking about my son, and maybe some emotional reactions, originally occurring due to my interaction with him, also surface. How did this happen? The answer is respondent learning. The melody has become a conditioned stimulus, and thoughts and feelings connected with my son are a conditioned response. It is easy to see how these reactions can in turn function as antecedents for more operant behavior. I might, for example, call my son earlier than I would have if I hadn't heard this melody on the radio.
さて,私が電話で息子を呼び出したとき,彼が出るのを待っている間,いつも同じメロディーが流れているとしよう。待つ間, このメロディーを聞く状況に私が何回か遭遇した後で,ある日,同じメロディーがラジオから流れてきたとしよう。そのとき,私は息子のことを考え始め,何らかの情動反応(息子と会話するときにわき上がってくる)が, 意識に上がってくるかもしれない。これは, どのようにして起こったのだろうか。答えはレスポンデント学習によって生じたのである。この場合,メロディーが条件刺激であり,息子に関連した思考や気持ちが条件反応である。このような反応が,どのようにして,次のオペラント行動に対する先行事象として機能するようになるかを理解するのは,それほど難しいことではないだろう。たとえは,私は,このメロディーをラジオで聞いたために,そうでなかったときよりも,早いタイミングで彼に電話をかけるようになるかもしれない。
 この部分については訳注がつけられており、
ここでのオペラント行動は「息了に電話をかける」という行動である。そして,呼び出しメロディーによって誘発された条件反応である「息子と会話するときに生じる情動反応」が,その電話をかけるというオペラント行動の確立操作として機能した(息子と会話するという強化子の価値がより高められた)と考えられる。なぜなら,その持ち受けメロディーを聞いた場合のほうが,聞かなかった場合より,早いタイミングで(つまり,電話を息子にかけるという行動の反応間間隔が短くなって,息子に電話をかけたからである。【翻訳書32頁】
という解説が付加されていた。

 こうした現象は、メロディーに関するレスポンデント条件づけがオペラント行動の確立操作になるという事例は日常生活でしばしば見られるものである。例えば私の場合、小学校の給食の時間にサンサーンスの白鳥のメロディーが流れていた時期があり、あれから50年以上経った今でも、このメロディーを聴くだけでなんとなく腹が減ってくる(←同時に、給食時に出されていたスキムミルクの不快なニオイも漂ってくるが)。このメロディーが流れた時に私が何かを食べようとするのであれば、レスポンデント条件づけによって条件刺激となったメロディが、食べるという行動の確立操作として機能している可能性はある。

 もっとも、メロディーが確立操作として機能するのではなく、他の弁別刺激を「顕在化」させる効果をもたらす場合もあるのではないかと思う。例えば、失業により家賃を支払えない状態にある人が、家主に滞納を懇願していたとする。その際に使用していた携帯の呼び出しメロディーと同じメロディーをたまたま聴いた時に、延納期限が翌日に迫っていることを思い出し、さらにもう1ヶ月の延納をお願いするために家主に電話をかけたとする。この場合は、上掲の「息子に電話をかける」事例に似た「家主と会話をするときに生じる情動反応」が誘発されたとは考えにくい。あくまで、延納期限に関連した弁別刺激を「顕在化」させたと考えるべきである。「顕在化」というのは少々曖昧であるが、ここでは、当人の行動に影響を与えている種々の弁別刺激の中で、家賃支払いに関連した弁別刺激に注意を向ける行動を起こりやすくしたというような意味。但しこのあたりの議論は、関係フレーム理論においてより明確に説明されるであろう。

 次回に続く。