ある授業科目で何度も受けたテストの点数のことをちょっと考えてみましょう。ある時は紛れもない高得点、そしてある時は気に入らない低い点になっているでしょう。言い換えれば、あなたの成績にはある程度の変動があるということです。
【中略】
　極端に良い成績をもう一度取ることがいかに困難であるかについては誰でもよく知っています。激しく争うスポーツ種目で、同じチームが翌年にも連続優勝することはきわめて困難です。優勝チームには優秀な選手がいて、よく練習し、チームワークにすぐれ、優秀なコーチがいる、これらすべてが強さをもたらしています。しかし、それらがすべて揃っているだけでは不十分、それが優勝に結びつくようにうまく機能しなければならない。主力選手の故障がたくさんあってはならないし、ボールがイレギュラーせずに弾まなければならない。優秀な選手とかその他すべての原因と考えられる基本的諸要因が揃っている上で、さらに偶然的要因がうまく働いて初めて優勝できます。必要なスキルや選手が十分に揃っているという前提で、幸運に恵まれた時に初めて優勝できるのでです。
【中略】
　あなたが難しいテストでクラストップに近い点を取った時も同様です。もちろんしっかり勉強したことは確かですが、いくつかの偶然要因も同時に働いていたはず。テストで出題されたのとぴったりの箇所を重点的に勉強していたにちがいない。予測通りということもありますが、あなたの得意なところだったり、以前に学んでいて知っていたところだったということはないでしょうか？ 出席していた時に学んだ内容がたまたま出題されたということはないでしょうか？　多くの要因が関与しており、その上で一生懸命頑張れば高得点にはつながりますが、では次回のテストでも同じように幸運が揃うでしょうか？ 一生懸命頑張るという点は同じでも、偶然的要因が再び揃うでしょうか？「例外的」に良い成績をとったあとでは、あなたの平均的な成績レベルまで「落ちる」という可能性が高いのです。お断りしておきますが、あなたが二度と高い得点をとることはあり得ないと言っているのではありません。びっくりするような高得点というのは、いくつかの偶然要因が働いた結果であって、その偶然はいつも同じようには働いてくれないということなのです。高得点をとったあとでは、平均（あなた自身のいつものパフォーマンス）への回帰（元へ戻ること）が起こりやすいのです。
　ここで留意していただきたいのは、平均への回帰は、例外的な高得点をとったあとで起こりやすいと言っているわけではないという点です。例外的に低い点数をとったあとでも同じように回帰が起こりやすくなります。つまりそのような低得点の次の回のテストでは、偶然的要因が単純に働くだけで、すこしマシな点をとれると予想されます。上記の高得点の時と同じ分析が適用できます。ふだんはまあまあの点をとっている人が、時として偶然的要因のはたらきて悪い点をとることがありえます。その学生がたまたま欠席していた時の内容が重点的に出題されたとか、テスト当日の体調が悪かったとか、前の晩によく眠れなかったなど。であるとすれば、その学生は次回にもっと良い点をとるでしょう。